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(最終更新日1970年1月1日 )

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単発高額バイトの「交通量調査」とは


ここは都心の繁華街。とある雑居ビルでひっそりと営業するBAR
世間は俗にいう“お盆”期間中。
この時期は都心も観光客が来るような場所を除いて、人の数がぐっと減る。
それはこの歓楽街も例外ではない。
ニュースではお決まりのように新幹線や空港の帰省・旅行ラッシュが映し出されている。
まあ、あれだけの人間が東京を一気に離れるのだから、そうなるのも当然なのだろう。
しかし、私が行きつけとするBARは、そんなお盆期間中も店を開けている。
その理由をマスターは
「こんな時期も頑張って働いているこの街の労働者達に、癒しの場を提供したい」
と語っていたが、おそらく帰省や旅行の予定も何もないから店を開けて日銭を稼ごう、
というのが本音だろう。
かく言う私も何の予定があるわけでもなく、いつも通りにBARに向かう。

店の扉を開けると、やはりこの時期、まして時間が早いのもあって店内は閑散としていた。
二人組の客が居るだけで、カウンターの中で暇そうにしていたマスターは、
私の顔を見るなり相好を崩した。
それは私に対する親しみ、からではなく、
やっと客が一人増えた喜びから来ているように思われたが、まあそんな事はどちらでもいい。
愛嬌たっぷりのマスターの笑顔に迎えられて悪い気はしない。
生ビールをご馳走してカウンター越しに乾杯する。
そうしてしばらく雑談していると、やがて一人の客がやって来た。
細身で色白、こざっぱりした若い男性が・・・。
やってきたのは、このBARでは見かけたことのない若い男だった。
細身で色白、出で立ちはダンガリーのシャツにベージュのチノパンツ、
清潔感があって見た目は“草食系”男子とでも言うべき感じである。
あまりこの店で見るタイプではない。
マスターの方に目を移すと、彼も私と同じような感想を持っているらしく、
「?」な表情を浮かべながら、
「いらっしゃい、ええとお客さん、このお店にいらした事はありましたっけ?」
と尋ねた。
すると若い男は

「いいえ、初めてなんですけど、大丈夫ですか?」

と答えて立ち止まった。
「どうぞ、こちらのカウンター席へ。
ただこの店は、あまり一見のお客さんが来ないもので。
どのような経緯でいらしてくれたんですか?」
マスターがそう尋ねるのも尤もである。
このお店は決して一見お断りではないが、特に宣伝をするでもなし、
新規の客といえば常連が知り合いを連れてくるパターンがほとんどだからだ。
そんな店に、この若い男はどのようにして迷い込んできたのだろう? 
すると彼は意外な理由を口にした。
「SNSで検索してたら、このお店が見つかって。
『一人で気楽に飲めるBAR』みたいな書き込みがあったので」
なるほど・・・。
この店の客がSNSへアップした書き込みなりを見つけてやって来たって訳か。
こりゃあ時代も変わったものだ。
ちょうど隣に座った彼に興味をもって、私は話しかけてみた。
なんせヒマなのだ。

「今日はお盆休み中? それともまだ学生で夏休み中?」

「いえ、別にお盆だから休みというワケでも・・・、
今は定職についてないんで」


「えっ、そうなの?そんな風には見えないけど」
これは本心だった。
彼の真面目そうな雰囲気からは、定職につかずにブラブラしている感じは窺えなかったからだ。
すると彼は生ビールを飲みながら、現在の境遇について語ってくれた。
彼の職業は・・・「単発フリーター」
「大学に行って普通に就職活動して、
ちょっとは名の知れてる不動産販売の会社に入ったんですけど、
体育会系のノリで、ノルマは厳しいし休みもないしで・・・。
これじゃあ“自分らしさ”を見失っちゃいそうなんで・・・。
1年足らずで辞めちゃったんですよね。
まあ、ネット見てたら『大卒の新卒社員の1/3が3年以内に辞めている』なんて
記事が出てたんで、僕もいいかなぁなんて(笑)」


──“自分らしさ”って一体・・・。まあいいや。
しかしさすがはIT世代、仕事を辞める決断にもネットを参照するんだね。
じゃあ、今はまったく働いてないの?


