仕事情報誌ドカント

柄本明 柄本明
 初対面の印象は「初老」。しかし話をしていくうちに様々な面が見えてくる。お茶目な少年、凛とした青年、ドンと構えた熟年、そして劇団東京乾電池の看板役者。どれが本物か探ろうとしても笑ってかわされてしまう…が、これら全ての面が俳優・柄本明自身なのだろう。
ただ、一環して見えたのは「迷える一人の男」だということだけ。いや、それすら実体ではなかったのかも。

INTERVIEW /前田裕子 PHOTO/谷口達郎

---まずは子供の頃を聞かせてください。 5歳のときに父親の商売がうまくいかなくなったとか。
個人の印刷ブローカーみたいなことをしてました。生まれは銀座の木挽町っていう歌舞伎座の裏手で、あの辺りは商売屋なんです。

---事業に失敗してから生活に変化は。
あまり覚えてないんだよね。ただそれが自分の人間形成に影響してるってことはない。でも貧乏だってのは感じてたよ。まぁ、うちも含めあの頃の日本人はみんな貧乏だったから。

---小さい頃はどういう性格でしたか。
おとなしい、目立たない子でした。最近でも世話焼きの同級生がいて、クラス会をやってるんですけど、僕が芝居をやるときに情報を回してしてくれるんですよ。10人くらいで見に来くるから、ミニクラス会みたいになっちゃう。

---小学校の頃から変わったといわれますか。
そんなにに取りたててってわけじゃ…。まぁ、こんな職業だからね、目立ちますね。芯はそんなに変わりゃしないと思うけど。

---ご自身では幼少から変わってないと。
そりゃちょっとは変わるでしょ。色んな商売の中で生きてれば。社会にいれば我は変わるけど中身はね、自分の両親やそのずっと前の祖先から受け継いだものは変わらない気がするんですがね。スポーツ選手でも親も同じ職業だったりするでしょ。DNAレベルっていうのかな。

---ご両親が映画好きだったとのことですが、 遺伝子が伝わって俳優になったんでしょうか。
いやぁ、演じることと映画を見ることは別だから、関係ないと思うんだよね。でも映画は昔から大好きだし、見るなら映画館に行きたいね。

---映画も含めて映画館まで好きだと。
やっぱり映画は映画館で見るってことでしょうね。他人と一緒に暗闇の中にいるっていうのがおもしろい。そのときに前のスクリーンでいろんなことが行われるわけでしょ。覗きみたいなもんだよね。覗きのおもしろさ。犯罪者だよ。あとは、映画館に行こうとした瞬間から小さな旅が始まってるわけで、それも含めたすべて映画だって気がするんだよね。

---特別感があるというか。
そういうことですね。クラシックとかオペラをやる劇場でも一緒だと思うんだ。

---さらに現実から離れた感じがしますね。 ちなみに小さい頃に好きだった役者は?
中村錦之助ですね、僕らの世代は。

---どういうところが好きだったんでしょうか。
今の若い子たちがモーニング娘。に憧れるのと同じような感覚ですよ。ああいった職業に対する憧れってのは、どこかしらあるでしょう。

---青年時代にも映画好きは続いてたそうですが、 映画界に入ろうと決めたのはいつですか?
ないない、決心なんて一度もない。映画界に入ったとも思わないし。早稲田中学の裏にあった早稲田小劇場を見たっていうのが、芝居を始めるきっかけにはなったけれども。

---学生運動が盛んな頃に、 アングラ劇場と呼ばれてた場所ですよね。
あれはショックでした。とにかく面白くて。

---お腹をかかえて笑えるという?
一概にそうとはいえないけど…言葉では伝えられないですよ。感動するものを見たときはなかなかうまくいえないし、一言で全てを伝えられたらそれはすごい才能だよね。例えば早稲田の芝居だと、ウソつきの集まりだとも正直な人たちばかりだとも両方いえて、それが笑える。そういう言葉のレトリックってのもいろいろあって…。一言でいえないね。

---確かに言葉って難しいですね。面白かったという言語一つにしても、肯定的、善意的に取る人もいれば悪意的に取る人もいますし。
それがすべてでしょう。人間は善意だけで生きているわけじゃない。だから善意を前提として話されると困りますよ。悪意のある舞台や映画があるけど、それが普通なんだと思います。

