
---少年時代は、どんな感じだったんですか?
「もう超ええかっこしいですよ。表にええかっこしいが出るんではなしに…誰かがいじめられたとかなると、オレが行ってこらしめるみたいな。高倉健さんが好きで。“弱きを助け強きをくじく…”オレはこんなヤクザになりたいと。高校卒業したらヤクザ直行みたいなね。そんなことも考えてましたね」
---ケンカは強かったんですか?
「オレは普通よりちょっと強いくらいなんだけど、ええかっこしいだから、友達がワル学校の番長連合にからまれると「じゃ、オレが行ってきてやるよ」って言ってそいつらのとこまで一人で行って謝らす。木刀とかチェーンとか持って何十人も待ってるのに、一人で行って」
---度胸ありますね〜。
「そうすると、向こうが気持ち悪がるんですね。『なんや、お前一人で来たんかぁ〜』って。『一人で十分やないかい』とボタン外して。もう負けるのはわかってるんだけど、高倉健さんの映画見てるから(笑)。男は逃げちゃいけないと。やることやれと。自分は正義だ。悪くない。じゃあ、やるしかねぇだろ。負けても関係ない!」
---なりきってるわけですね。
「…って脱ぎ出して普通に言うわけですよ。すると向こうのワルのヤツが『待った…』。その瞬間『あ、勝った』ってね」
---戦わずして勝っちゃったと。
「それでその場は終わるんですよ。で、何日かしたらまたその学校のヤツから連絡があって。今度は一番強い番長が呼んでると。人数も増えて40人くらい待ってると。『来れるもんなら来い』っていうから『行くよ。…オレ何にも悪くない…』。高倉健さんや(笑)」
---入り込みますね〜。
「行ったら『ホンマに来たんかい!!』って、で『すみませんでした』。結局、何もしないで勝ったんですよ」
---その不良少年が、どうやってボクシングと出会うのでしょうか?
「親が『今日、沖縄から出たボクシングの世界チャンピオン出てるから、爪の垢でも煎じて飲め』みたいなこと言ってくるから、友達とタバコ吸いながらテレビ見てたわけですよ。それが具志堅用高さんがチャンピオンになってからの初防衛戦で。具志堅さんがいきなりダウンして『なんやもう負けるんや』なんて言ってたら、ダウン跳ね返して傷だらけになって顔腫らしながら勝つわけですよ。それがすっごいもう男ですよ!! 今まで健さんに憧れてたオレが『違うわ〜。ヤクザの世界とは、これは違う』と、もう鳥肌立ってるわけです」
---人生の転機ですね。
「『この人、渡嘉敷と身長も体重も変わんないんだよ』って言われて『オレと同じ身長、体重で、この世にオレより強いヤツおるんか』と。『よし、じゃ、オレ東京にこの人倒しに行くわ』と言ったら『アホちゃうか』と(笑)。『お前は、ケンカ強いけど、ケンカとボクシングはレベル違う。ましてプロボクサーや。レベルがぜんっぜん違う。ましてプロの中の世界一や。勝てっこない』って」
---普通はそう思いますよね。
「でもオレは入り込んでるから『いや、オレ、もう目標決まったんや。この人倒しに行くわ』『渡嘉敷、大変やぞ。酒もタバコも女もあかん。渡嘉敷、全部やっとるやん。どうやって戦うんよ』『やめりゃいいんやろ」って、吸ってたタバコを消して窓から捨てて、飲んでたビール窓から捨てて、隣に座ってた女の子を窓から…」
---ははは。
「それで本当にその日から全部やめたんですから。『よし、オレ、東京に戦いに行く。お前ら帰れ』と。『明日から戦いの日々が始まる…』。次の日から朝ロードワークしてるわけです。朝5時に起きて走ってる。で、計画的に学校も辞めて、お金も半年間朝晩働いて100万貯めて、東京に乗り込むわけです」
---で、最初はバイト生活ですよね?
