仕事情報誌ドカント

三池崇史 三池崇史
 デビュー作『新宿黒社会』以来、『殺し屋1』『ゼブラーマン』など驚くほどのハイペースで新作を産出している映画監督・三池崇史。コワモテの風貌、作品内容から想像していた姿とはほど遠く、歩んできた映画人生や新作「IZO」の裏話を語る姿勢は柔らかだ。米国「TIME」誌でも話題となり、峻烈なオーラを放つ監督の成功秘話とは、激か緩か、果たして…??

INTERVIEW /イナズマ☆K PHOTO/HIROKAZ

---映画監督という仕事に小さい頃から憧れていたんですか?
いや、映画監督って具体的に何をする人か、よくわからないでしょ。助監督になるともっと分からない。ただ、勉強も好きじゃなかったし、できなかったんで。

高校は付属の学校だったけど、卒業して大学行っても…まあ付属でも上れないくらいだったんで(笑)。ただなんか働くのもイヤだったし。とりあえず大阪から抜け出し専門学校に行って、一人暮しができればいいなぁと思ったぐらいで。

---まさに学生らしい発想ですね(笑)。
で、一番入りやすい学校が映画の学校だったから、今村昌平さんがやってる横浜の学校に行って、周りに流されていく結果、監督になったの(笑)。でも学校にまじめに行ったのも2年間のうちで一週間くらいですよ(笑)。

---それは全然行ってないです(笑)。
そうそう、全然行ってない。それで卒業の頃に、横浜の近くに『ソウルトレイン』っていうベタな名前のディスコがあったんです。そこには横須賀にミッドウェーが入ってた頃のブラザー達がみんな遊びに来てたんですよ。そういう意味では本当にソウルトレインなの(笑)。そこで従業員やってたんですよ。

で、 学校の職員が遊びに来たとき、僕を知ってたみたいで『君、うちの学生だよね』って声をかけてきて。その人の先輩がテレビドラマをやってて、すごい忙しかったらしく、助手が欲しかったわけですよ。でも予算がないから雇えない。それで、勉強がてら学生を見習いとして現場によこしてくれってなった。でもマジメに学校行ってるヤツはちょうど卒業制作で大変な時期だったわけ。でもよっぽど困ってたんでしょう。学校に来てないヤツでもいいから紹介してくれって。で、俺にやらないかって。

ディスコはトラブルもあるし面倒臭いなって思ってたところだったから、どうせだから一回くらい現場がどんなところか見とこうかと思って、助監督になったんです。

---話の流れで現場に入ってしまったと。
そのままあっという間に10年ですよ。監督になる、なりたいとかじゃなくて、ただ忙しいだけで、目の前に与えられた課題をどんどんやっていくという連続ですから。 朝から晩まで1日中、何もしないっていう日は1年のうち3日か4日位しかないんですよ。あっという間に時間が過ぎて、なんだかわかんないけど監督をやらないかといわれて、えっ、俺が監督やるの? やるやる!! って(笑)。

---なんかわかんないけど監督になった!
そう、最初はオリジナルビデオの監督だったの。でもマジメに学校に行ってたヤツらは、人と出会う縁がないし、しかも学校で学んだ知識なんて現場じゃ役に立たないんですよ。

---やはり、学校で習う理論より、 現場の実践の方が大事ですからね。
『このカットはこうした方がいい』なんていっても『うるせぇ、それはこっちで考えるから、お前は物を運んどけ』っていわれますよ。そうやってみんな淘汰されていっちゃいました。

---監督のお声がかかったのはいつですか?
バブルの時期で、普段は映画やドラマを作っていない会社や新しい人たちがお金を出し、ビデオ会社が生まれた頃です。その人たちも最初は映画の人間を使おうとしたけど、業界人と打ち合わせすると、ややこしいんですよ。偉そうだし(笑)。 その割にできたもの見るとつまんないし、嘘くさい(笑)。で、若い出資者が俺たちに『お前らが撮って違いがあるの?』って聞いてきて『いや、別にないと思います』と答えたら、監督になれたんです(笑)。だから業界の人が監督にしてくれたんじゃないですね。

---作品が評判になったきっかけは?
「われわれが映画を作ったら、悪くないんじゃないかっていわれて、ポツポツとオリジナルビデオを作り、いろんな人たちと知り合って。そのうちビデオを映画館で上映するようになった。 でもそれって海外の人たちから見たら、スクリーンに映ったものはビデオではなく映画なんですよ。そこから海外の映画祭で上映されるようになって、映画監督と見られるようになり…ってだけなんです(笑)。 だから自分は高校の時にドロップアウトして、大人になることから逃げただけなんです。逃げたもん勝ち(笑)。