---善意を前に押し出されると気持ち悪いですね。
インタビューでも悪意で話してるのにそれはいいですね〜それが柄本さんの演劇人生ですよね≠チていわれるとムカムカってくる(笑)。それは世の中がどこかで感動病にかかってるからなのかな。24時間垂れ流しの、テレビという媒体があるからかもしれない。そこでみんな教育されてるから怖いね。全員で同じになろうということが行われてる気がしますよ。

---同族感を持ちたいという風潮がありますね。
でもね、他人ってお互いに分からないんだから。思ってることを伝えようとする義務なんてないんだよ。雑誌を作るにしても、読者に読んでもらわなきゃいけないと言葉で必死に伝えようとする。職業ってのが人を狂わせるわけさ。

---読ませなきゃ、という使命感はありますね。
決まりって何もないわけじゃない。これを書いたから売れるっていうノウハウはどこかでできるかもしれないけど、何がいいのか悪いのかなんて分からないもん。

---今回のようなインタビューのページだと、 対象の言葉を素直に伝えなきゃって思います。
でも筆者の主観を通して伝わるから、素直にってありえないんだよ。だから書き手の主観で書けばいいのよ。他人のことなんか分からないし、だいたい人のことに興味ないもん(笑)。

---相手がいいたいことを全て伝えることなんてできないですよね。満点の記事なんてできませんが、 100点の演技をしたことはありますか?
そんなことを思えるヤツなんてただのバカですよ。自己満足することもあるんだろうけど、人間の欲望なんて数限りないんだからさ。

---今回うまくいったら、今度はもっとうまくやろうと思いますね。いつまでも頂点が見えないのが仕事だという気がします。
働けばお金が手に入るけれども、その欲望も限りがないよ。たくさんの金を手にいれたとしても、すぐに次の願望が襲ってくる。子供のときにお小遣いをもらって、次にまた同じ金額だと『えっ?』ってなったでしょ。欲望って世界を手にいれたとしても限りない。欲望をなくすことができればものすごくいいけれども。

---欲しいものが物なら楽ですよね。
金銭的な問題なら世界が簡単なはずだよね。お金持ちになりたいっていっても、本当はもっと上のものが欲しいわけでしょ。人間って本心を見抜くよね。へらへら笑ってたって『この人心から笑ってないな』ってわかっちゃう。



---まずは子供の頃を聞かせてください。 5歳のときに父親の商売がうまくいかなくなったとか。
個人の印刷ブローカーみたいなことをしてました。生まれは銀座の木挽町っていう歌舞伎座の裏手で、あの辺りは商売屋なんです。

---事業に失敗してから生活に変化は。
あまり覚えてないんだよね。ただそれが自分の人間形成に影響してるってことはない。でも貧乏だってのは感じてたよ。まぁ、うちも含めあの頃の日本人はみんな貧乏だったから。

---小さい頃はどういう性格でしたか。
おとなしい、目立たない子でした。最近でも世話焼きの同級生がいて、クラス会をやってるんですけど、僕が芝居をやるときに情報を回してしてくれるんですよ。10人くらいで見に来くるから、ミニクラス会みたいになっちゃう。

---小学校の頃から変わったといわれますか。
そんなにに取りたててってわけじゃ…。まぁ、こんな職業だからね、目立ちますね。芯はそんなに変わりゃしないと思うけど。

---ご自身では幼少から変わってないと。
そりゃちょっとは変わるでしょ。色んな商売の中で生きてれば。社会にいれば我は変わるけど中身はね、自分の両親やそのずっと前の祖先から受け継いだものは変わらない気がするんですがね。スポーツ選手でも親も同じ職業だったりするでしょ。DNAレベルっていうのかな。

---ご両親が映画好きだったとのことですが、 遺伝子が伝わって俳優になったんでしょうか。
いやぁ、演じることと映画を見ることは別だから、関係ないと思うんだよね。でも映画は昔から大好きだし、見るなら映画館に行きたいね。

---映画も含めて映画館まで好きだと。
やっぱり映画は映画館で見るってことでしょうね。他人と一緒に暗闇の中にいるっていうのがおもしろい。そのときに前のスクリーンでいろんなことが行われるわけでしょ。覗きみたいなもんだよね。覗きのおもしろさ。犯罪者だよ。あとは、映画館に行こうとした瞬間から小さな旅が始まってるわけで、それも含めたすべて映画だって気がするんだよね。

