
---今回、監督された映画「バッシュメント」を製作することになった経緯を教えてください。
僕は今年で芸能生活25周年、40歳という年になるわけです。25周年というと四半世紀。40歳というと人生の折り返し地点。そこで何か作品を残したいというのが2年前からありまして。で、知り合いのプロデューサーに話したら『じゃあ、映画を撮ろう』と。どうせなら僕らが見て楽しい映画、僕らが現場でやっていて楽しい映画…出来上がりも僕らが見たい映画を作ろうというところでスタートしたんです。
---映画の題材はサーフィン、レゲエ、夏ということもあってとてもポップな映像ですね。
撮影期間中に寒いのが嫌なんです。冬のロケとか、モモヒキ履いて、もう長袖のラクダの上下を着る状態というのが嫌なんですよ。だから前提として撮影スタートはゴールデンウィーク明け! 公開は冬だとしても!!(笑)。
---撮影だけは寒くない夏で、ですか(笑)。
景色的にも冬のロケーションで画を描くと寂しい画になるんですよね。木なんて緑がなくてまぁ、寒さというのは半分冗談で。…半分本気ですけど(笑)。
---映画全体、原色が多くてカラフルですね。
基本的には弾けてて、ポップで、カッコよくて、ファンキーでというのが大前提であったので、当然、夏だろうと。
---寒くないですし(笑)。
そう、寒くない(笑)。
---全編に渡って、布川さんの趣味が散りばめられていますね。美術さんにはどんな注文をしたのでしょうか?
車1台にしても、普通の車を出すんじゃ面白くないかなって思って、お金がない女のコたちが乗るのは、ちっちゃいジープ、軽のジープ。それをピンク色に塗ってくれって言ったんです。ホイールは白じゃなきゃヤダって。ピンクに白じゃなきゃヤダって。
---細かいですね〜。
で、そういう波乗りしてるサーファーギャルだから…『監督、ナンバーどうしましょうか?』って美術さんが聞いてきてくれるんですよ。みんな勝手にやるんじゃなくって。ん〜って考えて『サーファーだから73で波(ナミ)じゃない?』って。
---あはは(笑)。そう来ましたかぁ。
『中山エミリちゃんのタクシーのナンバーはいくつにしようか?』で『いい女(1107)じゃない!?』とか。安生さんが演ってくれた、思いっきりベタベタヤクザの車は893でいいんじゃない!? とか。こだわりっていうか…パッと見てわからないような細かいこだわり。
---隠れキャラ的な、何回観ても楽しめる…。
そうそう。実はこういう雑誌でも、そういう風に書いてくれると(笑)。普通にこの映画を見たら、そのへんは73とか、893とか、いい女(1107)みたいなナンバーは見逃すとこじゃないですか。そういう裏情報を、こういったところだとか、インターネットで、ちょこちょこやりたいな…っていうのがありますね。
---作品に出演している要潤さんが『役者と同じ目線で監督してくれる』という話をしていましたが、役者さんにどういった接し方をしているのでしょうか?
その人の個性…例えば土屋アンナちゃんの個性だったら、土屋アンナちゃんのいいところを最大限にスクリーンに映し出せればいいのかな…と。僕ら役者でもそうじゃないですか。一生懸命役作りした後に、押し付けられるような芝居をするのが嫌だったりするわけですよ。
僕らは作品をよくしようと思って、与えられた役を頑張って役作りしていくわけじゃないですか。家で練習したりして。それを…否定することはやめようと。
---具体的には、どんなアプローチや指示をしているのでしょうか?