「いえ、今は月に何度か気が向いた時に短期のバイトを単発で、
なるべく高額給料のバイトを探してやってます」
「自分が本当にやりたい事が見つかるまでは、
レギュラーの仕事には就きたくないんですよね」


──ああ、“自分が本当にやりたい事”ね・・・。
でも、気が向いた時に単発のアルバイトをしてるだけで生活は成り立つの?


「実家に住んでるので大丈夫ですね。
家賃もいらないし、家に居たら食事も作ってくれるし。
幸い両親ともに健在なんで、今のところはお世話になってます。」


──ああ、実家暮らしなんだ。それなら大丈夫だね。
でも君ぐらいの年代だと親元を離れて“一人暮らしをしたい”とか思わない?


「あまり思わないですね。実家が23区内というのもありますけど。
せっかく実家があるんだから、一緒に住んだ方が効率的じゃないですか。
家賃や光熱費なんかの諸経費を考えても。」


う~ん、さすがは生まれた時から不況の時代を生きてきた今の20代、
“ゆとり世代”などとバカにする向きもあるが、こういった所は実に現実的だ。
私が20代の頃といえは『実家に居たら彼女も連れ込めないじゃん』なんて
彼女も居ないくせに考えたりしながら、とにかく親元から離れて一人暮らしを始めたいと思っていたが・・・。
まあそれはいいとして、
今度はこの「単発フリーター」君が言う、単発の高額バイトなるものについて聞いてみよう。
高時給・高日給・・・高額バイトの求人を探すには?
──単発の高額バイトってどういう仕事をするの?
まさか、危険物を取り扱ったりとか、怪しい仕事とか?


「まさか、そんなブラックな仕事をするワケないじゃないですか。全然普通ですよ」

──じゃあどんな仕事なの? まず仕事をどうやって見つけるの?

「求人情報サイトですね。
そこには“勤務期間”とか“給与”“こだわり”とかの項目があるんで、
そこで“1日のみ”“時給1,000円以上”“日給1万円以上”“日払いOK”の
仕事を探すんですよ」


──なるほど、それで探せば単発で高額のバイトが該当するもんね。
で、その結果出てくるのは具体的にはどんな仕事なの?


「まあ、いろいろな仕事が出てきますけど・・・。
よくあるのは“スポーツイベントやコンサート会場の運営スタッフ”
“映画・ドラマのエキストラ”“交通量調査”“建築現場の軽作業”とかですね」


──へぇ~、結構いろいろあるんだね。
それを見てどの仕事をするか決めて、そこから実際に仕事するまでの手順は?


「手順なんて簡単なもんですよ。
求人情報サイトからWEB応募して、そのまま当日現地に行って仕事する場合もあるし。
仕事によっては、事前に登録説明会や面接があるんで、その場合は足を運んで・・・。
そのあと日時や場所から、やりたい仕事をメールで伝えて当日現地へ、という感じ」


──簡単なんだ。そりゃあ手順が煩わしければ単発バイトの意味がないもんね。
単発の高額バイトにも色々な仕事があるって聞いたけど、オススメの仕事とかある?


「う~ん、一番お気に入りなのは“交通量調査”かな。

──交通量調査?

「見たことないですか。駅前とか交差点の隅で椅子に座ってカチカチやってるやつ」

──ああ、見たことある!
「交通量調査」の仕事とは・・・。
このように、“交差点”“カチカチ”というワードで、
その仕事風景が思い浮かんだ「交通量調査」というアルバイト。
その仕事の詳細を聞きながら、
どうして単発フリーター君のオススメなのかを明らかにしていく。

──「交通量調査」の仕事ってどんな仕事?

「交差点や大きな商業施設の前とかで、通行する車や歩行者を数える仕事です。
僕はカウントするだけのバイトなんで詳しくはわからないですが、
僕らを監督する監視員が言うには、
その調査結果が、今後行われる道路工事や信号工事の参考になったり、
商業施設の場合は、訪れる客の数や年齢層なんかを把握するのに使われるみたいですね」


──なるほど、今後の工事やリニューアルなんかのためのリサーチなんだね。
ところであのカチカチする道具で、具体的にはどんな風にカウントするの?


