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男の"夜職"相談室
風俗店の男性スタッフは
未経験でも大丈夫?-関西編(1)-

男の“夜職=ナイトワーク”専門のQ&Aサイト。
ここは新宿歌舞伎町、繁華街の裏通りにある古いビル。
怪しげなスナックやマッサージ店が入り乱れるこのビルの一室に「男の夜職相談室」はある。

といっても、ドアに表札などは一切掲げられていない。
「男の夜職相談室」とは、運営しているホームページのタイトルで、ここはその事務所。

そのホームページには、様々な境遇の男性達から、
風俗やキャバクラ、ホスト業界といった「夜職=ナイトワーク」についての質問や相談が送られてくる。

それに答えるのは、この相談室の“オーナー”である。

そのオーナーとは、小柄でガングロ、首元には金のネックレスをジャラジャラと鳴らしている、極めて怪しい風体の爺さんなのである。
過去の経歴は一切不明。聞いたところで何も教えてはくれない。

このオーナー、そんな胡散臭さとは裏腹に、持ち込まれた質問や相談事には、時に優しく、時に厳しく、返答をする“だけ”。
相談料の類は一切取ることはない…。

サイトの運営費や事務所の家賃、唯一のスタッフである私のバイト代等、諸々の経費はそれなりの金額になるはずだが…。一体どうやって賄っているのであろう。

そんなオーナーの財力を考えると、ひょっとするとこの爺さん、ナイト業界では“伝説の男”とか“フィク
サー”とか呼ばれていたのかも知れない…。

まあ、しかし私としては、出社してホームページに送られてくる質問や相談事を整理するだけで、最低賃金の2倍近くの時給が貰えるのだから、この爺さんが何者だろうと全く関係はないのである。

夕方遅くになった頃、オーナーは事務所にやって来た。
「よー、今日は遅くなったのうー」
オーナーが出社する時間は決まっていない。
そもそも来ない日も多いのである。

「おはようございまーす」
私は何気ない顔で、じっくり眺めていたパソコンのアダルト動画をそっと閉じ、あらかじめプリントアウトしておいた相談内容をオーナーに手渡した。

ご質問・ご相談
【タイトル】
風俗店の男性店舗スタッフの仕事ってどないでしょう?
高収入が魅力なんですが、未経験でも働けますか?エリアは大阪です。
お名前:立山やすし様
年 齢:25歳
住 所:大阪府
【内容】
大阪からの相談なんですけど、よろしいでしょうか?
僕は和歌山の田舎の出身なんですが、都会に憧れて高校卒業後、大阪に出てきました。
それからずっと、居酒屋など飲食店の厨房で働いてきたのですが、仕事量の割に給料が安く、
また基本的には黙々と行う感じの仕事なので、しゃべり好きの僕には息が詰まることも多くて…、
なんか向いてないかな?と思い、転職を決意しました。

それで友達に相談したところ、
「そんな喋りたいんやったら営業の仕事でもやれや。お前、愛想もええから、きっと向いとるで」
と言われたんですが、今までずっと厨房で働いてきたんで、“スーツ着て外回り”とかピンと来なくて…。

これはどうしょうかな、と思いながらネットで求人情報を探していたら、男性向けの高収入求人サイトで、
風俗店の求人情報(男性スタッフの募集)を初めて見ました。

そこに載っている風俗店の給料は、これまで自分がやってきた居酒屋と比べてかなり高く、とても魅力的に感じました。
また、仕事内容に目を移すと、メイン業務の一つに「接客業務」というのもあって、自分に向いているような気がしました。
でも、僕はこれまで風俗店で遊んだことが一度もなく、風俗店の男性スタッフが具体的にどのような仕事をするのか、全くイメージが湧きません。
求人情報の多くに「未経験大歓迎」と書かれていますが、正直言って不安です。