今回、土屋アンナちゃんが主役なんですけれど、ものすごく弾けてて。もし僕がね、役者として『バッシュメント』に出てたら…ということを考えると、普通に演ってたら、土屋アンナのすごいボルテージの高さにかみ合わなくって、後悔するだろうと思ったんです。それで、役者さんみんなに言ったのは『主演がこうですから、皆さん、もっとバンバンにテンションを上げてください』と。
---他の役者さんのボルテージも土屋さん中心にして上げてしまおうと。
『もっともっと上げちゃってくださいよ。もっと上げて上げて!!』って。そうすると面白がって、みんな役者さんってやってくれるんですよね。『え〜、ここまでやっちゃっていいの?』『おかしくない!?』って言うぐらい。
---上から押し付ける監督というよりも、下から盛り上げるような監督、というわけですね。
土屋アンナちゃんに対しては、翌日重要なシーンがあっても『重要なシーンだよ』って押し付けちゃうと、アンナちゃんも大変だと思ったから、スケジュール出して『アンナちゃん明日、何時に入るの〜?』から始まって『お〜! 明日いっぱい丸ついてんな〜! 大変だな〜コリャ〜! 何のシーンだっけ?』大事なシーンだとわかっていても『うわ〜、明日、アンナちゃん、映画のメインのシーンだよ。大変だな、セリフなげぇな〜。平気〜? ここは見せどころだぜ〜』って。
---軽いノリで相手の気持ちをほぐしながらテンションを上げると…。
『アンナちゃんね…。明日、大事なシーンで映画の中で超重要なところだから、よろしくね…』なんていうと重くなるじゃないですか。オレもそんなこと言われたら重くなるし。で、そしたら、次の日、アンナちゃんのお母さんが『監督、監督、昨日、アンナが朝まで台本読んでたんだけど、どういうこと?』って。
---リハーサル嫌い、練習嫌いだった土屋さんが。
で、当日『ここセリフ長いからさ〜。カットいくらでも割れるんだけど』って言ったら、アンナちゃんが『ワンカットでいい。撮っちゃってください』って。
---へぇ〜。そんなことが…。
すごくイイ芝居をしてくれて。オレらスタッフも現場で思わず涙流して泣いてたみたいな…。

---布川さんの今までの人生について。まず、シブがき隊時代の話をお聞きしたいのですが…。
僕らっていうのは、自由にやりなさいって言われてたんです。その前はアイドルはこういうもんだってあったじゃないですか。昔の郷ひろみさんから、西城秀樹さん、たのきんトリオや…。だからラジオでもコンサートでも東京以外は下ネタ全開バリバリみたいな。
---えっ東京以外ですか?
東京はホラ、ジャニーさんとか来るから、あまり下ネタやると怒られるんですよ(笑)。
---コントみたいなこともやってましたよね。
スゴイかぶりものとかして、ね。今、思うとSMAPの人たちがみんなソレやってるんですよね。
---継承してますね。
シブがき隊は好き勝手やってきたグループの元祖かもしれませんね。
---布川さんは10代でアイドルとして爆発的に売れて、その後も俳優、タレントとして、安定したレールに乗っているようなイメージがあるんですけれども…。
そうですね。とりあえず安定はしてるんでしょうね。でもオレはあんまり納得いってないですね。
---納得いってないんですか。
いってないですね。思いっきりガーッていうドン底を味わったことはないんですよ、僕は。
---やっぱり何かしら安定感はあると。
安定感はありますよね。でも、もっと上を目指しているから、もっともっとこの仕事じゃ納得いかないとか…。安定はしているんだろうけど…他のタレントさんとかに比べるとね…。でも納得はいってないね。これで満足か? といったら、満足じゃないね〜。
---どのへんなんでしょうか?
ホントはこれで満足しなきゃいけないと思うんだよね。たまに自分のプロフィールとか見るとね。何年、何年、こういう仕事をやったって見るじゃない? すると別に金に困ったわけでもないしさ…なんか…。
---それは向上心があるということですよね。
…だから今回の映画があったということなんじゃないですかね。なんか違ったことをやりたいっていう。今までずっといい仕事はしてたと思うけど、なんか違うことやりたいなと。
---自分を変えていくという意味では、父親の影響もかなり強かったようですが…。
子供を持ってやっと親父っていうのがわかったんだけれども…。僕は親父が20歳の時の子供なんですね。20歳のときに頑張って仕事をして、子育てをして、好きなものを買ってくれて、カッコイイ親父でいてくれたっていうのは、親父ってスゴかったんだなって思うよね。

---どんな遊び方をされていたんですか?
親父はオレがちっちゃいころから、夏は海でモーターボート。冬は山行って、鉄砲打ち。犬連れて、キジとか捕って…。川崎の公害バリバリの工場地帯に住んでいたけれども、そういう自然に触れ、自然が大切だということは、教わった気がしますね。
趣味として『自然環境保護活動』ということをしてるんだけど、僕らが地球を汚しても、直接、自分たちには被害がないと思うんだよね。自分たちの孫とか、ひ孫に影響が出るわけで。でもオレらが死んだ後の子孫が困るわけじゃない。だからオレ、それ(自然環境保護活動)をやってるんだよ。その気持ちを教えてくれたのが親父だよね。
---その気持ちをさらに、現在の布川さんのお子さんに伝えていると。
息子とは『男旅』っていって、山に行ってさ、1泊2泊してクワガタ捕ったりしてさ。なんか…自然の中で遊ぶと、家の中とは違った会話ができたりしてね…。
---自然の中にいることによって親子のコミュニケーション密度が深まるわけですね。
そう、そう。
---布川さんが人生において心がけていること、意識していることを教えていただけますか?
