阿曽山大噴火「裁判傍聴はメインカルチャー」“裁判ウォッチャー”芸人が語る魅力とは…

 霞が関の東京地裁に通うため、定期券を買うようになって14年。お笑い芸人でありながら、月曜から金曜まで、毎日のように裁判所に通う〝裁判ウォッチャー〞としておなじみの阿曽山大噴火さん。裁判傍聴には「実際に見に来ないと分からないことが沢山ある」と話す一方、実は「裁判関連の仕事は飽き飽きしている」という衝撃の言葉も! その裏には、裁判傍聴を仕事にする人間ならではの〝プロ根性〞も感じられた。

面白いから毎日通っているんじゃない面白い裁判がないから毎日来てるんです

裁判傍聴は「サブカル」ではなくメインカルチャーだと思う

──平日は毎日、裁判傍聴をしているんですよね。今週は、何を傍聴されましたか。
「罪名でいうと窃盗、暴行、未成年者誘拐、迷惑防止条例などですね」

──軽めの犯罪を選んでいるんですか。
「こだわりはないですが、どこかで話したり、書いたりする前提で選んではいます。殺人などをメインに傍聴している人はほかにいますし、俺にはその手の仕事は回ってこないんですよ」

──では最近、印象に残ったのは?
「浅野忠信のお父さんの2回目の公判ですね。3月の公判はニュースになったんですが、2回目は全然で。傍聴人も親族以外は3人だけでした」

──昨年、覚醒剤使用容疑で捕まり、今年また逮捕されたんですよね。
「昨年の逮捕後は、通院を続けられるように家族総出で手助けして、浅野さんも毎週電話をしてたのに、再犯したんです。3月の公判では、50歳で大麻、59歳で覚せい剤の前科があることも明かされて。このデビューの遅さは超レアなんです。しかも2回目の公判では前科7犯だったことも分かりました」

──増えていますね(笑)。
「あと2回目の公判では、反省の証として医者の上申書や反省文のほか、写経を100枚ほど提出したんですよ」

──それは心がきれいになった証拠、ですか?
「心が落ち着いてないと写経はできないので、覚醒剤を使うやましい心はない、ということみたいです。『今後どう生活しますか?』と弁護人に聞かれたときも、『暇な時間があると危険だから、棚を買ってペンキで塗り替えます』とか、話が唐突なんですよ(笑)。でも覚醒剤をやった人の裁判では、話がつながらないことが多くて。単純に『薬って怖いな』と思いますよね」

──この公判のように、ニュースでは報じられない事件の詳細を知れるのは、裁判傍聴の一つの面白さでしょうね。
「ニュースになった裁判のその後は、起訴か不起訴かも報じられないことが多くて。そこに面白さはありますね」

──傍聴はいつごろ始めたんですか?
「最初の傍聴が99年ですね。東京地裁に通うために通勤定期を買ったのが04年です」

──最初は、事務所代表の大川総裁に、オウム裁判の傍聴券を取るために並ばされたのがきっかけなんですよね。
「オウムの裁判は、起訴件数も多くて内容もよく分かりませんでしたが、午後に見てみた裁判が面白かったんですよ。そういった裁判の話を、お笑いライブの時などにしたらウケがよくて。それも通い始めたきっかけですね」

──阿曽山さんはラジオの裁判レポートがおなじみですが、『荒川強啓 デイ・キャッチ!』では、調査員として当日のニュースを話すコーナーも担当していますよね。裁判の仕事とは違う楽しさはありますか?
「裁判関連の仕事は飽き飽きなので、違うことをするのは楽しいですよ」

──え、もう飽きてるんですか?
「14年も続けてるんですから、それは飽きますよ(笑)。そんなに記事になる裁判もないし、そもそも通いたくもないんですよ。記者やディレクターの人と一緒に裁判を見ても、みんな面白くない裁判ばかりでガッカリしていますから。俺も面白いから毎日来ているんじゃなくて、なかなか面白い裁判がないから毎日来ているんです」

──ハズレばかりだと。
「見ればわかりますが、追起訴で5分で終るものも沢山ありますし、逆に内容が重すぎてメディアで話せないものもある。B級ニュース的に報じられた変な事件でも、事件が変だからといって裁判が面白いとは限らない」

──それで飽き飽きなんですね(笑)。ドカントは求人誌なので、阿曽山さんのように天職を見つけるにはどうすべきか、と聞きたかったんですが……。
「ええっ !?それは俺が聞きたいですよ(笑)。何の資格も職歴もなしに、この歳になっちゃいましたからね」

──でも、ほかの人がしないことを続けることで、裁判傍聴は仕事として価値があるものになったのではないでしょうか。
「でも需要がないのは身をもって分かっていますから。裁判の話なんてみんな普段はしないんですよ。裁判傍聴の連載も『サブカルですよね』みたいに言われますからね。でも俺は、裁判はメインカルチャーだと思っているんですよ。三権分立の一つなんですから!」(2018.11.16)


INFORMATION

■『お笑い裁判の歩き方2018』
12月30日(日) 下北沢 ザ・スズナリ
前売・当日/3000円
お問い合わせ:大川興業 03-3457-7625


PROFILE
阿曽山大噴火(あそざんだいふんか)
1974年、山形県生まれ。お笑い芸人として活躍する一方、月曜日から金曜日の9時〜17時で、裁判所に定期券で通う裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして各種メディアに出演中で、ラジオではTBS『荒川強啓 デイ・キャッチ!』(火曜、金曜)、CBC『北野誠のズバリ』(木曜)に出演中。ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。
公式Twitter
取材・文/古澤誠一郎 撮影/熊代紀章