仕事情報誌ドカント

みうらじゅん みうらじゅん
 鬼才、天才、はたまた奇人!? イラストレーター、エッセイスト、漫画家、ミュージシャン…etc。さらにボブ・ディラン、仏像など自分の中で起こったブームを世に広める活動を行う、元祖マイブーマーのみうらじゅん氏。名刺を作るならいったい何種類の肩書きが載るのだろうか。とうとう東京ドーム公演、しかも満員御礼までたどり着いた不可解な男のモットーは『一生懸命。とんちんかん』

INTERVIEW /イナズマ☆K PHOTO/HIROKAZ

---今日はみうらさんの生き方を聞かせてください。マイ・ブームなど、好きなものでどんどん話題を作って、しまいにはそれで東京ドームまでたどり着いてしまったなんて。そんな人みうらさんしかいないですよね。
あれも偶然なんですけどね。3ヶ月前にドーム頼まれることってないでしょ(笑)。普通1年前から頼まれるもん。変な話だよね。まあ、とりあえず仕事断ってないってだけなんです、基本的には。出がガロなんで、蛭子さんも仕事断ってないでしょ。根本さんも杉作も断ってないし、俺も断ってないだけで。だからそれは5×5センチのオナニーしてるイラストと東京ドームが一緒だっただけなんです(笑)。

---いろいろな仕事をこなしてますが、今の仕事へのきっかけはどういったところから始まってるのか教えてもらえますか。
元々漫画家でデビューしたんですけど、あまり上手くなくて。作品で表現しなきゃいけないのに、向いてないなぁと思ってしまったんです。いろいろなことを考えて、それを漫画に置き換えるのが辛くなった時期があって。発想も自分の画力の限界の中でしか考えないんですよ。

---どうやって切り抜けたんですか?
だから最終的には描きやすいものを選ぶようにしましたね。簡単にいえばチンポが出てくるものですよ(笑)。これなら描けると。資料がなくても自分の出して見ればいいんだもん。

---身近な素材ですよね。
身近なところから書けばいいと思ってね。で、『ホワッツ・マイケル富岡』って漫画描いて(笑)。その頃、マイケル富岡とホワッツ・マイケルがはやってたから。皆だまされないかなーと思ったんだけど、だまされないんだね(笑)。それはほんと下品な漫画で、臭っせえ臭っせえイカ臭っせえ≠チてギャグなんだ(笑)。最低の漫画を描こうと思って。

---文章を書き始めたのは?
もう自分のテーマを漫画に置き換えるのは限界があるなと思って、それなら文章にすれば『宇宙時代到来!』って一行書けばいいだけだから。そんなことやってたら、ここは音楽にした方がいいだろうというものあるんですよ。漫画でいくら斜線入れてね、ギターうまく描けてもやっぱちょっと違うなってのが出てくる。ならバンドでやった方がいいかなと。

---いろいろな方法で作品を作ったと。
手塚治虫先生のようなタッチで漫画で描けるならやってたけど。でも諦めるのが早くてダメだこりゃって思うと、違う手法で同じテーマをやれたんです。表現方法の違いだけで、仕事のジャンルは一個なんですよ。自分は漫画家をやりたかったのでもないし、文章を書く人を目指したのでもない。そのテーマをやりたかった。

---手段が違うだけで、主題が大事だと。具体的に得意な表現方法ってなんだったんですか。
ちいちゃい頃から怪獣スクラップとか作ってた。漫画買ってきて怪獣の写真が載ってると、読まないですぐ切るんだ。自分のスクラップに貼って、人に見せるのが好きで、だから自分編集長なんですよ(笑)。それが大人になってエロ本に変わっていったんです。

---アダルトに手をつけてしまった。
ページをめくってると、エロ本に疑問が浮かんでくるんですよ。ここ黒い下着載ってるのになんでこっち白いんだよって。で、編集者が多分徹夜してフラフラになってて、適当にやってるんじゃないかって疑い出したんだ。チンポ起ってねぇと思ったんだ(笑)。 このエロ本の出版社は仕事でしか作ってないって気づいた時にイカンと思って、切って、自分でレイアウトして、こっちの週刊プレイボーイからグラビアを持ってきて、その上に素人の投稿写真とか貼ってっていう、コラボレーションをやってた(笑)。

---エロ本のコラボ!(笑)
で、ある日、オールチンポが起つエロ本なんて、この世に存在しないって虚しさに気がついたんですよ。こうなったら、俺だけが起つ本を作りたくて。もう25年続けて、昨日の時点で162巻まで行きました。