僕がいつも思っているのは、たった一度の人生じゃないですか。頑張りも必要だけど、楽しくハッピーに生きないと、後悔すると思うのね。
死ぬ間際に、今までのオレの人生振り返ってみて『一生懸命やって大変だった…』。それもいいよ。でも『いや〜オレの人生楽しかった。ハッピーに生きられてよかった』。そこらへんだね。常に思ってるのは。
---人生をとにかく積極的に楽しむと。
毎日、毎日を楽しまないと。多分死ぬ間際になって後悔すると思うのね。一生懸命仕事をすることは大切だよ。で、仕事でも自分でモチベーションを上げて『この仕事、大変だけど楽しいな〜』みたいなところに持っていく。
---役者さんの気持ちの上げ方も、そういった部分からきてるんでしょうか。
アンナちゃんが最後の撮影のときに言ってくれたのが『すっごくこの映画やってよかった〜。サイコー楽しかったです!!』って言葉。本人はすごいキツかったと思うんですよ。寝る時間もなくて。でも彼女はポジティブだったね。現場楽しんでたしね。そのへんは…映像に出てると思いますよ。
---自分も相手の気持ちも上げていくと…。
大人になった僕はね。でもやっぱりまだ20歳とか21歳くらいならさ、子供だもん。オレだって子供だったもんね、その年ならさ。シブがき隊やってたころも、周りのフォローはいっぱいあったから…。やられてたもん、ヨイショ、ヨイショって。『今日もお客さんいっぱい入ってるよ〜! さぁ〜盛り上がっていこ〜!!』って。やってくれてたことを返してあげたいよ。とにかく後輩たちに。人生の後輩たちにね!!」 |
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INFORMATION
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映画「バッシュメント」
監督/布川敏和
製作総指揮/牧義寛
製作/シネハウス
出演/土屋アンナ・要潤・中山エミリ・宅間孝行・松原しゅう・黒沢茜ほか
12月24日から
渋谷シネクイントで公開
12月17日から
品川プリンスシネマで
先行ロードショー
監督/布川敏和
製作総指揮/牧義寛
製作/シネハウス
出演/土屋アンナ・要潤・中山エミリ・宅間孝行・松原しゅう・黒沢茜ほか
12月24日から渋谷シネクイントで公開
12月17日から品川プリンスシネマで先行ロードショー
兄・海人(要潤)を親殺しの殺人鬼と断じ、復讐を誓いながらも、明るく元気に力強く生きる女、樹里(土屋アンナ)。横浜アンダーグラウンドを舞台に、七転八倒抱腹絶倒の末に劇的再会を果たす兄と妹。2人を待ち受ける運命とはいったい!?
重い過去を背負った若者たちの青春群像を、爽やかに描き出すスラップスティック・ロマンティック・アクションムービー。監督自らがつけたタイトルは、好きな音楽のダンスホールレゲエ用語でパーティーで派手に騒ぐことを意味する。
ナンセンスなブラックジョーク的味付けや意外な人のゲスト出演、劇画コミック調や活動写真風などの映像表現の挿入、登場人物の妙な設定…この遊び心的脇役の妙は見逃せない。
http://www.cinehouse.co.jp/bashment
PROFILE
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布川敏和(ふかわ・としかず)
1965年8月4日生まれ。神奈川県出身。40歳。
81年、TBSドラマ「2年B組仙八先生」で共演していた元木雅弘、薬丸裕英、布川敏和で結成されたシブガキ隊は、82年5月に「NAI・NAI・16」で歌手デビュー。
88年11月の解散後は俳優として映画やドラマ、舞台などで活躍、また講演や執筆活動を行うなど幅広いフィールドで活躍している。
1月公開予定のアニメーション映画「銀色の髪のアギト」(杉山慶一監督)にアギトの父親役で声の出演をしている。妻は元タレントのつちやかおりさん、一男二女を持つ父親でもある。
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