仕事情報誌ドカント

寺島 進 寺島 進
北野武監督の映画に欠かせない存在となった役者、寺島進。最新の出演映画「GROW−愚郎−」では、今までの“いぶし銀の兄貴キャラ”に、新たな魅力を添えて登場。この作品に込められたメッセージや役者としてのポリシーなどを飾り気なく語ってくれた。さらには故・松田優作氏からの教えや北野武監督とのエピソードまで普段は見られない“素”の寺島進がここに!!

Interview/内埜さくら Photo/谷口達郎

---この映画で寺島さんは昔懐かしの学生服、長ランを着てますよね。昔、やんちゃだっただけあって、ずいぶんと似合っていたような…(笑)。
やんちゃっていう点では、俺を含む不良学生3人組を演じた全員に共通してるんですよね。だけど、40歳を過ぎて似合うっていうのも気持ち悪い話だし、うれしい年齢でもないんですよね、正直…(笑)。


---それは失礼しました(笑)。でも久々に学生服を着ると、気分が若返るのでは?
確かに。なぜか気分が思春期に戻っちゃうんですよね。いろんな思い出がフラッシュバックしましたよ。


---いろんな思い出というのは。
高校生の頃は、ちょっと遅刻しようものなら喫茶店でサボッてたな、とか。モーニングを食べてコーヒーを飲んで『授業は3時限目に行けばいいか』みたいな。あとは、地元界隈を学生服でフラついてたな〜とかね。


---ご自身の思い出と本作のキャラは似ていたわけですね。では、脚本を読んだ時点で完成イメージを膨らませやすかったのでは。
それが最初は膨らまなかったんですよ、全然! 榊監督と俺を含む不良3人組を演じた木下ほうかさん、菅田俊さん、それと主演の桐谷健太くんと綿密な打ち合わせを繰り返しましたね。ただでさえ足りない時間をやりくりして。その後は、監督と脚本家に頑張ってもらいましたよ。


---時間がないといえば、本作の撮影期間は8日間。ハードスケジュールだったようで…。
不良3人組の撮影時間は、実質2日半しかなかったんですよ。3人ありきだから、スケジュールが合わないと撮影できなかったんです。でも一生懸命やりましたよ。監督には迷惑をかけてしまったから、申し訳ないですけど。


---監督とは本作が初対面ですよね。どんな方なのでしょうか。
熱い雰囲気を持った人ですよ。撮影所での礼儀も正しいし、飲み会を開いても仕切りが上手い。『熱っぽいヤツだな〜』と。


---監督の作品を観たことは?
彼の撮った自主制作の短編映画を観たことがあります。メイキングと本編の両方。端から見て『ちゃんと監督やってるんだな』と感じていたので、興味はあったんですよね。それに、男として好きなタイプでもありました。




---不良3人組は、主人公の人生を変えるきっかけですよね。寺島さんご自身の人生を変えるきっかけはいつだったのでしょう。
きっかけというか転機は…毎日ですよ(笑)。大げさじゃなくて。外に出て、人と会ったり話をすれば、知らず知らずのうちに転機って迎えてるものなんじゃないですか? 他の人だって、気づかなくても1日の中で転機はあるはずなんです。


---でも、故・松田優作さんとの出会いには大きな影響を受けたのでは。初めて演技を褒めてくれた人だともお伺いしました。
褒めてくれた内容は、大したことじゃないんですけどね。当時はまだ、芝居のテンションを理解してなかったんです。“これ以上上げるとクサくなる。それ以下だと芝居が成立しない”っていう。一生懸命に演じてただけなんですけど『そのままでいった方がいい』と教えてくれた人なんですよ。あと、アドバイスというか現場は“神聖な場所”だと注意されたこともありましたね。


---今や日本を代表する監督となった、北野武氏とのエピソードも教えていただければ。
あの人に出会ってなければ、今の自分はなかったでしょうね。仕事がない時代にお声をかけていただいて、感謝してるんです。仕事に取り組む姿勢とか、習った部分も多いですし。育ての親といえるかもしれません。


---北野映画は自分の原点だともおっしゃっていましたもんね。
今まで出演した『ソナチネ』『HANA-BI』『BROTHER』…他の作品すべてが、出会いをもたらしてくれましたからね。俺のキャラを生かしてくれたのも監督なんですよ。大きく括ると、自分を引き上げてくれた人。一生頭が上がりません(笑)。




---現場入りする際、これだけは守るといった姿勢などはありますか?
現場でうろたえるのは駄目ですよね。だから、自分なりの段取りや仕込みはキチンとしてます。精神のコントロールは自分にしかできませんから。まずは、手間暇を惜しまないこと。これって、どの世界にいても当てはまると思うんです。あとは長い目で見ると、人がいないところで何をしてるかが勝負。仕事に生きざまが出るからこそ、プライベートな時間を大切にしないと。陰口を叩けば、そのうち本性が出てメッキが剥がれますから。学校の勉強より、社会勉強の方が大事なんですよ。そういった意味で、この映画も“人生の教科書”や“参考書”になってくれればいいと願ってます。


