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「キャバクラ」と「セクキャバ」のボーイ、その仕事の違いは? 前編

「ライターはBARにいる」
ここは都心の繁華街。とある雑居ビルでひっそりと営業するBAR。
昔馴染みの仲間と久しぶりに会ってヤキトンをかじりながら焼酎を散々煽り、したたかに酔っ払った。
時間は午前2時。
いい加減家に帰れば良さそうなものだが、最後はやはりバーボンで閉めたい。
という訳で、またいつものBARに向かってしまう。

カウンターには数人の客。その中の見知った顔がこちらに向かって手を上げた。
「久しぶりっすね、ライターさん。調子はどうっすか?」
男はそう言いながら、隣の席を私に勧めた。
「いやあ、何とか生きてるよ」

この男の名はえっと…、確かセイヤ君だったか…。
年の頃は30歳ぐらい。この街にあるセクキャバ(セクシーキャバクラ)で働いていたはずだ。
しかし何だろう、前とは少し雰囲気が変わったような…。
スーツ姿なのは相変わらずであったが、今日は何というか、いつもより“パリッ”としている気がする。

「少し雰囲気が変わったね?」
私がセイヤ君に問いかけると、あらぬ方向から声が上がった。

「セイヤは“セクキャバ”から“高級キャバクラ”のボーイに鞍替えしたんだよ!」
振り向くとマスターが私たちの前に来ていて、いつものバーボンロックを私の前に置いた。

セイヤ君は、セクキャバからキャバクラのボーイになっていた。
「そのまま働いてりゃあ、若い女の子のオッパイが毎日拝めたのよぉ…」
マスターが心底もったいなさそうに言うと、セイヤ君は思わず苦笑いした。

「そう言えば、最近オッパイ見てねぇなぁ…」
遠い目をしてそうつぶやくセイヤ君に私は聞いてみた。

「何でキャバクラに転職したの?」
「それはですね、俺はこれからも“水商売”一本で生きていこうと思ってるんすよ。だから一度はキャバクラ、それも高級店で“接客”ってヤツを身に付けたいと思ったんすよ!」

「へぇ、なるほどね…」
とは言ったものの、彼が何を言っているのかイマイチ理解出来なかった。
“接客”なんてセクキャバにもあるだろうに…。キャバクラと大した差はないのでは?

「キャバクラとセクキャバのボーイって、そこまで違う仕事なの?」
するとセイヤ君は答えた。
「セクキャバもキャバクラの一種なんですけど…。ちょっと、いや、かなり違うかなぁ…」
へー、そうなんだ。ちょうどいい、今夜の酒のツマミはセイヤ君の話にしよう。

キャバクラとセクキャバのボーイ、仕事内容に違いはある?
セイヤ君は澄ました顔で言った。
「一番の違いは、オッパイが拝めるかどうかってことですよ(笑)」
「そりゃ分かってるよ!」

「でもそれ以外は、基本的には同じ仕事内容ですね」
「君、酔ってる?さっきは“かなり違う”なんて言ってたのに…」

するとセイヤ君は、ハイボールをグイっと飲んでから仕事内容について語った。
「まあまあ聞いて下さいよ。ボーイの仕事って、まずは“開店準備”に“女の子の出勤確認”。オープンした後は“お客さんの案内”に“ウエイター業務”。後は“女の子の管理やケア”、そんな感じですよね。
それでマネージャーとかになったら“付け回し”をしたり…。付け回しって分かりますよね?女の子をどこに席に付けるのか決める仕事っすね。この辺はキャバクラもセクキャバも同じなんですよ」