こんな風俗業界「素人」の僕でも、風俗店で仕事を始める事は可能でしょうか?
また、一口に風俗店と言ってもいくつかの業種に分かれていることは、友達から聞いて分かっているつもりなのですが…、大阪ではどのような業種が多いのでしょうか?
またどのエリアに風俗店が多いのか?そういった業界事情も併せて簡単に教えて貰えると嬉しいです。

初歩的な相談ですみませんが、よろしくお願いします。

「という訳で、今回は関西からのご相談でっけど、答えられまっか?」
「・・・」
「どないでっしゃろ?」
「大阪からの相談事だからって、君がそんなエセ関西弁でしゃべる必要は全くないんじゃがのぅ」
「なんかそっちの方が感じが出るかなって思ったんですけど。で、関西からの相談には答えられるんですか?」

私が改めて尋ねると、オーナーは小柄な体を踏ん反り返らせて言った。
「当ったり前じゃ、ワシを誰だと思っとる。北海道から沖縄まで、風俗業界の事なら何でも答えられるわぃ」

ええっと、ワシが誰かは教えられてないですけど…。まあでも、それは心強い。
今度ホームページのトップ画面に「北海道から沖縄まで全国津々浦々のご相談を承ります」とキャッチコピーでも入れとくことにしよう。




大阪の風俗業界事情…エリア編
「では、まずは最近の大阪の風俗について教えてください」
「ウム、じゃあまずエリアからや。大阪いうたら、『キタ』と『ミナミ』という二大繁華街があんねんけど、それぐらいはアンタも知ってるか?」

「ええっと、関西弁じゃなくてもいいっすよ・・・」
「なんじゃ、せっかくさっきの流れに乗ってやろうと思ったのに…、ノリの悪い奴じゃなー」

「はいはい、それで? 『キタ』と『ミナミ』というのは聞いた事があるような気がしますけど…」
私が話の先を促すと、オーナーはこちらを睨みつけながら、大阪の風俗エリアについて説明を始めた。

「大阪の2大歓楽街、キタとは梅田周辺、ミナミ心斎橋・難波周辺を差すんじゃ。両エリアとも商業施設や飲食店が所狭しと立ち並んで大層賑わっておるからな。クラブやキャバクラも有名だが、風俗店も数多く営業しとる」
「まあ、人の集まるところは当然そうなりますね。で、その両エリア以外には?」

「大阪市内だけでも、ミナミに隣接する日本橋、そして谷九(谷町九丁目)、昔ながらの歓楽街の雰囲気が残る京橋、そして十三。それと新幹線の新大阪駅に程近い西中島。それに大阪市内ではなく兵庫県になるんじゃが、梅田から電車で10分程度で行ける尼崎。そんなエリアでも多くの風俗店が営業中じゃ。それぞれ複数路線からアクセスできるから、相談者に都合のいいエリアがきっとあるわぃ」
「へぇ~ そんなに多くのエリアに風俗店があるんですね。東京と同じ感じですか…、まあ大阪は日本で2番目に大きな街だから当然ですよね」

そう言って感心しているオレに、オーナーは話を続けた。
「実をいうと大阪には、今言ったエリア以外にも、飛田新地松島新地などといった、『新地』という名の付く独特の風俗街があるんじゃがな…。まあ、これは『裏』風俗になるんで、今回は省いておくか…」
「そ、そうっすね、めちゃくちゃ興味はありますけど、『裏』はちょっと止めときましょう」

現在は「壁に耳あり、障子に目あり」どころじゃすまないネット社会である。
下手なことを書いて「男の夜職相談室が裏風俗に仕事を斡旋」なんて話でも広まってしまったら、目も当てられない。(この相談室のQ&Aはホームページにも掲載される)
裏風俗事情には興味を注がれるが、それは別の機会にゆっくりとオーナーから聞くことにしよう。


【関連記事】大阪・ミナミのキャバクラボーイ体験談

大阪の風俗事情…業種編
「それでは、大阪風俗の『業種』について教えてください。大阪ならではの特徴とかあるんですか?」
「風俗業界の規模が大きいから、だいたいの業種は揃っとるよ。ヘルス、デリヘル、ホテルヘルス、ピンサロ、性感エステと…」

