仕事情報誌ドカント

 吉本総合芸能学院(NSC)卒業後、宮川大輔と「チュパチャップス」を組み、吉本印天然素材で人気を博すが、コンビは解散。都営地下鉄の工事現場のアルバイトなどを経て、05年第3回R−1ぐらんぷり優勝!!と、まるで映画のような栄枯盛衰を体験している、お笑いタレントほっしゃん。その粘り強さ、パワーの原動力とは…?

INTERVIEW /佐々木竜太 PHOTO/谷口達郎 STYLING/Shin
衣装協力/airwalk SMITH'S AMERICAN
問い合わせ先・美濃屋(株)058-279-2637

---舞台『新・夏の魔球』についてお伺いします。まずは簡単に内容の説明をお願いできますか。野球をモチーフにした芝居ですが、ほとんど野球のシーンはありませんよね。
甲子園球場のグランドキーパー、チーフであるフジムラエイジという男の人生ドラマですね、物語の主人公で。宮地真緒ちゃん演じるミノルが実娘で、スポーツ新聞のタイガース番記者なんです。あと、もう1人娘がいまして、山本早織ちゃん演じる次女のユタカ。娘が2人いる、この親子の情愛を描いた作品ですね。

---製作発表会見を終えられて、稽古はこれからですか?
そうですね。初日までみっちり、だいたい1ヶ月くらいの稽古になると思います。

---まだ稽古が始まってないということは、他の共演者の方とも、まだ顔合わせ状態という段階ですか…。
そうですね。記者発表して、台本を頂いたぐらいなんで、はい。

---その記者発表の時に顔合わせしただけということで、特に会話とかはされていませんか。
会話らしい会話はしてないんです。まだ顔合わせしてない方もいらっしゃるので、だから全員と顔を合わせたらこの人たちと作ってるんだぞ、というのが出てくると思います。

---ほっしゃんさんは、生粋の虎ファンだと聞きました。母校・上宮高校では元巨人の元木選手、横浜の種田選手と同級生だったと知りました。あの阪神ファンの熱狂的なパワーの原動力はなんだと考えますか?
何ですかね、阪神タイガースだからというのは、あまり感じないですけどね。阪神に限らず野球好きな人は、みんな野球好きだと思うし、そうなれば熱狂的ですよ。この芝居は、野球を基にしてという話なだけで、野球じゃないものに置き換えても全然ある世界やと思います。何にしても情熱が出ている、強いというのは大事ですよね。それがお笑いでも、ミュージシャンでも、サラリーマンでも、どんな仕事でも。

---物事に対する情熱、そして親子への愛情がテーマです。ご自身で、親子の愛情を感じる時というのは、どういったものでしょうか。
僕、子供いてないんで、親じゃなくて子供の気持ちしか分からないですけど、親というのは『今でもしんどかったら帰っておいで』という感じで、帰るところを置いといてくれるというか。いつでも受け入れてくれるのが愛情だと思いますけどね。どんなにボロボロになろうとも、子供がこんなお笑いの世界なんかやらせてくれたのも、愛情やと思いますけどね。

---お笑いの世界に入るのに、反対される場合もありますよね。割とスムーズに、芸能界という一般的には不安定とされる職種に入ることを認めてくれたんですか?
いや、それはスムーズではないですよ。親としては、子供が不安定な職に就くというのは、不安原因になると思うんで。人と違うことをする時には、そうやって親なりの反論があると思うんですけど。でも、やったからにはやっぱり、やっていいよって言ったからにはやめなさいって言わないのが愛情だと思います。

---では、もう、やると自分の子供が決めたからには、背中をちゃんとポンと押してくれる…。具体的なことではなくても心の上では…。
そうですね、押してくれて。まあ、それも、親の愛情ですので。

---ほっしゃん。さんのヒストリーをお聞きしたいのですが、芸人になろうと思ったきっかけを教えてください
あってないようなもんなんですけど(笑)。まぁ高校卒業して、やりたいなって思って、ホンマに。最初はサラリーマンやるよりも、みたいな気楽な感じですね。

---誰かに憧れてとか、そういったものは?
強烈な憧れとかはなかったですね。僕らの時代では、大阪だったので、ちょうどダウンタウンさんとかが出てきはった時で、少なからず影響は受けてると思いますけれど。

---世代的には、ひょうきん族からとんねるず、そしてダウンタウンとテレビ番組を見ていたと思うんですが、やっぱりダウンタウンさんが一番ですか。
お二人には悪いですけど、大阪では、とんねるずさんの人気って、そんなにではなかったんですね。だからひょうきん族からダウンタウンさんですね。

