
---人気ドラマ「おせん」「鹿男あをによし」「ロス:タイム:ライフ」などに出演し、精力的に俳優活動を続けていますが、“演じる”ことを職業にしようと思ったきっかけを、まずは教えて下さい。
実は僕、学生時代はバンドでプロになることを夢見ていたんです。演技で身を立てるなんて、考えてもいなかった。学生時代はバンドブームでしたから、中学生の頃にはギターを買って、大学では音楽サークルにも入ったりして。ところが、高校からバンドを組んでいた相棒が、大学を卒業したらバンドを辞めて就職すると言い出したんです。『オレには才能がないから』と言い残して。
---大事なパートナーを失ってしまったわけですね。
そうなんです。だから、『役者で有名になれば歌をリリースできるかも』という軽い考えで、養成所に応募したんです。雑誌の広告欄によく“君こそスターだ!”って書いてあるじゃないですか。あれを見て、即座に(笑)。
---ですが、役者で収入を得るのは長い道のりだったのでは。
正直言って、食えるようになったのはここ3〜4年です。役者と名乗る8〜9割が、役者という職業だけで生活できていないのが通説ですからね。僕が主宰する『東京セレソンデラックス』のメンバーの中にも、『ドカント』を読んでいるヤツがいるかもしれません(苦笑)。
---宅間さんの、貧窮エピソードがあれば教えて下さい。
97年に劇団を立ち上げた時から主宰と演出を兼ねていたので、バイトをする時間すら作れませんでした。1日1食、カップラーメンだけを食べる生活が、3年ぐらい続きました。電車賃すらなくて、終電を逃した時は、(山手線の)田町から新大久保まで歩いて帰ったこともありますよ。
---それでも、役者になる夢は諦めなかったんですよね。
23歳でこの世界に入った時に決めたんです。『10年頑張ってみて、役者としてやっていける糸口や可能性が感じられなかったら辞めよう』と。だから、10年間はとりあえず続けるつもりでした。33歳の時、ダメだと思っていたら、役者を諦めて他の仕事を探していたと思いますよ。それでまた、10年頑張っていたはずです。
---10年…遠い未来ですね。
若い頃って、焦りがあるから長いスパンで物事を見ることができませんよね。でも、それは仕方のないこと。結果が出せない自分にイライラすることはあるかも知れないけど、ダメだと判断する必要はないと思います。そう簡単に、世の中で身を立てることはできませんから。
---…というと?
今の時代、40歳で花開いていればOKなんじゃないでしょうか。20〜30代は、勉強に費やす期間ですよ。これ、役者の世界でも同じことがいえるんです。40歳で一番いい時期を過ごせたら、ずっと先がある。でも、若すぎる頃に花開いてしまうと、その先が大変だったりするパターンが多い。だから、20代そこそこでどうにかなろうというのが無理な話だと思います。
---男、40歳にして…ですか。人生って大変なんですね(笑)。
何か別にやりたいことがあるのに、生活のためにバイトをするのは辛いですよね。僕も同じ経験をしたから、分かります。だけど、身にならないことはひとつもないんですよ。ただ僕は、『オレが本気でやるところはココじゃない』と、バイトは手を抜いていましたけどね(笑)。

---苦労して役者として花開いた宅間さんの劇団では今度、6月18日から「夕」という公演が始まりますよね。口コミで人気が広まり、再演だとか。
お客様がお客様を呼んでくれる…本当にありがたいですよね。口コミで集客がグングン伸びた『夕』は、僕らの劇団にとってエポックメイキング的な作品なんです。『話には聞いたことがあるけど見たことがない。見たい』という方の声が高まって、再演が決定しましたから。僕たちね、舞台に立つたびにカーテンコールでお客様に、『口コミお願いします』と言い続けているんです。そうやってお願いすることは、別に恥ずかしいことじゃない。いい作品だと感じた人が、広げてくれるので。
---地道な活動が実を結び、集客アップに繋がったと。
僕らは、前衛とか革新とかいうものの、かけらも持たない集団なのですが(笑)、最近やっと、演劇誌にも取り上げてもらえるようになりました。舞台を観に来てくれたタレントさんが、ブログで書いてくれた効果も大きかったと思います。
---上演前から話題の舞台「夕」ですが、作品紹介をお願いします。
舞台設定は、長崎にある海の家兼民宿です。そこに住むヤンキー三兄弟、相川欣弥・元弥・雅弥のうち、僕が演じるのは次男坊の元弥。元弥と幼なじみの三上夕は、ずっと元弥に思いを寄せているんだけど、それに気づかない元弥は、夕の親友に片思いする…っていうラブストーリーです。1980年代中盤から、15年ぐらいを追いかけた展開になっています。
---今回出演する永井大さんは、舞台初出演ですよね。
初めてだから、不安があるみたいですね。ご飯を一緒に食べたりして、相談に乗っています。でも僕は、彼に『案ずるより産むが易し』と言っているんですよ。たかだか2時間の舞台に、1ヶ月近く稽古を重ねるんだからやってみれば大丈夫だってと。
---永井さんの役柄は?