---凄い巻集ですね。こち亀級です。
作ると今度は人に見せたくなるんだ。そうすると『今回のはちょっと編集甘いね』とか『前のやつのほうが熱意あったじゃん』とかいわれて。仕事でもないのに落ち込んだりするんだ。確かにちょっと蔑ろに貼ったなぁ、とか思うんですよ。 この事務所に引っ越して来たのも、一番の条件はいい古本屋があることね。そういうのを見計らって来たんだけど、もう大人だから1万5000円くらい買うのよ、エロ本を(笑)。しかも古本だからものすごい量ですよ。本屋から持って帰る時に凄くカッコいいんだ。領収書で1万5000円とか切ってもらう時に、自分って大人だなって(笑)。

---それはいい感じですね(笑)。
そうやってくると展覧会を開いてこの魂を伝えたいとかなってきて。ラフォーレ借りてエロスクラップを100巻、天井までずらっと。壮絶な枚数を自分も生まれて初めて見たから、すげーって、うれしかったんだ…そんな仕事をずっとやってますよ(笑)。

---好きだっていう気持ちだけで動いてますね。
もう情熱だけなんですよね。情熱って愛のことだから、愛さえ持って作品を作れば、『あれ違うじゃん』って批判する人はいないと思う。でも、こっちに情熱がなくてうしろめたい気持ちでやると必ず批判するヤツがいる。そんなことは気にいらないけどね。 でも自分がどれだけノイローゼになっていくかが勝負だと思う(笑)。だから『今回はかなりノイローゼ出てるね』っていってもらえてうれしいんです(笑)。

---ノイローゼ=愛って感じですね。
映画撮ってるヤツも同じで、おかしい作品を見せてるわけだから。いい映画だって評価するのは、いいノイローゼ出したねっていってるわけで。 だから水野晴郎さんが作った『シベリア超特急』は、万人受けはしないかもしれないけどノイローゼはある。そこで許されるんだよね。

---なるほど、ノイローゼですか。
でもね、若い頃はとんちんかんだからノイローゼになりやすかったけど、大人になるとひょっとしたら違うんじゃないんじゃないか? って疑い出すからね。落ち着いちゃうし、おかしくなるのに時間かかるし。



---今度はノイローゼになるのに時間がかかると。人間とはやっかいですね(笑)。
だから、例えば『海女が好きだ、海女が好きだ、海女が好きだ』って思いこんでるわけ。で、人形とか買っていくと、好きなのかなって思ってくる。そんなことをやってるんですけどね。

---自分をそっちに追い込むと。
努力して変な人にならなきゃ(笑)。でも俺、すごいまともだから、一生懸命不自然に生きてる。そうした方がおもしろいもん。

---普通の人間と違う生き方をするんですか?
そうそう、せいいっぱい不自然に生きるのが一番いいと思う。一生懸命とんちんかんなこといってみたり。そうすればこっちの確信の部分が見えなくなってくるから、何やっても大丈夫。 あー、あの人変わってるなって部分に目いっちゃうから。だってみんな死ぬんだもんね。一生懸命不自然に生きないと。

---そういう経過を経て、みうらさんの場合、漫画の『アイデン&ティティ』が、映画になったりすると。端から見てるとそういうのが凄いなと思ってしまうんですよね。
いや、編集部の人とか、インタビューに来てもらった人とか、なんかとっかかりがあるんですよ。24年くらいこんなことやってたら、仕事で会ってる人がどこか他の編集部に行ったりして、そのうち編集長になってたりするんですよ。 そこから飲みに行ったりとかして仕事を頼まれたりする。人の繋がりって大きいよ。だからみーんな出世してくれって思ってる(笑)。だって俺じーっと待ってるだけだもん(笑)。

---でも人の繋がりっていうのが仕事の上では一番重要かもしれないですね。
それが一番大きいよ。そりゃ才能も必要だと思うけど、才能の次に来るのってそれでしょ。

---特にみうらさんの場合、大きい事務所に所属せずひとりでやられているので、業界内・外でのネットワークって大切ですよね。
フリーで仕事やってるっていうと誤解されやすい。フリーの意味って『自由』だから、一人でやれるって思うけど、そうじゃないんだよね。編集部の人がいないと、フリーっていっても何にも仕事こないじゃん(笑)。 載せてもらわないとダメだってことは、本当はフリーじゃないんだよね。本当に自由なのは、山にこもってる仙人みたいな人じゃん(笑)。