「アレ?なんか業種がひとつ抜けてません?えっと何だっけ…、そうだ、ソープランドは?」
私がそう言うと、オーナーはニヤリと笑った。
「だから、さっき『だいたいの』業種と言ったじゃろ。やっと君も業界のことが少しは分かってきたみたいじゃな。そう、大阪にはソープランドがないんじゃ!」

「えっ、なんで? オーナーが前に『ソープランドは風俗の王様』って言ってたじゃないっすか。そんな『王様』の業種がないなんて、大阪風俗ってヤバくないっすか?」
「正確に言うと、昔はあったんじゃ。しかし1990年に大阪で開催された『国際花と緑の博覧会』を契機とする浄化作戦で全店が閉店に追い込まれたんじゃ」

「ええっ!そんなことが…」
「それから大阪のソープ好きは滋賀県の雄琴か、兵庫県神戸市の福原に行くしかなくなったんじゃ。なんとも不憫な話じゃなー」

「へぇ~、地方ごとに色んな事情があるですね~。でもソープがないんじゃあ、大阪の風俗業界ってあんまり盛り上がらないですね?」
「いやいや、バイタリティ溢れる大阪人はそんなことではヘコたれんよ。ソープランドが潰され、店舗型ヘルスの規制も厳しくなったら、マンションの部屋を受付やプレイルームにしたマンションヘルス(マンヘル)が生まれるんじゃよ」

「マ、マンヘル?」
「そうじゃ、そしてマンヘルも摘発され始めると、今度はホテルヘルス(ホテヘル)が生まれたんじゃ。今や東京を始め各地方で広まっているホテルヘルスは大阪発祥なんじゃな。だから今でも大阪ではホテルヘルスの店が多いんじゃ」
「さっすが! 大阪の人は商魂たくましいなぁ~。しかしホテヘルが大阪生まれとは知らなかったです」



大阪発、ホテルヘルスの営業スタイルとは?
「ところで、君はホテヘルの営業形態については、もちろん把握しとるんじゃろう?」
「えっ、ホテヘルってのは、ホテルでサービスを受けるという…」

「それはデリヘルも一緒じゃろ、その2つの業種の違いはなんじゃ?」
「えっと…、デリヘルは家にも呼べるというかぁ…」
私は口籠りながら、それとなく手元のパソコンで検索をかける。
しかし、そんな動きはすっかりオーナーに見透かされていた。

「まったく、さっき褒めて損したわぃ。『夜職相談室』のスタッフのくせに、ホテヘルが何たるかも知らないとは何事じゃ!まったく嘆かわしいのう」

オーナーは失望を露わにしながらも、ホテルヘルスの説明をしてくれた。
「ホテヘルには、店の受付があるんじゃ。ただし、そこ(店)にはプレイルームがなくて、お客さんは受付を済ました後にホテルへ移動し、その部屋に女の子を派遣するというシステムじゃ。大阪の場合は、受付後にお客と女の子が一緒にホテルに移動することが多いな」

「ああ、そうだった! 受付があるんだった!」
「な~にが『そうだった』じゃ!まあ、そういうことでホテヘルも派遣型風俗なんじゃが、接客が電話での応対となるデリヘルと違って、ホテルヘルスの場合は受付でお客さんとの直接向き合う、対面接客があるワケじゃな」

「そうなりますね」
「で、アレじゃろ? 今回の相談者は話好きで愛想がいいんじゃろ?」

ああそうだった。私が頷くとオーナーは続けた。
「じゃあ、お客さんと直の接客があるホテヘルとかは向いとるんじゃないかのう。さっきも言ったように、大阪にはホテヘルが多いから、仕事を探す際の選択肢も多いしな…。そういう事も回答に書いておくんじゃぞ!」
「あ、はい」

「しかし、まったく手取り足取りじゃな…。このぐらいの事はワシが言わんでも、気付いて欲しいもんじゃ」
「すびばぜん…」
私は肩を落としながらメモを取った。




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