
---05年度の主要映画賞を総ナメにした「パッチギ!」続編が遂に完成ですね! 前作のキャストを引き継いで構想を練っていたと聞きましたが、キャストが一新されてますよね。
シリーズ化を視野に入れて骨組みを考えてましたから。ヒロインには沢尻エリカさん、その兄役には高岡蒼甫さんを、と前作同様に考えてました。でも、2人は今や押しも押されぬ人気俳優。メディアに引っ張りだこでしょう。2ヶ月以上もかかる撮影スケジュールを調整できなかったんですよ。
---引っ張りだこになられたのは、前作『パッチギ!』に出演されたからですよね。
その通り(笑)。ただ2人とも、出られないのを残念がっていたとは聞きましたけどね。
---前作に引き続き、フレッシュな若手俳優を起用されてますが。
そう。観客に映画へ感情移入してもらうためには、物語を邪魔しない子が演じないと。その辺のアイドルやタレントもどきにできるわけがないんですよ。ヒロインのキョンジャは自分が在日ということを隠してタレント活動する役柄なんですけど、本当に在日を隠してる芸能人が演じたら、より真実味を帯びた仕上がりになったでしょうね。
---主演2人をサポートする豪華出演陣も見どころですよね。藤井隆さんの起用とか。
僕は映画を創る時、吉本興業さんから誰か1人採用してるんです。で、『重厚な演技をできる人は誰かな』と考えて矢を放ったのが彼なんですよ。本当に勉強熱心でね。岩手弁で警察官にまくし立てるシーンは現地の人そのものですよ。演技力の高さには感謝しきりですね。
---国生さゆりさんも意表をつくキャスティングでした。
彼女が演じるのは、精神的に苦労してる役どころ。国生さんぐらい、芸能界でバッシングされたり翻弄された経験を持つ強い女優でないと迫力が出せないんです。おニャン子クラブという、一大ブームを築いた1人でもありますしね。素晴らしい演技力で一発OKでしたよ。
---西島秀俊さんも、ああいった役で出演するとは…。
あ〜ちょっとストップ(笑)。西島さんのキャラは隠しネタなんですよ。誰も想像がつかないような役で登場してもらうんです。確認したければ、劇場へ足を運んでもらわないと。
---分かりました(笑)。子役の今井悠貴クンは、現場でも大人気だったらしいですね。
“チャンス踊り”なんてダンスを開発してましたからね(笑)。演技力に関しては、大人顔負けで。子役ってリアルに演じられる子が少ないんです。児童劇団のような“お遊戯”っぽい芝居になってしまいがちで。一番上手かったんじゃないですか? 『大したやっちゃな〜』と感心させられましたよ。ええ役者です。出演してもらった役者みんなが役にピタッとハマッていて、すごく僕は助けられました。
---監督が本作を創る動機や原動力は何だったのでしょうか?
アンソン一家という家族を軸にして、骨太な娯楽活劇を撮ってみたかったんです。家族を描くということは、詰まるところ命そのものを描くことですから。前作では68年の恋と友情を表現するだけで精一杯でしたし。
---そうなると、続編と謳うより新作という色合いが濃いのでは。
世間が勝手に『パッチギ!2』と呼んでいるのを裏切ってやろうという思惑もありましたよ。あとは、答えが出ていない在日問題を、映画を通して日本社会に突きつけてみたいというのも理由のひとつでしょうね。
---本作は、2つの時代が交差してますよね。74年と44年。44年の舞台は南洋諸島で、迫真感溢れる戦争シーンが満載です。
僕は戦争を知らない世代ですから、取材を重ねましたね。日本軍の支配を逃れてヤップ島にたどり着き、生き延びた朝鮮人がいたのは事実。この映画のプロデューサー、李鳳宇氏の父親の体験談なんです。
---では、李氏の父親が生き延びなければこの映画は…。
李氏が生まれないわけですから映画は完成しませんね。『パッチギ!』が製作されることもなければ、僕がこうしてインタビューに答えることもなかったでしょうね。
---芸能界の裏側を描いたシーンも気になります。
当時はヤラセ番組が無数に存在していたんですよ。一番分かりやすいのが芸能人水泳大会。必ずポロリと胸を出してしまうタレントがいたんです(笑)。“脱ぎ専”と呼ばれて、売れない子に白羽の矢が立てられていたんですけどね。裏ネタが芸能界の実情なんです。
---在日を隠して売り出すというのも…?
略歴を偽るのは、今の芸能界でもよくあるパターン。公表することで、スポンサーが降りたり仕事が激減するのが日本の芸能界ですから。
---ラヴシーンまであって、見応え満載ですよね。
西島さんに『好きにやれ』と伝えた後は、ほったらかしでしたけどね(笑)。
---それなのに、キスだけで観客をドキドキさせるとは!
そうやろ〜(笑)。あのシーンはキョンジャが野村に身を委ねていくきっかけだから、繰り返し撮影しても意味がないんですよ。僕はピンク映画を撮っていた時代もあったけど、セックスシーンは別ですよ。セックスはエンターテインメントですから、何度も撮り直してエロ度を追求しないと。でも、初めてキスする設定を繰り返し演技させると、新鮮さが損なわれてしまいますからね。だからリハーサルなしの、ぶっつけ本番一発。
---劇中音楽には、監督なりのこだわりがうかがえます。
60人編成のフルオーケストラ演奏で収録したんです。『イムジン河』を含め15曲。『岸和田少年愚連隊』以来の“生オケ”で、基本に戻った感じです。
---完成披露試写会で監督は『今までで一番、一生懸命頑張った』とコメントしていましたね。
模索し始めてから1年以上かけて創り上げた作品ですからね。その間はずっと、この映画に明け暮れてました。48時間の徹夜作業をした日もあって、何日の昼だか分からなくなることさえありましたから。歳を取るのも忘れて没頭しましたよ(笑)。

---本作は韓国でも近々、公開ですよね。
前作で波紋を広げた甲斐あって、韓国のファンや映画界もこの映画を待ち望んでくれているみたいなんです。純粋に嬉しいですね。韓国には、有名な監督が『この映画が面白い!』と雑誌やネットで伝えると、瞬く間に作品が広がるという土壌があるんですよね。
---その有名な監督とは?
