
---今回、ジュニアさんが書かれた自伝的小説「14歳」なのですが、ドロドロとした感情を淡々と吐露している文体ですよね。読んでいるこちらが苦しくなる時さえあるっていう。それなのに、つい引き込まれてしまうんです。
そうですか〜!? 昔から作文とか、得意なほうではなかったんですよ。文章を書くのは好きでも嫌いでもないっていう感じで。というか、得意科目って全然なかったかも知れません(笑)。…あぁ、そういえば一度、教室の壁に僕が描いた絵が貼り出されたことはありましたね。中1の頃なんですけど、先生に『鏡に映った自分の顔を描きなさい』と言われて。他の子は自分の顔だけを描いたんやけど、僕は手と手鏡と自分を描いたんです、確か。そうしたら先生に『こんなアングルで描いた絵は初めて見た』と褒められましたね。でも文章は…上手って言われたことはない気がします。
---では、得意ではなかった“物書き”に、チャレンジするきっかけはなんだったのでしょうか?
10年ほど前に、雑誌の編集の方から『小説を書いてみませんか』と連載の話をもらったんです。まぁ、せっかくもらった仕事だから挑戦してみようかなと。テーマはタイトル通り、14歳・中学2年生の頃の自分で。でも実は、人生の中で一番戻りたくない時期でもあったんです。自分が最も書きたくないことを他人は読みたがるもんじゃないかなぁ…と思って、あえて題材に選んでみました。月1回の連載で、1年ぐらい続けたかな。当時は東京と大阪を行き来してる生活だったから、もうどっちで書いたのかさえ記憶にありませんけどね(笑)。
---10年前の連載作品が今になって単行本化ですか? ずいぶんと時間がかかったような気がしますが…。
いやぁ〜本にするのはずっと断ってたんですよ。若い時のことを書いた話だから、青臭いし恥ずかしいじゃないですか(笑)。だけど、10年経ったら笑えるようになったというか、笑えるキャパみたいなものができたんでしょうね。
---リライトにはどれぐらいの時間をかけたのでしょうか?
編集の方と『じゃあ本にしましょう』となった時、自分の中には書き直そうっていうベースを組み込んでいたんです。で、10年ぶりに改めて読み返したんですけど。『コレを書いた温度には戻れへんやろな』と実感しましたね。イビツな形をキレイに直してしまって良いのか、直してしまったら伝わらないんじゃないかって相当、迷いましたし。少しは加筆修正したけど、ほとんど連載していた時のままの文章なんですよ。
---本作はジュニアさんの“引きこもり”がテーマですよね。そうなった具体的な原因はなんなのでしょうか。
いろんなことが積み重なってますね。小さい頃はみんなと遊ぶ悪ガキだったんですよ。でもそのうち、やんちゃすぎて友だちの親から『千原君と遊んだらあかん』みたいに言われるようになったんです(笑)。で、中学に上がる時、私立の進学校へ行ってやろうって思ったんですよ。公立は黒い詰襟の学生服だったんですけど、私立の進学校の制服は紺色で。その青い学生服を着てると 賢い子や って一目置かれるんです。だから『よし、そこに行こう』って。でも、いざ入学してみたら、すごくいいところの子ばっかり。クラスメイトとまったくしゃべれなかったんです。
---もし、ジュニアさんに生きる道が見つからなかったら…。
“お笑い”という生きる道が見つからなかったら、まだ部屋の中に居続けたかも知れないですね。引きこもりを経験したからこそ、今の僕がある。あれを経なかったら違う人間になっていただろうなって想像する時がありますよ。
---なるほど。現在、引きこもりに関して、どうお考えですか?
僕が中学生の頃は“引きこもり”っていう言葉すらありませんでしたからね。近所の人からは 登校拒否児 って噂されてたのかな、分かりませんけど。ただ、引きこもりが悪いって、一概には言えないと思いますよ。徹底的に考えたいから外に出なくなるわけですし。今はパソコンがあるから『身体は中、脳みそは外』っていうこともできますけど。でも、個人的には『ぜいたく病かな』って。今だから言えますね。引きこもれる部屋があるだけ幸せだったのかなって。家族が、6畳一間で暮らしていたら、したくてもできませんから(笑)
---それにしても本作は、まるで14歳当時のジュニアさんが書いたような仕上がりですよね。かなり昔のことなのに、ここまで鮮明に覚えてるとはスゴイ! 記憶力が良いんですか?
良い方かも知れないですね。幼い頃の記憶は、あったりなかったりですけど。これを書く時は、ハッキリと鮮やかに思い出せましたよ。僕が知っている、世間で優秀だと言われている芸人さんにも、記憶力バツグンの人が多いんですよね。僕よりよっぽど細かいことまで覚えてるから、尊敬しますよ。
---では、脚色はナシというですか。
いや〜あくまでも自伝 的 小説ですから。ただ一つ言えるのは、僕は作品ほどケンカが強くなかったです。これを書いてる時は、ええカッコしたかったんやろうなぁ、たぶん(笑)。
---ですよね(笑)。こんなに暴力的な人間が実在したら恐ろしいです…。14歳からかなり年月が経ちましたが、現在、ご家族との関係はいかがですか?