---そしてNSCに9期生で入られて、宮川大輔さんとチュパチャップスを組んで。コンビ解散後には大江戸線の工事で、アルバイト生活をされたいた時期もあるとか。当時の苦労話や気持ちの上ではどのように乗り越えたのですか?
確かにお金がなかったのは辛かったですけどね、好きなものは続けて当たり前なんで。必然的に食べられなくなったら、アルバイトするのは当たり前ですからね。今でも気持ちの中では全然ありますよ。食べられなくなったらバイトをするっていうのは。

---それでも同期の仲間とか、周りにはテレビにドンドン出ていく人がいたわけじゃないですか。焦りとかは。
いや、売れるスピードは人それぞれ違うんでね。そんな焦ってもしょうがないんで。僕はこの世界で、残る人間だと絶対に思っていたんで。根本的な自信があったから、もうそこは揺るぎないもので。売れるにしても今、生きている時には無理かもしれないけれど、僕は100年ぐらいかかる人間かもしれないわけだから。

---すごく大観的というか、広い見方ですね。
これが好きだから。何か楽しいことあったら、そっち行くんで。今でもそう。ある意味好きなことだから、お金がなくても、突き進んで行けるというか…。 もちろん、お金はあった方がいいと思うんですけれども…。

---それほど重要視しないというか。
いや、みんなお金が重要だから、そこでよう食えんようになって、食えんようだから夢諦めて…と思うんですけども。最低限あれば大丈夫ですかね。重要視しないけど、最低限なきゃ困るという。



---話は変わって、物事を成せる人間と成せない人間の違いはなんだと思いますか?
もう情熱やと思うんですけどね。みんなそんないうても、天才以外は、どんぐりの背比べですよ。どんな仕事でも。あとは情熱の差やと思うんですけどね、本気度の差っていうか。だから別にアルバイトして、途中でアルバイトの方が面白くなって、その夢は諦めるっていうのもアリですし、全然正解なことやと思うし。無理して辛いと思って続けることではないと思うんですね。

よう使い古されて、僕もあんまり好きな言葉ではないんですけれど、一回きりの人生なんで、そんなしんどい思いしてもしゃーないと思うんですわ。僕はそんなアルバイトしている時も、その辛くなかったんで。もちろん経済的には辛いですけど、近い将来を思えば全然そうじゃなかったんで。

先が見えてなくて、なんとなくダラダラと続けるんだったら、全然辞めて正解やと思います。 そしたらアルバイトで人より稼いだったらええんちゃうの? と。 だから成せる人間成されない人間っていうか、成されない人間って、いないと思うんです別に。

---根本的には、みんなが成せる要素を持っているけれども、そこで情熱があるかないかの差だと。
この世界辞めてった人間って山ほどいますが、それを挫折した、中座したみたいな感じにとると、成されない人間やってなってるけど、辞めて他の世界で生きてますからね。そいつらも、芸人にはなれなかったけれど、人生としては、結婚して子供作ったり、一つの家庭築いてるっていうのは、成し遂げた男やと思う。その面だけでいえば、僕は結婚もしてなければ、子供もいない。成し遂げてないっていうたら、なにも成し遂げてないですよ。普通の人生としては負けですね(笑)。

---でも、やりたいことを諦めたくはないんだけれども、人間って一瞬くじけそうになったりとか、モチベーションを落としてしまったりということがあると思うんですよ。信念をずっと持って続けられる方法ってありますか。
僕も普通の人間なんでくじけそうになったり、確固たる自信もそれは揺らぐ時もあるし、そやけど結局、自分から騙していかな仕方ないんで。そこでくじけそうなままで行くのか、こらえるのかの差やと思うんです。逆にその場所に留まる方法があったら僕も聞きたいぐらいで、それはもう自分自身やと思うんですね。

方法とか正解ってないと思う。本当にそのことが好きかどうかだけですよね。本当に好きやったら踏み止まる。くじけてしまう、ということは、あんまり好きじゃなかったんだって、そっちに思ったほうがいいと思うんです。他にもっと好きなことが世の中にあるっていうことを知って、逆に喜びに変えていったほうがいいと思うんですよ、僕は。


---それは発想の転換というか…。
僕なんかもこのお笑いの世界が好きで、くじけそうになったけど、結局くじけなかったっていうのは、ほんまに好きだったんだって思うから。他に見つけられる楽しみはもうないんですよね。この芸能界の中で例えばお芝居とか、お笑いドラマっていう…ココでしか見つけることができない。思うんですけど、逆にくじけてしまう人は、本当にいろんなことを体験すればいいと思いますね。いつかは絶対見つかるわけですし。