「さっきから話に出てるカチカチする道具、
あれは“数取器(かずとりき)”と呼ばれていて、
5種類の数をカウントできるようになってます。
それで車だったら大型車、小型車、貨物、二輪車といった車種ごととか、
歩行者であれば性別、年齢別ごとの数をカウントするんですよ」


──へぇ~、5種類をカウント。でもそれって大変じゃない? 
未経験の人間がすぐに出来るものなの?


「正直、最初は大変です。でも30分ぐらいやってたら慣れてきますよ。
車種なんてどうやって判断するの?と思うかもしれないですけど、
ナンバープレートを見ればわかるようになってるんですよ。
歩行者の年齢別とかはあくまで見た目の判断なんで、
しばらくやったらスムーズにカウント出来るようになりますね」


──そうなんだ、じゃあ次に勤務時間や勤務体系について教えてくれる?

「勤務時間は朝7時~19時とか、12時間勤務が多いですね。
他には7時~翌7時の24時間勤務とかもあって、勤務時間はそれぞれですね。
仕事の現場は、1つの場所を2人1組ないし3人1組で受け持って、
うち1人が休憩を取るって感じですね。
2時間働いて1時間休憩っていうパターンが多いです。
だから12時間勤務だと実働は8時間になりますね」


──結構、休憩が多いんだね。正確にカウントをし続けるには集中力も必要だし、
それくらいの休憩時間は妥当だね。ちなみに休憩はどこで取るの?


「仕事場は路上で、もちろん休憩所なんてないから、
それぞれ自分で場所を見つけて休憩を取ります。
ただ僕の場合は基本的に23区内の仕事を選んでいるんで、
商業施設やコンビニ、ファーストフードの店もあるし、
食事やトイレ、一息ついたりする場所に困ることはまずありませんね。
ただ郊外での仕事や深夜の仕事だとちょっと困ることがあるかも。
そういう場合は、現場監督の監視員に予め聞いておいた方がいいですね」
高額バイト「交通量調査」の魅力は?
こうして「交通量調査」という仕事の基本的な仕事内容はわかったのだが、
高額バイトというからには給料はどれくらい貰えるのだろう。
フリーター君に聞いてみると、以下のような収入例を示してくれた。

【交通量調査の給料例】
7:00~19:00 
拘束時間12時間、うち休憩4時間(実働8時間)
日給10,000円 ※時給換算:1,250円
7:00~翌7:00 
拘束時間12時間、うち休憩8時間(実働16時間)
日給24,000円 ※時給換算:1,500円
※ともに即日日払い

──実働8時間で日給10,000円、時給換算で1,250円、
実働16時間で日給24,000円、時給換算で1,500円、
こりゃあ確かに高額バイトと言っていいね。


「休憩時間が長いので、拘束時間も長くなるのはツラいですけどね。
半日で1万円、丸1日で2万円以上稼げて、単発日払いってのはやっぱり魅力ですよ」


──そうだね、1~2万円をポンと日払いで貰えるのはデカいよね。
でも休憩が多いといっても実働8時間、ましてや16時間とか・・・。
じっと座って仕事するのって辛くない?


「え、そうですか? 僕からしたら肉体労働の方がずっと辛いですよ。
座って出来る仕事の方がずっと楽でいいじゃないですか。
座ったままで高収入みたいな(笑) 
これも交通量調査と言う仕事の魅力ですね」


──いや、俺は一カ所にじっとしてられない性分なんだよね。
体を動かしてる方がまだ時間が早く過ぎるような・・・。


「ああ、そういう性質の人には向かないかもですね(笑)
でも対象を次々と見ながら手を動かし続けてると、意外と時間を長く感じないですよ。
それにこの仕事って経験して慣れてくると、別の事を考えながらでも出来るんですよね。
だから、座ってのんびり物思いに耽りながら仕事が出来ると(笑)」


──そう言われると、なんだか優雅な仕事に思えるわ(笑) 
座ったまま出来て高収入かつ楽な仕事ってことか。
あと他に何か、君から見た“交通量調査”という仕事の良い部分ってある?