---まさにドロップアウトの逆転勝利ですね
自分が監督になるその日まで、監督ってこうあるべきだとか、イメージなんかなかったな。監督はもっと特別な才能や運、環境にある人がなるものだと思ってた。 でも実際は他人の力を自分の力のように見せたりしてるし。だって俺が演じているわけじゃないし、撮ってるのも違う。代表として撮影現場に祭られてはいるけど、フィルムをカメラに詰めることもできない。それで映画監督なんですよ(笑)。 変なプライドを持たなくていいんです。

--- 「自分らしさ」というものは?
「いや、個性なんてまったく気にしないし、むしろ無意識の中で生まれてくるものが個性だと思う。こんな作品はできないよとか、この予算じゃ撮れないとか、一切ない(笑)。誰かが映画を作ろうと思って、声かけてもらった順ですよ。でも俺がなんでこんなに声をかけられるんだろう。それが面白いですよね。

---でも、十分作品からは三池さんらしさが 出てると思いますが
自分が自分らしくいようとさえ思わなければ、逆に自分らしく生きられると。そこにこだわるから揉めるわけ。脚本家と打ち合わせして揉めても、脚本家は自分を信じて書いてるわけだから。その場では認めておいて、あとで変えちゃぁいいじゃん(笑)。 表現する手段の違いで、同じテーマに基づいているんだと丸め込んで、スタッフに三池のやり方もおもしろいなって思ってもらえばいいわけ。『いや、ここは絶対にこうだ』とか、みんな主張するのが表現者の仕事だと思ってる。 相手に対して自分を押し通そうとする、で、ぶつかる、話が流れる。せっかく作る場があったのにそれを壊してる。

--- 監督は意見を押し通したりしないと
揉めてるなと思ったら『そうですね、でもこうやったら』って同意もするし守ろうともする。『この予算と日数でできるの?』『できると思いますよ』という感じで始める。だから勝ちも負けもないんですよ。



---自分と周りの意見を取り入れ、ある意味、エゴを越えてしまったところで、自分の作品作りができると
みんなエゴの塊だろうし、それを利用すればいいんですよ。映画作って、これで一発当てたいって思っているおじさんがいたら、その人のパワーを使わない手はない。 そのおじさん+俺って一滴ちょっと混ぜるだけで、変わるんですよ。この役者に出てもらって、このカメラマンにってコーディネートするだけ。そこにあなたは何があるのか? と問われても『別に』って(笑)。

--- 監督自身が作品に持つ、こだわりやテーマというのはないのでしょうか
用は『別に』って思う中に自分のテーマがあるわけですよ。映画の中のテーマなんて、実人生の中にすべて含まれてるわけだし、そこから何かを取り出して客にぶつける必要なんてないんです。 何も考えず作ったものの中に、全部あるはずなんです。何も考えずに生きてるわれわれに、全部の悲劇と喜びがあるんだから、あまりそこにこだわらないというか。

--- それは意外な感じが。やっぱり三池さんのイメージだと、こうだ! って主張が強いのかと思ってました
うん。でも現場は支配しますよ。予算の中で時間をどう使うかっていうことから、全体を管理する。そこは助監督をずっとやってたんで、ある意味プロなんですよ。

--- 今まで歩んできた中で、体に染み込んでるものですね
使おうと思わなくても出る。格闘技を繰り返し練習して、打たれた途端に攻撃としてバッと足が出るのと同じ。

--- 反射神経で、つい出てしまうということですね(笑)
クロスカウンターなんですよ。来たぁ、と思った瞬間に『ボーン』って(笑)。相打ち、相打ち(笑)。日々そんな感じ。こうしたいと思って何かをやると、大抵失敗する。 イメージすることから始めるって人もいますけど、自分の場合は流されるっていうか、口から出たら実際に仕事として叶ってくると思うんです。川でおぼれて流されるとしたら、流れに逆らって泳ぐのはバカでしょ。 俺は他人の力を借りて流されていて、流れてる方に向かって泳ぐから速い速い(笑)。どこまで行くのか自分でも想像つかない。海に出るのか、池に出るのか、またはいつまでも流れていくのか。行ってみないとわかんない。 逆らって自分の我を通すのが自分らしさ、個性ってのは違うんじゃないかな。ただ、そう思うのは持って生まれた性格ですよ。親の問題だ(笑)



---流れに乗るのが自分の個性。流れに乗ってしまうのは、 まさに三池さんの人生そのものですね。 さて、ここで新作『IZO』の話を聞かせてください。 とにかくもの凄いキャストですね。
このメンツは本当すごいですよね(笑)。われわれ、業界にいる人間にはできないですけど、そこに武知(鎮典)さんっていう違う血が混じってるんです。 ずっと映画の世界にはいなくて、50歳を過ぎてから脚本家になったわけですから、ある意味では素人ですよ。その人の目からすると、この本を作って予算がこれくらいって決まったときに、この役はビートたけしだよね、とか平気でいうわけです。