僕が演じる元弥の親友、塩谷役です。塩谷もヤンキーなので、『本番ではリーゼントにして』、と指定しておきました(笑)。

---舞台の見どころは。
まずは、僕が高校生役を演じるところを想像して下さい。5年前の初演でも相当キツかったのに今回また演じるんですから、コントにしかなりませんよ、これは(笑)。あと、青春時代を回顧できる分かりやすいストーリーと、全編長崎弁という、独特の空気感を味わいに来てもらいたいですね。
---楽しそうな作品ですね。
僕らの作品は、『テレビとか映画っぽいね』とよく言われるほど観やすいですよ。だから“演劇アレルギー”の人にこそ、『夕』を観てほしい。演劇が嫌いな人と、演劇を初めて観た人に面白いと言われる作品作りを目指しているので、ぜひ劇場へ確かめに来て下さい。
---8月には宅間さんが監督・脚本・主演と3役を務める映画「同窓会」が公開されますね。
初恋を実らせて結婚した夫婦が、離婚したところから始まるストーリーなんです。離婚した直後に、妻が余命3ヶ月であることが発覚して、どうするかっていう。偶然にも『夕』と同じ、全編長崎弁なんですよ。
---そして、妻役には人気女優の永作博美さん。
一緒にいても、いい意味で気を遣わなくて済む女優さんなんですよね、永作さんは。自然体で、裏表がない。赤ちゃんみたいな顔をしているのに(笑)、性格が男っぽくてサバサバしているんです。
---ロケの思い出を教えて下さい。
永作さんを含め、役者同士の年齢が近かったので、話が合って楽しいロケでした。みんなで集まって、毎晩焼酎を飲んでいたのがいい思い出です。今回、初めて監督をさせていただいたのですが、勉強になったしもっとやりたいことも出てきたので、また監督をしてみたいですね。
---では最後に、ドカント読者へメッセージをお願いします。
自分に向いている仕事をして、プライドを押し殺すか。憧れている仕事に就いて、食べられなくても続けていくか。2つが合致すれば幸せですけど、はざまにいる人は葛藤に苦しみますよね。でも、その人に向いている天職は必ずあるし、『何が何でもこの世界で生きてやる』という意地も才能のうちだと僕は思います。自分で『これだ!』と思える仕事を見つけたら、それだけを本気で頑張って下さい。
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INFORMATION
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■東京セレソンデラックス 2008年公演「夕」
「夕(ゆう)」はドラマ化された「歌姫」に続く、東京セレソンデラックス不朽の名作シリーズ第2弾。「歌姫」と並び、再演の要望が最も多かったファン待望の作品で、西村清孝、永田恵悟、飯島ぼぼぼ、越村友一などおなじみの劇団員に加え、テレビや映画で活躍している永井大が舞台初出演することも話題になっている。TBS「花より男子2」の脚本を手掛け、昨年は劇団オリジナル脚本の「歌姫」がドラマ化され話題になった、サタケミキオこと宅間孝行が率いる演劇集団「東京セレソンデラックス」の公演は、観客が親しみやすいストーリーを展開しつつ、作品すべてに愛すべきキャラクターが登場することで、涙を拭きながら劇場を後にする人は多く、そのどこか懐かしく心温まるその世界に、口コミでの来場者が急増している。
作・演出/サタケミキオ
出演/宅間孝行・永井大・木下智恵・いとうあいこ・
浜丘麻矢・杉田吉平・篠原あさみ・武藤晃子・丸山麗・
川又麻衣子・森本信江・西村清孝・永田恵悟・飯島ぼぼぼ・越村友一
東京公演は6月18日から7月13日まで東京・シアターサンモール
大阪公演は7月19日から27日まで大阪・そごう劇場
主催/(東京)東京セレソンデラックス
(大阪)テレビ大阪
お問い合せ/(東京)キョードー東京 03-3498-9999
(大阪)テレビ大阪事務局 06-6947-1912
キョードーチケットセンター 06-7732-8888
PROFILE
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宅間孝行(たくま・たかゆき)
1970年7月17日生まれ 東京都出身
ドラマ「花より男子2」で脚本家として07年に俄然、注目を浴びたサタケミキオ。笑って泣けるウェルメイドプレイが持ち味の劇団「東京セレソンデラックス」主宰、そしてサタケ・ワールドを創造する俳優・宅間孝行と稀代の才人は3つの顔で知られる。
97年に俳優養成所の仲間と劇団「東京セレソン」を旗揚げ以降、主宰兼看板役者として全作品に主演。01年に「東京セレソンデラックス」と改名し、主宰、作家、演出、役者を担当。個性的な演技で観客を魅了し続け、その活躍は舞台に止まらず映画やドラマまで及ぶ。
サタケミキオ名義で脚本も手掛け、TBS「花より男子」(05)が大ヒット。続編の「花より男子2」(07)は前作を超える視聴率を得て、6月28日公開の映画「花より男子〜ファイナル〜」として映画にも進出。他にテレビ東京系「魁!セレソンDX」(06)、パルコプロデュース公演「Love30〜女と男と物語〜」(06)などがある。
俳優・宅間孝行としては主な出演作品に、NHK大河ドラマ「新選組!」(04)、TBS「タイガー&ドラゴン」「花より男子」(05)、フジテレビ「今週、妻が浮気します」(07)、「鹿男あをによし」「ロス:タイム:ライフ」(08)など。「魁!セレソンDX」では主演を務めた。
TBSラジオ「サタケミキオと宅間孝行」(日曜21時15分)でパーソナリティを、フジテレビ「映画の達人〜Filmania〜」(木曜深夜25時45分)でMCを務めている。
監督・脚本・主演の1人3役をこなした映画「同窓会」が8月16日公開。 永作博美とのダブル主演で、共演は鈴木砂羽、笑福亭鶴瓶、うつみ宮土理ら。さらに、映画「同窓会」の原作本「愛について考えてみないか」が講談社より7月17日発売。
公式HP
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