---20代で苦労なさった寺島さんならではの言葉。重みがあります。鬼怒川ウェスタン村でアルバイトをしていた時期もあるとか…。
役者で飯を食えるのは、ほんのひと握り。家賃が払えなくなると即、バイトに行ってましたね。役者の仕事は突然ポッと入るから、都合良く休ませてくれる仕事もなかったし、当時の経済状況は切実でしたよ。


---そんな苦しい生活の中、腐らずにいられた秘訣は?
腐るとかヘコむ以前に、いつもイライラしてましたよ(笑)。テレビの画面を見て『何でこいつが出てるんだよ! 俺だろ!!』と勝手に信じてましたからね。


---今は逆に、寺島さんがテレビの画面に映る立場ですが…。
今度は、振り落とされた人たちが俺を見るわけ。これは昔から言ってることですけど『何で寺島が出てるんだ』と思わせちゃいけないんです。『寺島だから仕方ない』って、叩きのめして捻じ伏せないと。俺の代わりは、いくらでもいますから。ホントに。


---寺島さんの代わりが、いくらでもいますか?
芸能界は、横着してたらすぐに足元をすくわれる世界ですよ。だからこそ“one and only”。俺の前にも後ろにも、誰もいないっていう仕事をし続けないと。最近、仕事しててもイライラしますよ。横着しそうになる自分を見つけると『ちゃんとやれよ、お前!』って。要は、自分との戦に勝たないと駄目なんです。こういう気持ちは、役者でも会社員でも持ってて損はないと思います…って、ちょっと偉そうだな、俺(笑)
INFORMATION
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GROW-愚郎-
GROW-愚郎-
映画「GROW-愚郎-」

家庭では酒乱の父の暴力に悩み、学校ではクラスメイトの滑川(三上真史)らの執拗ないじめから逃げ回る。そんな情けない日々を送る高校生の村上敦(桐谷健太)。もう生きてる意味がない! 悲惨な人生に終止符を打とうと決めた敦は、首を吊るつもりで薄暗い廃墟に忍び込む。ところが、天井から吊り下げた紐に手をかけたその時、誰もいないと思っていた屋内から、突如長ランを着こんだ奇妙な3人組が現れた。伝説の不良、泰三(寺島進)、鉄治(菅田俊)、淳一(木下ほうか)の3人はどう見ても高校生には見えず、むしろかなりヤバいおっさんばかり。だが口が悪く粗野ではあるものの、義理に厚く不思議と温かい彼らと恐る恐る接するうち、敦の心に何かが芽生え始める。<男になれ!>そんなシンプルなメッセージを徹底的に叩き込まれた敦は、はじめて居場所を見つけ、自分の力で一歩踏み出すことを決心する。そんな矢先、ひょんなことから3人の驚くべき秘密を知ってしまう…。破天荒な設定と次々登場する強烈なキャラに笑いながらも、中心に描かれるのはひとりの男の友情と成長物語。勇気を持ってスタートラインに立つ彼の姿は、観る者に大きな感動を与えるに違いない。

【CAST】
出演/桐谷健太・寺島進・菅田俊・木下ほうか・中村映里子・
三上真史・五十嵐康陽・中江翼・倉科カナ・田辺みさき・
遠藤憲一・深浦加奈子・板尾創路・渡辺裕之ほか

【STAFF】
製作総指揮・脚本/後藤克秀
監督/榊英雄
製作/アトゥー
製作協力/チェイスフィルム
配給/チェイスフィルムエンタテインメント

【INFO】
9月8日(土)から渋谷Q−AXシネマにてレイトショー公開!

「GROW-愚郎-」公式HP



PROFILE
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寺島 進(てらじま・すすむ)
1963年11月12日生まれ 東京都出身

東京・深川の畳職人の次男として生まれる。高校卒業後、俳優養成所である三船芸術学院を経て、三船プロに。師匠の運転手をしながら殺陣、スタントの稽古に明け暮れ、鬼怒川ウェスタン村のウェスタンショーにも出演を重ねる。86年、故・松田優作氏の初監督作品「ア・ホーマンス」で映画デビュー。89年に出演した北野武初監督作品「その男、凶暴につき」で注目され、その後も「あの夏、いちばん静かな海。」「ソナチネ」「みんな〜やってるか!」「キッズ・リターン」「HANA-BI」「BROTHER」「TAKESHIS'」「監督・ばんざい!」に出演、北野武作品の顔となる。95年には「おかえり」(篠崎誠監督)で初主演。他に「空の穴」「幸福の鐘」「血と骨」「フラガール」「アンフェア the movie」といった話題作に次々と出演し、日本映画に欠かすことのできない俳優に。06年には「交渉人 真下正義」で第29回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。コワモテもコミカルな役もこなし、不惑を迎えて人気急上昇。一見怖くても実は心優しい兄貴というキャラクターは、最近のはまり役でもある。映画出演は100本に及び、テレビドラマやCMでも活躍。公開待機作に08年公開予定の「ぐるりのこと。」(橋口亮輔監督)などがある。

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