--- 映画のプロとしては驚きますよね。
僕らだと予算内で受けてもらえそうな人を提案すると思うんですけど。でもそれは業界のルール、常識の中でしか動けなくなっちゃってるんです。 でも武知さんは『いってみなきゃわかんない』って。それでオファーしてみると、どうもやらなくもないって(笑)。で、ビートたけしが出ることを匂わせて他の人たちに打診するから、じゃあ俺も出とくか、って。

--- ある意味それも川の流れに乗ってますね。
そうそう。でも、管理しきれないよ。とどめは内田裕也(笑)。しかも肝心なことを僕ら忘れてて『これ、ギャラどうする?』(笑)。我々はプロの業界人ですけど、アウトローの武知さんと組むことによってアウトローとして動いているんです。 作ってる時点では配給も何も決まってない。だから売れそうな役者を集めているけれども、商売しようとしてるんじゃなく、作りたくてやってるんだと、依頼された方も解釈せざるを得ない。 だからギャラが出ないから出演しないってのもなんだしなってことで出てくれた。しかも周りが豪華なのに主演が中山一也。

--- この大抜擢は私たちも驚きました。
でも逆に中山一也だからみんな出やすかった。それが他の誰かだと格の違いを気にするから。エンディングロールの名前順をどうしようって話になったとき、誰かがすごくいい加減に、アイウエオ順でいいだろうって(笑)。そんな細かい問題もありつつ、いろいろと大変なこともあったけど、本作は単なるビジネスでは生まれなかったものだと思います。

--- 監督の話を伺うと、全て現場で肌で学んだ判断、 パワーがいかに大事かというのを実感させられます。 あとは、行き当たりばったり感の大事さというか(笑)。 では、これから夢をつかもうという若い人にアドバイスを。
一番大事なのは『負けてもいいや』って思えること。あとは僕らが楽しいと思うことが通用しないと困ると。苦しい思いをして作ったものがヒットしちゃうと、またそれをやらなきゃいけない。 われわれが楽しんだ時間の結果として出たものが世の中に通用していってもらわないとすごく困るなあ(笑)。うーん、でもこれアドバイスになってないね(笑)
INFORMATION
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『IZO』(R-15指定)
監督/三池崇史 企画・原案・脚本/武知鎮典
スーパーバイザー/奥山和由
出演/中山一也、遠藤憲一、寺島進、松田龍平、内田裕也、ビートたけし、片岡鶴太郎、ボブ・サップ他
見てはならぬ、語ってはならぬ…抹殺せよ!

<STORY>
岡田以蔵は土佐勤皇党首領・武市半平太に操られ、「天誅」の名のもとに数々の幕府要人を暗殺、「人斬り以蔵」と恐れられたテロリスト。1865年、彼は磔刑架に磔にされ処刑されたが、怨念は消えることがなかった。彼の魂は時空間を超越し、都会の片隅で廃人のように生きるホームレスに宿る。すると、究極の殺人マシンIZOへと生まれ変わった。突如、現代の東京に降臨したIZOの脳裏に焼きついていること。それは生前、自分を犬畜生の如く扱い捨てた権力者どもへの怒り、そして人斬りの記憶のみ。怨念の塊と化したIZOは夜のストリートを駆け抜け、空を飛ぶ。その勢いは留まることをしらず、遂に時空を越え異空間に突入するのであった…。

浦安・AMCイクスピアリ16 Tel:047-305-3855
(9月24日まで)
渋谷・シアター・イメージフォーラム Tel:03-5766-0114
他、劇場にて公開中(10月2日まで)、以後全国順次ロードショー

配給/チームオクヤマ
配給協力・宣伝/オムロ
公式HP:
http://www.izo-movie.com


PROFILE

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三池崇史(みいけ・たかし)


1960年8月24日生まれ、大阪府出身。

横浜放送専門学校(現・日本映画学校)を卒業後、今村昌平、恩地日出夫監督等に師事、『女衒』などの作品で助監督を務める。

95年『新宿黒社会』で劇場映画監督デビュー。以降『サラリーマン金太郎』(98)『漂流街 THE HAZARD CITY』(00年)、『殺し屋1』(01年)、『新・仁義の墓場』『SABU さぶ』(02年)、『許されざる者』『牛頭 GOZU』(03)『着信アリ』『ゼブラーマン』(04)、驚異的なハイペースで次々に話題作・問題作を世に送り出す。

海外からの注目も熱く、98年の米国「TIME」誌にてこれから活躍が期待される監督として、10位に選出される。



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