---特別感があるというか。
そういうことですね。クラシックとかオペラをやる劇場でも一緒だと思うんだ。

---さらに現実から離れた感じがしますね。 ちなみに小さい頃に好きだった役者は?
中村錦之助ですね、僕らの世代は。

---どういうところが好きだったんでしょうか。
今の若い子たちがモーニング娘。に憧れるのと同じような感覚ですよ。ああいった職業に対する憧れってのは、どこかしらあるでしょう。

---青年時代にも映画好きは続いてたそうですが、 映画界に入ろうと決めたのはいつですか?
ないない、決心なんて一度もない。映画界に入ったとも思わないし。早稲田中学の裏にあった早稲田小劇場を見たっていうのが、芝居を始めるきっかけにはなったけれども。

---学生運動が盛んな頃に、 アングラ劇場と呼ばれてた場所ですよね。
あれはショックでした。とにかく面白くて。

---例えば、柄本さん持つ劇団の東京乾電池でオーディションがありますよね。演技がうまいだけじゃ受からないと思うんですが、それも動物的な勘で相手を見抜くんでしょうか。
演技を見てないといったら語弊になるけど、礼儀を見てる気がするね。この人は人前に立ったときにちゃんと恥ずかしがってくれるのか、ずうずうしいかってのが基準。

---芝居を仕事にしたい人たちがオーディションを受けに来てると思いますが、俳優を職業に選ぶ人に何かアドバイスはありますか。
個人の問題だから、やりたければやればってことですよね(笑)。具体的な問題というと、食えるか食えないか。20歳くらいで芝居をやりたいとするじゃない。すぐに30、40歳だからね。 何かをやりたいってことは自分探しでしょ。常に自分探しから逃れられないわけじゃない。目指すものは幻想だから、その場に行ったらすぐ崩れるよ…でもね、他人にアドバイスを求めてくるヤツってダメなのよ。答えなんか見つけられないということに気づいてないんでしょ。

---でも誰かに答えてもらいたいんですよね。
役者になりたいんですけど、どうすればいいですかって聞いてくるヤツは頭悪いしさ、話す価値ないよね。ガッカリするよね。僕は役者になりたいっていう人って嫌いだよ。 オーディションに来るものそう。だって他人だからわからないし、巻き込まないでくれっていいたくなる。劇団でメンバーを募集してそんなこというのも矛盾した話だけど、『私を見てください!』ってやられるととても見たくなくなるよね。

---でも受かりたいからアピールをしてる。
前に出てくることをどういうふうに考えるかってことだよね。人がどこを見てるのかなんてわかんないよ。怖いよ、人間が人間を見るってことは。どんなことをいってたって、その裏を探すわけでしょ。。

---派手な行動の中に本性が現れたりもする。
このコは大胆にしてるけどなんか寂しい、明るくしてるけど本当は暗いんだとか。その暗ささを見たときにちょっといいんじゃないかって思ったり、色々ですけどね。試験くらいで人間なんてわからないもん。

---じゃあ、技術だけでは受からないと。
例えば演技が上手い子供を見ると気持ち悪いってない? そのときは演技を規定してるんでしょ。それが問題なわけだよね。 こういうことができるのが上手、できないのが下手だと規定してるだけで。そんなの何もありゃしないよ。浅野忠信っていう俳優がいるけど、彼を見たとき何だかわからないけどみんないいっていう。確かにとてつもなくいいんだよ。



---役者のいい、悪いってなんでしょうか。
だからわからないんだよ。ボーっと立っててセリフも『はい、そうです』っていっただけでもチャーミングに見えたりする。ピカソの絵もさ、上手いとか下手とかで規定できないものだよね。何に対して『いい』っていってるのかわからない。逆にこの絵が上手いって規定している『自分』を確かめてる気がするんだよね

---いい役者になるためのアドバイスなんてないと思いますが、 芝居を指導するときはどうするんでしょうか。
教えるって教えることができないって気づく相互関係だよね。以前、小学生に絶望について芝居をしてもらうという番組があったんだけど、そこで手を上げたほうが分かりやすいとか、ある種のテクニックはいってあげられるよ。 だけどそれは大したことじゃない。そんなことは使っても使わなくてもできるんだよね。そっちのほうが問題だな