「そう。新宿でバイトしてて、近くでジム探そうと。そしたら隣の代々木に協栄ボクシングジム(現在は新宿)が電車から見えて。『よし! ここや!! ここなら無駄な時間を過ごさないでいい』で、すぐに入会しに行ったら、歴代チャンピオンのパネルがあって…『おー! 具志堅さんがいるジムかい!』」
---マンガみたいな偶然ですね。
「で、入会して3ヶ月くらい、ちょうど18歳の誕生日。外で縄跳び跳んでたら、記者団がすごい来てて…。なんやろ〜な〜って見たら『お! 具志堅!! こんなに早く宿敵と会えるとはな…おもしれぇ!』って」
---そのときは具志堅さん5度目の防衛戦で。
「そう。その準備で日本チャンピオンクラスをあちこちから雇ってる。なぜ雇うかというと、練習でも本気でやるから、み〜んなアゴ骨折、鼻骨折、で、みんな辞めていっちゃう。で、自分のとこの選手を使えないから、1ラウンド3万くらいで雇うわけよ」
---3分で3万円ですか。
「すると5ラウンドの間にバッタバタと倒される。5人とも全員。1ラウンドから10ラウンドやる練習なのに、アッという間に5人倒れる。で、具志堅さん『こんなもん練習にならんよぉ』と怒ってるわけ。その具志堅さんを教えてたトレーナーが、たまたま僕のことも教えてたんだけど『どうだ渡嘉敷、コワイだろ』って。『コワイぃ!?』。この人と戦うために学校も捨て、酒タバコも辞め、盗んだチャリンコもちゃんと返し…」
---盗んだものはちゃんと返さないと。
「ね。…好きだった彼女とも別れてるわけですよ。…僕の中には夢の構図があって、いつか具志堅さんと倒し倒されの世界戦をし、最終ラウンド僕の手が上がり、そして倒れ、病院に運ばれ、そして死ぬ…という」

---ドラマチック〜。
「いや、ホントに死んでもいいと、それぐらい熱い思いできたわけですよ。それが『コワイだろ』はないだろと。でトレーナーが『じゃ、やれんのか』『望むところです』そしたら『おい、具志堅遊んでやれ』と。『遊んでやれはないだろ』と今までのこと思いながらグローブつけて。『今日勝たれんでも、どこか傷つけたろ』。まぁチンピラ根性ですよ。カーン鳴った瞬間ババババーッて5、6発殴りにいってバチバチバチーッて当たった。で、7発目トドメ!! って思いっきり打っていったら、いち早く向こうの左ストレートがバシーッ! 鼻プッチーッ! 鼻血ダラーッ!!」
---やはりやられてしまったと。
「だけど僕は『いいねぇ…世界チャンピオン…100の力でこいよ』と、またいくわけですよ(笑)。その後もメッタ打ちされても倒れない。世界チャンピオンが走ってる毎日15キロも走ってる。ジムでも3〜4時間練習してる、物凄いトレーニングしてる。あんまり倒れないオレにイライラした具志堅さん、足ひっかけて倒したんだから。ファンとか記者団から『あの具志堅が練習生にムキになってるよ…』って。オレは起きながら『ライオンはウサギを倒すにも100の力を出すもんよ…こい!!』なんていって」
---生意気な練習生ですね〜(笑)。
「で、結局2ラウンド倒れなかった。すると具志堅さんが『コイツいいねぇ〜。これからスパーリングパートナーに使おう』」
---たった3ヶ月で。
「って言われたんだけど、オレもうリング降りるとこだったんだけど『具志堅さん…アンタがオレのパーリングパートナーだよ…』てね。練習生のオレが言うわけですよ。まぁ、そのとき口には出さなかったけど(笑)。本当の戦いの日々が始まったな…ってなるわけですよ。で、今度は世界チャンピオンと同じ時間帯にわざと来るわけです。また戦いたいから。練習相手に選ばれたいから。世界一の教本がそばにいるわけですよ。最高でしょ!? それを盗みながら練習する。また量もやる。どんどん強くなる」
---渡嘉敷さんも研究熱心ですよね。
「具志堅さんの練習相手にタイとかフィリピンとかから連れて来た選手も、具志堅さんが疲れて練習できないときは『オレにやらせてくれ』。4回戦のオレが、その世界ランカークラスのヤツに『トレーナー、オレ、あの選手とやらせてくれ』ってね。『お前やんのかよ』なんて言われながらもムリヤリやってたくらいだから。…もう人が変わりましたね。違う人。ボクシングに対しては」
---チャンピオンになり5回の防衛後、引退…。
「脳波が乱れてるって医者に言われてね。3ヶ月悩んでるときに芸能界の仕事が来たの。かくし芸大会で、ちょうどボクサー上がりのチンピラ役で僕が出たんですよ。『あ、これだな』と。『もう、ボクシングできないならしょうがない。グダグダ言っててもしょうがない。この新しい世界で身を立てよう!』ってね」

---ボクサー時代というのは、練習がキツイ苦しいというものがあると思うのですが、芸能界に入って苦しかったことってありますか?