日本の漫画が原作の映画『オールド・ボーイ』を創ったパク・チャヌク監督が最たる人ですね。
---気が早い話ですが、3作以降を期待しているファンも多いと思います。次回作のテーマは決まっていますか?
今はまだ決めてないですよ。やっとこの映画が完成した、という気持ちのほうが大きいですから。3作目、創れるんですかね…正直分からないですよ。映画になるテーマやネタは、ある日突然フッと湧くこともあるし、考えてきたことが急に具体化することもあるし。映画は僕1人で創るモノじゃないですからね。今は、キャンペーンに回らないと。演歌歌手のように(笑)。
---では、読者にメッセージを。
僕らの創る作品は、そんじょそこらのモノとは確実に違いますよ! 蓋をした現実をカミングアウトする映画は必要だと信じて制作しましたから。斬新なショックを味わってほしいですね。僕が映画部外者なら『またエグイことをテーマに選んでるな〜』と感じるほどです。映画館で寝ようと思ったら大間違いですよ!
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INFORMATION
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映画「パッチギ!LOVE&PEACE」
05年(平成17年)に毎日映画コンクール日本映画大賞、ブルーリボン賞の作品賞など賞を総ナメした大ヒット映画「パッチギ!」の第2章である「パッチギ! LOVE&PEACE」。在日朝鮮人の兄妹を軸に描く青春群像劇で、舞台を前作の昭和43年の京都から49年の東京に移し、キャストもヒロイン・キョンジャ役を沢尻エリカから中村ゆりに、キョンジャの兄アンソン役を高岡蒼甫から井坂俊哉に一新した。パート1で鮮やかな印象を残した主人公リ・アンソン一家が、難病を抱える息子チャンスの治療のために上京してきた直後から物語は幕を開ける。前作で物語の核≠ニなった「イムジン河」を、今回は60人編制の東京フィルハーモニー交響楽団が演奏しているのも話題だ。「岸和田少年愚連隊」(96年)以来となる生オケ≠ナの映画音楽に、監督も「基本に戻った感じ。ダイナミックな音と映像が融合しスケールアップする」と、ご満悦。また、プロボクシング前WBC世界スーパーフライ級王者・徳山昌守が母校・東京朝鮮高級学校の番長役で銀幕デビューやアンソン役の井坂俊哉が試写会やイベントに参加する「アンソンが行く!1万人握手キャンペーン」、そして小説「パッチギ!
LOVE&PEACE」(角川学芸出版)、サブテキスト「愛、平和、パッチギ!」
(講談社)、フォトストーリー「パッチギ! LOVE&PEACE ANOTHER STORY」(バジリコ)、サウンド・トラック「パッチギ!
LOVE&PEACE」(コロムビアミュージックエンタテインメント)のリリースラッシュなど、とにかく話題が満載だ。
【CAST&STAFF】
出演/井坂俊哉・西島秀俊・中村ゆり・藤井隆ほか
監督・共同脚本/井筒和幸 脚本/羽原大介 音楽/
加藤和彦 エグゼクティブ・プロデューサー/李鳳宇
【INFO】
企画・制作・配給/シネカノン
公式HP
5月19日(土)からシネカノン有楽町、渋谷アミューズCQN、新宿バルト9、シネ・リーブル池袋ほか全国一斉ロードショー公開
(C)2007「パッチギ! LOVE&PEACE」パートナーズ
PROFILE
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井筒和幸(いづつ・かずゆき)
1952年12月13日生まれ 奈良県大和郡山市出身
県立奈良高校在校中から映画制作を開始。8ミリ映画「俺達に明日はない」、卒業後に16ミリ映画「戦争を知らんガキ」を制作。75年、高校時代の仲間と映画制作グループ・新映倶楽部を設立、150万円をかき集め35ミリのピンク映画「行く行くマイトガイ性春の悶々」で監督デビュー。
上京後、数多くの作品を制作する中、81年には「ガキ帝国」で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、「みゆき」(83年)、「晴れ、ときどき殺人」(84年)、「(金)(ビ)の金魂巻」(85年)、「二代目はクリスチャン」(85年)、「犬死にせしもの」(86年)、「宇宙の法則」(90年)、「風、スローダウン」(91年)、「突然炎のごとく」(94年)、ブルーリボン賞を受賞した「岸和田少年愚連隊
BOYS BE AMBITIOUS」(96年)、「さすらいのトラブルマスター」(06年)、「のど自慢」(98年)、「ビッグ・ショー!〜ハワイに唄えば」(99年)、「ゲロッパ!」(03年)など抒情性と痛快さを併せ持つエンタテインメント作品を作り続けている。
05年公開の「パッチギ!」は、2005年度のキネマ旬報ベスト・テンにおいて委員選出日本映画第1位を獲得。毎日映画コンクール日本映画大賞、ブルーリボン賞の作品賞などを受賞した。また、独自の批評精神と鋭い眼差しにより様々な分野での“ご意見番”としてテレビ、ラジオのコメンテーターやCM出演などでも活躍している。
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