---指導することなんてできないけれども、柄本さんと触れ合った小学生は演技の面白さに気づいたかもしれませんね。 では、最後に柄本さんの代表作の一つ、カンゾー先生の話を聞かせてください。キャスティングの段階では主役ではなかったと伺いましたが。
最初は他の役で話しが来てたんですが、主役の三國連太郎さんが病気になられて

---主役が回ってきたときの気持ちはいかがでしたか。
いろいろと悩んだんだけど、まぁ、やっぱりうれしかったかね。なんといっても大変なカリスマの今村(昌平)監督だから。最初に一緒に仕事をしたのが役所広司が主演の『うなぎ』であれは2本目なんです

---今村監督から影響されたことはありますか。
監督というのは真ん中にいるでしょ。『よーい、スタート』っていわれると非常に恐ろしいですよ。特に緊張させてくれる監督でしたね

---演技に入る前に緊張すると、堅くなってうまくいかなくなると思うんですが、そのようなことはありませんでしたか。
緊張っていうハードルが高ければ高いほど、昇ろうとする自分と出くわすでしょ。だから緊張が低いとそのハードルをひょいと越えてしまう。 それはつまらないじゃない。反対に緊張を高かめてくれた人に出会った喜びというのは、とても面白いよね

---越えるものが高いと苦しいと思いますが、それも面白いと…?
一概に苦しいというか、楽しいというかどっちかわからないけど。ハアハア息を切らせることだとしても、それも楽しいかもしれないじゃない。 どちらにしても緊張する自分がいるのは、新しい自分に出会えるってことでしょ。 この作品も違った自分が見つけられた作品でしたね。
INFORMATION
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○柄本明「絶望」の授業
−別冊 課外授業 ようこそ先輩−
NHK 「課外授業 ようこそ先輩」制作グループ+KTC中央出版[編]
発売中 ¥1,400(税抜)



○演劇「れもん」
【あらすじ】
「智恵子がグロキシニアの花を持って光太郎のアトリエを訪ねた日から二人の愛は始まった。」
出版以来今日まで、広く親しまれてきた高村光太郎の「智恵子抄」。 類いまれな夫婦の愛の軌跡は読む人の胸を打つ。しかし、理想的に見える愛の背景に、虚構や欺瞞が見え隠れしてはいないだろうか? 愛の美しさと残酷さとを浮き彫りにするこの現代につながる愛の物語を、小劇場の闇の中で堪能しよう!

【公演情報】
東京公演 ザ・スズナリ     2004.12.8(水)〜19(日)
京都公演 京都芸術センター  2004.12.21(火)〜23(木・祝)

【STAFF】
演出・美術:佐藤信 脚本:平田俊子 監督:森下紀彦 制作:佐藤智広 

【CAST】
光太郎・柄本明 智恵子・石田えり  
主催:(株)トライアングルCプロジェクト  共催:京都芸術センター

【チケット購入方法】
前売り発売中
チケット取扱 トライアングルCプロジェクト
03-5766-8300
(学生券はこちらのみ)

チケットぴあ
0570-02-9999
(東京公演Pコード354-871 京都公演Pコード 354-929)

演劇専用
0570-02-9988
(オペレータ対応)

インターネット購入 http://pia.jp/t/

イープラス http://eee.eplus.co.jp/
(web/携帯)

ローソンチケット 東京公演 予約受付電話番号:0570-06-3003(Lコード:34487)

京都公演
予約受付電話番号:0570-06-3005(Lコード:54155)0570-00-0403(オペレータ対応)
京都芸術センター 075-213-1000(京都公演(自由・学生)のみ販売)
お問合せ:トライアングルCプロジェクト 03-5766-8300(11:00〜18:00)




PROFILE

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柄本明(えもと・あきら)

1948年11月3日生まれ。東京都出身。
自由劇場を経て、1976年東京乾電池を結成。

1998年「カンゾー先生」にて第23回報知映画賞 最優秀主演男優賞

第11回日刊スポーツ映画大賞 主演男優賞

キネマ旬報1998年度ベスト・テン主演男優賞

日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞

2004年「花・ドッペルゲンガー、座頭市」ほかにて第58回毎日映画コンクール 男優助演賞を受賞。



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