湯島ちょこ ペンキ絵師デビューも果たしたマルチな才能を発揮する唯一無二の〝銭湯アイドル〟

マルチな才能を発揮する唯一無二の“銭湯アイドル”

ひと昔まえなら、街の至るところで見かけた「○○湯」と書かれたコンクリの煙突。そんな昭和情緒が色濃く漂う〝銭湯カルチャー〞にガッツリ魅せられてしまった女性がいる。〝銭湯アイドル〞湯島ちょこ。漫画家にしてイラストレーターでもある彼女が語る銭湯だからこその魅力とは!?460円の一律価格で気軽に楽しめる、癒やしのエンタメの極意を聞いた!!

雰囲気や、常連さんの気質 日常のあるのままを感じてほしい
銭湯コミュニティに絶望から救われた…

──湯島さんが銭湯にハマった、そもそものきっかけというのは?
「総武線の窓からなんとなく外を眺めてたら、たまたま銭湯の煙突が見えたんです。で、降りたことのなかった駅で途中下車して、フラッとお風呂に入りに行ったら、これがめちゃめちゃ癒やされて。実はちょうどその頃、人間関係とかに疲れちゃって、いっそ死んじゃったほうがいいんじゃないか、ぐらいに思いつめてて。最近めっちゃ多いし、ウチも死のっかな、みたいな気分で電車に乗ってたんですね」

──まさかの死に場所探し!!
「そうなんですよ。めっちゃ重いんで全然おもしろくないんですよ(笑)。でも、そのとき行った銭湯で全然知らないおばあちゃんが話しかけてきてくれて、完全に初対面な私に向かって、戦争当時の話だとか、亡くなった旦那さんの話だとかをしてくれて。『いつのまにか旦那の歳も超えちゃったわよ』とかってケラケラ笑いながら話してるその姿を見てたら、生きるのつらいとか言ってても、自分なんかまだまだだなぁ。こうやってみんなとお風呂入るのいいなぁ、って思えたんです」

──お湯がネガティブな感情を流して、生きる希望を与えてくれたと。それまではどんなお仕事を?
「いまでも本業はマンガ家なので、その頃も広告系のマンガのお仕事を受けたり、アシスタントをやったり。仕事では発注されたオーダー通りに、趣味で描きたいものは同人誌にって感じでやってましたね。まぁ、いまにして思えば、ずっとフリーでやってたから、人と接触する回数も多くって。それで失敗する回数も多かったんじゃないかなと。もともと、うまく適合できるタイプじゃなかったのに(苦笑)」

──銭湯的な活動としては、現状どんなことをされてるんでしょう?
「銭湯ライブみたいなイベントを自分で企画してやったりすることもありますけど、ライフワーク的な感じで定期的にやっているのは、毎週土日の〝オフろう会〞。一日に3軒、みんなで銭湯をハシゴして、そのあと飲み会をするっていうオフ会です。一応、参加費はもらってますけど、私のなかでは文字通りの〝オフ〞になれる日(笑)。平日はイラストや原稿の仕事に追われてたりもするから、新しい出会いがあって、そこで銭湯を好きになってくれる人も増えてっていうこの会は、すごく大事にしたい場所なんです」

──湯島さん流の〝楽しみ方の作法〞なんかもあるんですか?
「『有吉ジャポン』の取材が入ったときは、やむを得ず貸切にしたりもしましたけど、基本的には、私がそれで癒やされたように、その銭湯の雰囲気や、通ってくる常連さんの気質、日常のありのままを感じてほしい。そこで自然発生的に生まれるコミュニケーションが銭湯のいちばんの醍醐味だと思いますしね。ちなみに、〝オフろう会〞も1回あたりの人数は5人とか。それ以上多くなっちゃうとロビーがガチャガチャしちゃうし、新しいファンが増えても常連さんがそっぽを向いちゃったら元も子もないですからね」

──最近では、『アメトーーク』などでも〝銭湯大好き芸人〞がピックアップされたり、注目度も上昇中です。
「ガチ勢的には、『それは銭湯好きじゃなくサウナじゃん』って思っちゃう部分もあったりするんですけどね。温泉やサウナのあるなしじゃなく、あくまでも銭湯っていう場所そのものが好き。『サウナがないと物足りない』っていうのは、ちょっと宗派が違うかなって。まぁ、『どうでもいいじゃん』とよく言われますけど(笑)」

──なんとなくは分かります(笑)。湯上がりにフルーツ牛乳飲むのと同じくらい、コミュニケートが重要と。
「もちろん温泉もサウナも好きだし、いいんですけど、みんなで入って楽しいっていう効能があれば、泉質とかはなくてもいい。それが私の考える〝銭湯好き〞の定義です。岩盤浴とかサウナって、究極は自己快楽を求めに行くものだったりしますしね」

──今後はどういった方向性で?
「本業であるマンガ家のほうに戻りたい気持ちも常々もってはいるんですけど、銭湯好きの分母を増やすための活動はもちろんこれからも続けます。注目度がわりと高い都内はともかく、地方とかには存続が難しい銭湯も多いんで、そういう場所がなくならないよう自分にできる方法でメディア展開をしていけたらなと思ってます」(2018.10.16)


 
▶東京・葛飾区の末広湯で公開ライブペイントとして行われた銭湯壁画デビューの様子
 
PROFILE
湯島ちょこ(ゆしま・ちょこ)
本業は漫画家、イラストレーター。銭湯アイドル、銭湯復興プロデューサー、温泉ソムリエといった、お湯にまつわる多彩な肩書きをもつ。ペンキ絵の制作や暖簾・グッズのデザイン。楽曲『GO! SENTO』のリリース。集英社のマンガサイト『ジャンプルーキー!』での銭湯マンガ『非定型コヘレンツ』の連載など活動は多岐に渡る。銭湯ペンキ絵師としての活動もスタート。大阪・湯処あべの橋や名古屋・へいでん温泉、足立区・湯処じんのびなどで銭湯富士のない銭湯にペンキ絵を浴室に提供するなどの活動も行っている。
公式Twitter
取材・文/鈴木長月