「量的なことで苦しいっていうのは、それほどはないですけど。何を鍛えていいかっていうのが難しい。そこはやっぱり厳しかったですね」
---確かに、勉強とかスポーツみたいに具体的な練習は難しいですよね。
「役者でやっていきたかったけれど、役者の仕事はこない…。そうすると実践でできない。で、バラエティーが全盛って言われてたときに、たけし城から出て…そのうち役者の仕事も来て、少しづつ仕事が増えていったという感じですね」
---で、今回主演なさっている映画「カチコミ刑事−」の話につなげていきたいのですが…。
「渡辺二郎さんと一緒に主演させてもらってまして、ボクシングの世界チャンピオンが2人主役で出るというのは聞いたことがないんで、珍しいし、そういう意味では面白いと思いますよ。
けっこうボクシングやってる人ってボクサーがやってる映画って見たいんですよ。だからボクシング界でもクラスが関係なくてもチャンピオンじゃなくても、『世界チャンピオンがやってんだ。見たいな』っていうのはあると思うんですよ。だからボクシング界に流せ流せって(笑)。ボクシングジムにもポスター貼れと。励みになるじゃないですか。
ボクシングの世界チャンピオンになって引退したら終わりかなというよりも、芸能界のラインがあって…ガッツさんが行ってくれたんで…渡嘉敷も行き、いろんな人が今やってますよね。で、芸能界とラインできたんだと。でも今、バラエティー多いじゃないですか」
---確かにそうですね。
「だけど映画の世界にも行けるんだよ! っていう…のを、みんなが励みにしてくれると嬉しいんですよね。だから、なんとか当てたいなというね」
---最後になりますが、男とはどうあるべき? どう生きるべきだと思いますか?
「男は…強くて、優しくて、ここまでは高倉健さんの世界ですよね(笑)。で…女性を幸せにする。自分についてきた女性を幸せにしていくことが男じゃないか…。男で、オレが世界で一番なんだっていうことよりも、自分についてきた人間を大事にしてあげる。一番は家内、子供という家族。…女を守るのが男だろ! という、そんな意識はあります」
---大きな夢も必要ですけれど、身近な人を大切にすることが重要なんですね。
「夢は果てしないけど、あの…理想は小さいかもしれないけど、男は女を大事にする…。周りの人を幸せにする…。まぁ…僕も100%できているわけではないんですけれど…、やっぱり、いつかお互い死ぬときに『あなたといてよかったわ』って言われるのが、結局のところ男としての最高の喜びじゃないかという気はしますね」
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INFORMATION
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映画「カチコミ刑事 オンドリャー!大捜査線 心斎橋を封鎖せよ」
1月16日から渋谷アップリンク・ファクトリーで公開
1月27日にDVD版がリリース
元WBA&WBCスーパー・フライ級世界チャンピオンの渡辺二郎と、元WBAライト・フライ級世界チャンピオン渡嘉敷勝男の2人が刑事に扮してディープ大阪“新世界”を舞台に暴れ回る。笑いあり、アクションあり、サスペンスあり、涙あり、ちょっぴりお色気ありのはちゃめちゃムービー!
東京から大阪の新世界署への赴任を命じられた警察庁のエリート刑事、真上正義(載寧龍二)は署の面々に唖然呆然。チンチロリンをしている刑事たち、通報電話の受話器を持ち上げるとそのまま架台に戻す刑事、「泥棒すんなら大金持ちから盗らんかい」と豪邸の合鍵をコソ泥に渡す刑事…。
そんな中、関西の吐きだめと思われている新世界で健気に生きていたキャバクラ嬢のサラダ(ほしのあき)が失踪したとの一報が。彼女を心から応援していた“もっともっとあぶない刑事”織田アゲル(渡辺二郎)と“かなりあぶない刑事”深爪(渡嘉敷勝男)たちは、界隈での聞き込みを開始。屋台のたこ焼き屋・心斎橋に青海苔を納品している男が、サラダが失踪する直前に付いた客であることが判明する。
織田と深爪は、大阪中をクスリ漬けにしようと企む謎の組織のアジトに辿り着く。織田、深爪、真上の3人は果たして大阪を、いや関西を、いや日本を、いや世界を、いや新世界を救うことは出来るのだろうか!?
監督/鈴木浩介
脚本/小林弘利
配給/アートポート
出演/渡辺二郎・渡嘉敷勝男・載寧龍二・ほしのあき・坂上香織・遠藤憲一ほか
PROFILE
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渡嘉敷勝男(とかしき・かつお)
1960年7月27日生まれ。沖縄県出身。45歳。
81年にWBA世界ライト・フライ級チャンピオン獲得。以後、世界タイトル5回防衛し85年に。
引退ボクシング引退後は、TBS「風雲たけし城」に出演、“トカちゃん”の愛称でお茶の間に登場、人気者に。
テレビドラマや映画では渋い役からひょうきんな役柄までこなすなど天性のカンの鋭さを発揮し、またバラエティーでも鋭い回答を連発、人気に的である。
ボクシングジム会長で、新興行MONSTERSのゼネラルプロデューサーも務めている。
○渡嘉敷ボクシングジム
http://www.tokashikigym.com/
○インターネットボクシングサイト「MONSTERS」
http://www.monsters-web.net
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