---確かに誰も頼らずに生きてますね(笑)。
フリーのほうが一人で専務やったり、営業やったりしなきゃいけないじゃないですか。社長で編集もやらなきゃいけないってところがあるから、けっこう大変ですよね。所属してれば仲間もいるけど、フリーはいないからね。



---そうなってくると、人との繋がりの重要さがますます 分かってくると。
つきあいって大きいけどな。大きいどころか一番だと思うな。だって、ドームのイベントだって、俺一人の力じゃできないもん。全国から着ぐるみを運ぶ運転手さんからいるんだから。ぬいぐるみに入る人も必要だし。

---スタッフにもいろんな方がいたと思いますが。
ドームで打ち合わせする時に一回顔合わせも含めて行ったんだけど、イヤでさ。向こうスーツ着てる人だからさ、こっち、足暑いから、靴下脱いだりしてるのに(笑)。雰囲気ヘンなんだ。 だから行かないようにしてると、イベント会社の人が話すわけじゃないですか。フリーといいつつ全然違うんだよね。

---自由人でいることとフリーなスタンスで作品を 作ることは違いますよね。
そう、完成した作品は自由な印象に見えるようにしたいと思ってる。世の中的にフリーなことはあるかもしれないから、あまり世の中でやらないことはやっていきたいと思ってるんだ。 だってクラブイベントを主催しても、別に俺じゃなくてもいいじゃん。俺がやる必要がないものもいっぱいあるから、そう考えたらおのずとやらなきゃならないことは少ないんですよ。

---結局、小さな頃からやってるエロ本のエディットとか、いろいろテーマや規模は変われど、好きなものをやるっていうのには変わりはないってことですよね。
やってくうちにだんだん欲望は湧いてくるから、なんか発表したくなるんだよね。そういう気持ちがある限り、今みたいなスタンスでやっているけれども、作品を見せたくなる意欲がなくなったらもうやらないと思いますけどね。

---では、これから夢を持って働こうと思ってる人への アドバイスってありますか。
仕事選ぶ人も、とんちんかんな仕事やったらいいよ。一生の仕事なんて誰もないし、どうなるかわかんないもんね。だって急にクビ切られても困るじゃん。フリーなんて最初からリストラみたいなもんだもんね。雑誌一本連載終わったらそれでおしまいだもん。 『フリーはいいですよね』なんてよくいうよ、会社なんてボーナスもあるらしいじゃん。こっちは毎回リストラだもんね(笑)

---確かに必死にやらなきゃいけないですよね。
それに、フリーの人のリストラ話って聞いてくれないよ。俺みたいな仕事はうらやましがられるけど、なんでだろ。コーナーがなくなるっていわれて、こっちも平気な顔で頷くけど、ものすごい落ち込んでるんだよね。すごく小さい枠でもなくなるのイヤだよ(笑) やっぱ金は必要だし、現金換算で考えるもん。ソープに行く回数が一回減ったーとかさ(笑)。ソープなんか行きもしないんだけどさ。大学卒業して一生の仕事に就けると思ってるのが甘いよ。 とにかくみんな、とんちんかんな仕事やった方がいい。いつか人は死ぬんだからさ 。
INFORMATION
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「色即ぜねれいしょん」
発売中 ¥1,500(税別)/光文社

「とんまつりJAPAN」
発売中 ¥552(税別)/集英社

「ゆるキャラ大図鑑」
発売中 ¥1,886(税別)/扶桑社

「アイデン&ティティ32」
発売中 ¥1,400(税別)/青林工藝舎



PROFILE

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みうらじゅん

1958年2月1日京都市生まれ。AB型。
武蔵野美術大学卒。

在学中、月刊漫画「ガロ」でデビュー。講談社ちばてつや賞受賞。 ビデオ「吉本ギャ100連発」プロデュース。TBS「イカ天」に“大島渚”(バンド)で出演、武道館出場。
「映画・お笑い虎の穴」を企画、監督。ゆうばりファンタスティック映画祭に出品。奥村チヨ氏の歌を選曲したCDを発売、チヨブームの火付け役となる。

96年よりいとうせいこう氏とのトークライブ「ザ・スライドショー」を開催。

俳優・田口トモロヲ氏と“ブロンソンズ”を結成、CD、書籍、CM、ライブ等で活動。自らの造語「マイブーム」が、97年「流行語大賞」受賞語となる。

04年6月には「みうらじゅんin東京ドーム 郷土LOVE2004」を開催、成功を収める。



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