---仮にそこで折れてしまうようなことがあった としても、それはもうポジティブに考えると。
折れてしまったっていうても、電車で例えればポイントが変わっただけで、ずっと先には動いてるわけですから。一見、止まった感じしますけど絶対動いてるんで。目の前に壁が立ち塞がっていたら、ぶつかって砕け散るよりも、僕は避けて通ったほうがいいと思うんですよね。トンネル掘ってもいいし、高架作るんでもいいし。だけど自分はずっと動かすと。壁にブチ当たって砕けてしまったら、それが止まってしまう。全然マイナスなことじゃないと思うんです。

---でも最後に今、仕事を探していたり、これから頑張ろうとしている読者にメッセージを頂きたいのですが。
そうですね。だから、自分が辛くなるまで、頑張らないほうがいいですね。

---辛くなるまで頑張らない? 限界まで出し切れるように頑張れとか言いません?
限界まで頑張ったら余力がないですからね。限界まで頑張った人間、僕は見たことないんで。言ってるだけで、自分のしんどいと思う、ちょっと手前までが限界だと思うんで。限界まで頑張れっていうのは、自分が辛いとこまでいくという感じだと思うんですけど一般的には、そこまでやったら僕もよう生きる自信ないんで。限界までやると持たないと思うんですよ。

---確かに仕事でも頑張り過ぎて、ガクンとうつになったりする方いらっしゃいますからね。
人間って普通に頑張るようにできてるんですよ。頑張らんと生きていけない世の中なんで。みんな、もう、すでに十分…。みんな頑張ったところで一緒なんで、一番頑張った人が出るじゃなしに、やっぱりその、難しんですけどね。

---基本的にはその方向転換をする気持ちや、自分の意識の持ちようという…。
気合いっていうか、情熱っていうか。僕は根性論は嫌いなんですよ。頑張ってくださいなんていう言葉が一番嫌いでね。ないみたいやんけみたいな感じになる。みんなやっぱりそうやって、アルバイトしてる人も、なんの仕事している人も、この地球の上で頑張っているんで、逆に無理する=頑張るじゃないので、言葉を取り違えんと、無理はしないでということですね。
INFORMATION
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舞台「新・夏の魔球」

出演/ほっしゃん。・宮地真緒・山本早織・白川裕二郎・積圭祐・納見佳容・迫田孝也・和風シャーク・東出典子・斉藤ゆき・コバヤシ・迫英雄・腹筋善之介ほか 作・演出/大塚雅史
日程/9月28日〜10月1日
会場/全労災ホール スペースゼロ(JR新宿駅南口徒歩5分)
頑固で自分勝手で一本気で、でも純粋で照れ屋でストレートな男が主人公。そんな彼が甲子園球場を舞台に大暴れする。しかし、野球シーンはほとんどなし、そこで繰り広げられるのは、裏方たちの熱きドラマ。生涯一職人のタイガース狂をほっしゃん。が演じ、古き良き親子の情愛を描き出す。甲子園球場を、グラウンドの土を、そして野球を、阪神タイガースをこよなく愛する男、グランドキーパー・フジムラエイジ。彼の秘めた夢が、娘の手によって明らかにされていく…。父の秘密、真実とは!?

問い合わせ/「新・夏の魔球」事務局
03-3373- 7622
(全日10:00〜19:00)
http://newnatsunomakyu.com


PROFILE

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ほっしゃん。
1971年8月6日生まれ。35歳。大阪府阪南市出身。

元チュパチャップス。大阪NSC第9期生。「吉本印天然素材」などで人気を博すも、99年にコンビ解散。仕事が3年間で僅か4日という、“長い冬”も経験した苦労人でもある。

「R-1ぐらんぷり2005」では友近やヒロシといった強敵を抑え優勝、「日本一のピン芸人」の称号を見事に勝ち取った。体を張ることを厭わない芸風、自作自演のイベントを数多くこなしており、ストーリー性を大事にするコントには定評がある。

ほっしゃん。とオリエンタルラジオがナビゲーターを務める吉本芸人オールキャストの生配信番組「ヨシモト∞(無限大)」は、ヨシモト∞ホールより365日毎日!! 新感覚ライブが楽しめる。

また3人は映画関連4団体が行う「映画館に行こう!」キャンペーンの映画大使にも就任。



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