「この仕事って、2人1組で仕事してても、
それぞれ別の対象を追ってカウントしてることもあって、
互いに会話することはほとんどないんですよね。
休憩は一人で取るし、人間関係を考えなくていいのが好きですね」
「それと現場には監督する監視員がいるんですが、
彼らはいくつかの現場を巡回してるんで、常時監視されるというストレスがない、
というのも良いところかな。
あ、別に監視員がいなくても、ちゃんと仕事はしますよ(笑)」


──なるほど、スタッフ間の人間関係やストレスとは無縁の仕事、というワケか。
でも職場のコミュニケーションがないというのも何かつまらないような・・・。


「僕が不動産販売会社に就職してすぐ辞めたのって、
上司や同僚との人間関係に馴染めなかったのが原因なんですよね。
それがトラウマで、という程でもないですけど、
何か今のところは職場の人間関係みたいなものに腰が引けちゃって・・・。
それもあって今は単発バイトの仕事で繋いでるみたいな感じなんですよ」


──そうだったんだ。確かに一度っきりの単発バイトに
コミュニケーションなんて必要ないともいえるよね。
「交通量調査」アルバイトの辛いところは・・・。
これまでは「交通量調査」という仕事の良い面について聞いてきた。
しかし良いところばかりの仕事なんてこの世にあるワケがない。
逆に辛い面、厳しい面はないのだろうか?

──「交通量調査」の辛い面というか、マイナスポイントみたいなものはないの?

「この仕事の辛い面、というか辛くする要因は・・・ズバリ“天気”ですね」

──ああ、そうか。屋外、それも路上の仕事だもんね。

「そう、春とか秋の気持ちいい晴れの日なんかは、理想的なバイトなんですけどね。
夏の猛暑日、冬の酷寒日なんかはホントに相当厳しいですよ」


──そういう日は何か対策をしたりするの?

「もちろんです。なんせ路上で直射日光をガッツリ浴びるんで、
夏は帽子、タオルに着替え、熱中症対策の水分補給、塩分補給も欠かせません。
あと日焼け止めも必須ですね。
つい先日、仕事に行った時も猛暑日だったんですが、
一緒のチームになった学生さんが初心者であんまり用意をしてなくて、
すぐにフラフラになってましたよ」


──冬も辛そう・・・。

「ええ、個人的には冬の方が辛いですね。
どんだけ防寒具で全身を固めても、座ってると足元から凍えてきますからね。
もちろんカイロや温かいドリンクを用意して行くんですが、
それでもやっぱり厳しいですね」


──話を聞いてるだけで震えてくるよ。他に何か仕事をする上での必需品ってあるの?

「道路の傍でずっと排ガスを浴び続けるんで、マスクも必需品になりますね。」
それでも人気が高い「交通量調査」アルバイト。
──猛暑、酷寒、排ガス・・・。ってなんだか話を聞いてたら結構“キツイ”仕事じゃん。

「いやいや、それは日によって、という話で・・・。 
それでもやっぱり単発・高収入の仕事としては魅力的ですよ。
実際、人気バイトの一つですから」


──えっ、人気バイトなの?

「そうですよ。求人情報サイトに“交通量調査”の募集が出るじゃないですか。
でも応募が多くて人数の枠がもう埋まってる、みたいな時もありますから。
だから僕なんかは、マメに求人情報を見て“新着”求人がないかチェックしていますよ。
まあ、天候・気候を除けば、高収入の割に座って出来る楽な仕事ですからね」


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こうして今夜は、こざっぱりとした見た目の草食系「単発フリーター」君から、
思いもよらず「交通量調査」という仕事を知ることになった。
正直、話を聞くまでは何とも“地味”な仕事というイメージしか湧かなかったのだが、
単発・日払い・高収入・割と仕事がラク、と来れば人気が出るのも当然なのだろう。
学生時代にこの仕事の詳細を知っていたら、私もバイトしていたかもしれない。
1万、頑張れば2万円以上の日給を日払いでもらえる、というのは確かに魅力的だ。
しかしこの「単発フリーター」君。
せっかく新卒で採用された会社をすぐに辞めて、その後は親と実家暮らし。
手持ちの金がなくなれば単発の交通量調査員となり、
路傍で黙々(カチカチ)と働き、荒れるでもなくひっそりと生きる。

「おい若者よ、それでいいのか?」

・・・なんてBARで若者に説教を垂れる。
そんな無粋なマネはさすがの私もしない。
きっと世代が違えば思考や生き様も変わるのだろう。
酔っ払うこともなく行儀正しく帰っていくフリーター君の後ろ姿を見送りながら、
私はマスターにバーボンのお替りを頼んだ。
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