「だから仕事内容で“かなり違う”部分って何なの?」
するとセイヤ君は「ウ~ン」と唸ってから言った。

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キャバクラのボーイは“大人の社交場”の一員としての接客。
「キャバクラって、オープンな店内にソファーがズラーッと並んでいて、綺麗なドレスで着飾った女の子達がお客さんと席を共にする、“大人の社交場”って感じですよね。俺らボーイは、そんな店内をお客さんの案内やウエイター業務をしながら回るんですけど、その際の身のこなしや話し方、服装に至るまで、“大人の社交場”の一員として、ふさわしい振る舞いをしなきゃダメなんですよ。俺はそんな“接客”を身に付けたくて、今のお店に移ったんすよ!」

「なるほど、“大人の社交場”の一員か、格好いいね~」
そう言うと、セイヤ君はひとしきり照れ笑いを浮かべている。

「もちろんキャバクラの主役は女の子(キャバ嬢)ですけど、明るくオープンな場所で高級なお酒やフルーツを提供したりもするので、ボーイの身なりもキチンとしていないといけないですよね。高いお金を払って来店しているのに、ボーイが汚い格好していたら台無しっすからね」
「そりゃそうだ。気分が悪くなるかもね」

「高級な店になればなるほど、女の子を指名するお客さんも多いので、失礼がないように気を配らないといけないですしね。女の子から『○○さんのボトルを~』なんて言われる前にテーブルまで持って行く…みたいな」
「おー、そりゃ大変だわ」

「後は、キャバクラの方が、お客さんとの付き合いが多くなりますね。キャバクラは女の子との会話を楽しむお店だから、お客さんとのトークを盛り上げるためには、ボーイも協力したり、アフターとかに呼ばれたりもしますからね。やっぱ大切な常連さんだと断れないっすから」
「へー、そんなお付き合いもあるんだ…」

「でもセクキャバだと、そこまでの接客は求められないっすね…」

セイヤ君は言葉を切り、少し考えてから言った。
「キャバクラとセクキャバでは、お客さんの“目的”が違いますから…」




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キャバクラとセクキャバでは、来店する客の“目的”が違う。
「キャバクラに来るお客さんは“大人の社交場”で女の子とお酒とトークを楽しむ、って感じだけど、セクキャバに来るお客さんはモチロン、セクシーなサービスを求めて来店しますからね。セクキャバの別名は“おっぱいパブ”とか“お触りパブ”ですから…」

セイヤ君が“おっぱい”と言う度にマスターがピクピク反応しているのは無視しながら…。
「そういった客層の違いが、接客の違いにも現れると?」
「セクキャバでも、キャバクラのお客さんみたいにヘビーな指名客もいますけど、たいていのお客さんはライトなノリの人が多いですね。会社の仲間や友人と飲み会の後に来店する、みたいな感じで刹那的っすね」

「キープボトルを覚える必要もないと…」
「そうっすね。キャバクラのお客さんは周りを見る余裕があるから、俺らの姿も目に入ってるんですよ。だけどセクキャバのお客さんは、女の子の体やオッパイに目を奪われてるから、ボーイなんて“ノー眼中”なんですよ(笑)。俺らもお客さんの視界に入らないようにしますしね」

なるほど、と私は大きく頷く。
「でしょ?それにセクキャバは店の構造なんかも違いますからね」
「店の構造?」
私が首を傾げると、セイヤ君はこちらを覗き込むようにして言う。

「ライターさんって、セクキャバに行ったことありますよね?」
「うん、だいぶ前だけど…」
「その時のセクキャバの店内って、どんな感じでした?」
「ウーン…、確か暗かったような…、ユーロビートがうるさかったような…」

セイヤ君は続けた。
「キャバクラは、オープンで店内を見渡せるような造りが多いんですが、セクキャバは照明を暗くしたり、各席に敷居を立てて“ボックス状”にしてるお店が多いんですよ」

「あーそうだったかも…」
セイヤ君は笑いながら続ける。
「やっぱり女の子をアレやコレやと撫でたり触ったりするのを、ボーイや他のお客さんには見られたくないじゃないですか。そのための配慮ですよ」
なるほどー、と私はさっきよりも大きく頷く。

「実はボーイからは、しっかり見えてるんですけどね(笑)」



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