僕ね、おばあちゃんっ子なんです。3歳まで育てられてましたから。時々、食事もしますよ。本にも書きましたけど、2人で旅行に行ったこともありますし。今でも3日に1回は電話がくるほど仲良しで。おばあちゃん、ボケ防止にワープロをやってるんです。以前届いた手紙に、『こうちゃん、お元気ですも? おばあちゃんは元気っす』って打ってあって…大ウケしました。
---素敵な天然キャラのおばあちゃんですね〜(笑)。ご両親とは?
おばあちゃんと同じぐらい大切な存在だと思えるようになりましたね。ありがたいな、と。オトンとはあまりしゃべる機会がないですけど。オカンからは、たまに電話がかかってきます。僕の年齢の割には会話をする方でしょうね。大阪でテレビに出るようになった頃からコミュニケーションが上手く行くようになりました。バイトしないで、お笑い1本で食べられるようになってからです。
---ご両親もテレビで見られるようになって喜んでるんですね。
喜ぶっていうより、いまだに不思議がってますよ。『お前が人を笑かす職業に就くなんて…』って。僕としては、素人より芸人人生の方が長いから、逆に不思議がるのが腑に落ちない。まぁ、引きこもっていたから無理もないですけど。
---ジュニアさんにとって、お笑いという道に誘ってくれた、お兄さんとは?
もう兄弟っていう感覚はあまりないですね。コンビの方が兄弟歴より長いですから。ネタを作っているのも僕なんで。相手が兄貴だからって、後ろをついていくわけにいかないのが現状なんですよ。
---お兄さんに誘われるまで、芸人になるという意識はありました?
いや、なかったですね。靖史にNSC(吉本総合芸能学院)へ連れて行かれて。そこでネタ見せの授業があったんですよ。で、『なにかやらなアカン』ってことになって、靖史に急遽ネタを書かされたのが最初ですから。
---ネタや企画はどのようにして考えているのでしょうか?
考えるというより、ある日突然パッと“下りて”くるんですよ。言葉にすると、感覚とかヒラメキに近いですかね。それを実現させていってるだけの話で。いつ“下りて”くるかも分からないし、期間もまちまちですけど。
---単独ライブ「6人の放送作家と1人の千原ジュニア」も 下りて きた企画ということですか?
そうですね。いきなり“6”という数字が頭に浮かんだんです。詩を朗読して観客を笑かす企画もそう。提案したら、『じゃあ、誰もやってないからやってみよう』ってことになったんです。
---今はなにか、きてますか?
個展っていうのがありますね。物を創りたいな、と。まだ具体的に動いてはいないんですけど。お金や制作期間のかかることですから、物理的に難しそうですし。かなりのスパンを要するから、今は寝かせている状態です。
---精力的に活動を続けていますが、その原動力は。
初めて人前でネタを披露して、ウケた時の快感が忘れられないからですかね。もう一回味わいたいっていう。それまで人を笑わせた経験があまりなくて。本当にショッキングな出来事だったんです。それはもう、初めてセックスした時よりも衝撃的でした(笑)。『もう一度あの気持ち良さを…』っていうのが原動力といえばそうかも知れませんね。
---著書の編集担当の方から『ジュニアさんはこの本の売上を伸ばす気満々ですよ』とお伺いしましたが?
その通りです。今回はキャンペーンにも励みますからね。東京と大阪、2ヶ所も行くんです。
---2ヶ所も、ですか(笑)。では最後に、意気込みをお願いします。
最近、芸人さんが書いた小説がバンバン売れてますよね。ブーム到来なんです。つまり、僕の小説が売れなくて、ブームに終止符を打つわけにはいかない(笑)。だから売れてくれないと困るんです。次にバトンタッチしないと。…でも、自分が一番書きたくなかったテーマですからね…。買っていただき、そのまま本棚へ収納してもらうのが一番(笑)。そう、買っても絶対に読まないでください。決して狙っているわけではないんです。本当に、オカンにだけは読んでほしくないですねぇ…。
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INFORMATION
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DVD「15弱」
06年7月21日から23日までの3日間、紀伊國屋サザンシアターで行った千原兄弟の単独ライブ「15弱」の模様を収録。「伯爵様」「矢ザラリーマン」「Yの新しいやつ」「こいつ」ほか、全16編のコントを収録。
発売元:
R and C Ltd.
3990円(税込)
書籍「14歳」
幻の自伝的小説、ついに単行本化!人生最悪の14歳、引きこもり少年は、“自分探し”の旅に出た−。“カリスマ芸人”と芸人仲間からも一目置かれる千原ジュニア本人が「二度と戻りたくない」と振り返る少年時代をもとに、独特の感性と鋭い人間観察で描いた自伝的小説だ。
発売元:講談社 1470円(税込)
PROFILE
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千原ジュニア(ちはら・じゅにあ)
1974年3月30日生まれ 京都府福知山市出身
本名・千原浩史 1989年、実兄・靖史(セイジ)とお笑いコンビ千原兄弟を結成。94年に第15回ABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞、第29回上方漫才大賞新人賞を受賞。NSC第8期生。TX「やりすぎコージー」、NHK「着信御礼!
ケータイ大喜利」などにレギュラー出演中。役者としても活躍しており、映画「ポルノスター」「HYSTERIC」「ナイン・ソウルズ」「MOON CHILD」などに出演。主な著書に「千原ジュニアの題と解」(太田出版)、「少年」「答え」(ともにリトルモア)などがある。「やりすぎコージーDVD1」、「やりすぎコージーDVD2」、「やりすぎコージーDVDBOX1」、「人志松本のすべらない話其之弐」が好評発売中。
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