夜の世界に飛び込んだ異色の〝二刀流〟ラッパー TAKU-G(WHISKY BOYz) 

昨今声高に叫ばれる〝働き方改革〟を 別の形で体現してきた〝二足のわらじ〟のラッパーがいる。インディーズシーンで地道な音楽活動を続けるWHISKY BOYzのTAKU-G。無軌道だった若き日々の紆余曲折を経て、東京・高円寺のキャバクラ「SHINY」で初めて地に足をつけた男の〝夢追う黒服〟としての生きざまを紹介したい。

自分の気が済むまで音楽は続けたい。接客の楽しさも分かってきたんでね

目指すは『武道館』バズったらいいけど貫き通す我が道──

──勤務先での肩書きは「主任」。キャバクラ店における主任さんとは、具体的にどんなお仕事なんでしょう。
「俺の下は全員アルバイトなんで、ざっくり言うと、バイトリーダーみたいな感じですかね(笑)女の子をどのお客さんにつけるかを決める〝付け回し〟なんかもしますけど、やっていることは誰もがイメージする〝黒服〟の仕事と同じ。音楽活動をしている以外は、夕方店に来て、始発で帰る毎日です」

──それまでも仕事は主に夜?
「いや、こう見えて夜働くのは初めてなんです。最初に入った六本木の系列店も含めれば、かれこれ2年ぐらいにはなりますけど、最初のうちは体内時計も狂いまくり。身体に謎のじん麻疹が出たり、慣れるまでは大変でしたね。でも、若い頃からわりと無軌道な生活をしてきたんで、『仕事に目的がある』ってことの尊さみたいなものも感じてて(笑)お客さんを喜ばせるためにはどうすればいいか、って部分では日々頭も使うので充実はしてますね。会社は自分のやってる活動に対してもすごく理解がありますし」

──その〝本業〟であるラップとの出会いは、いつ頃どんなきっかけで?
「中学ぐらいのときにちょうど、エミネム主演の『8 Mile』って映画が流行ってカッケーってなって(笑)で、高校中退して、定時制にも入ったけど、それも辞めちゃって。とくにやりたい仕事もないままフラフラしてるときに、ラップやってた先輩に誘われてクラブに行ったら、その先輩がそこでめっちゃ輝いてて。そこからですね。自分でもやってみたい、ってなったのは」

──そこに至るまでの経緯は、いかにもヒップホップっぽくていいですね(笑)現在のユニットもその当時から?
「結成は2010年なんで、ハタチぐらいのときですかね。当時ツルんでた仲間のひとりが、CDに直で録音できる機材を持ってて、遊び感覚で『ユニット作ろうぜ』となったのが最初。その頃はMC4人にDJ、カメラマンの7人組で、埼玉の川越を拠点に活動してたんですけど、その後、大学生だったメンバーが卒業や就職で抜けたりして、いまは相方との2MCでやってます」

──作品づくりは、ふだんどうやって? 仕事上の出来事が楽曲に反映されたりすることもあったり?
「一応、仕事と音楽は完全に切り離して考えてるんで、音楽に充てる時間は別できっちりとるようにはしてるんです。お客さんに『ご延長、どうされますか?』って言ってるときに突然リリックが浮かんだり、みたいなことは……さすがにないですね(笑)」

──現実的な話、音楽だけでは食えないし、かと言って、仕事をしすぎると音楽に打ちこむ時間が物理的にも減ってしまう。そこにジレンマは?
「まぁ、とはいえ、音楽やっててそれで食っていけるのなんて、ほんのひと握りですからね。俺らも全国各地の箱にゲストで呼んでもらったり、CD手売りしたりと、いろいろやってますけど、機材買うにも、レコーディングするにも、当然お金はかかってくるから、生活費にまで充てる余裕はまったくない。そういう意味でも、融通が利いて、毎月手取りで30万とかのまとまった金額がもらえるいまの環境にはかなり満足してますよ」

──聞けば、今年は30歳を迎える節目でもある、と。ご自身には「いつ頃まで」といった区切りへの意識も?
「そこはまったく考えたことがないし、とりあえずは、自分たちが気が済むまで続けようかな、と。そりゃ、〝バズったらいいな〟とかは思いますけど、それだって自分たちが目指す方向の延長線になきゃ意味がない。なんで、『メジャーに行きたい』とか、そういう気持ちは昔もいまもあんまり持ったことがないですね。若い頃からずっと言い続けてる、『武道館でやりたい』っていうのも、インディーズでだってやろうと思えば叶えられる夢ですから」

──同じような境遇にいる若い世代にかける言葉があるとすれば。
「夜の世界も思ったほど悪くないよ、ってことですかね(笑)最近、系列店に〝タクティー〟という名前のラップやってる若い子が入ったと聞いたんで、そいつには会ってみたい。どうせ一緒に働くなら夢のあるやつがいいですね」(2019.11.16)

INFOMATION

■1st Album『EMOTION』
16年発売のMIX CD『#コトヅテ』から約3年半。埼玉・川越から全国へ向けて活動するACE CROW&TAKU-Gの2MCユニットWHISKY BOYzによる待望のファーストアルバム!完全DIYスタイルを軸に、数々の現場で培ってきたリアルを糧に夢や理想、現実をエモーショナルに詰め込んだ。リード曲の「Private Jet」を始め全10曲を収録。DEFRESH ENT.から11月13日(水)リリース。


PROFILE
TAKU-G
10年に結成のWHISKY BOYz(ウィスキーボーイズ)。12年以降は自身の経験とリスナーとの共感を大事にし、トラックに合わせてフロウするACE CROWa.k.a. LILY BEATzと、現代社会の裏と表を生き、自分の目で見た善悪を受け止めて歌にするTAKU-Gの2MCで埼玉や都内のクラブ、野外や地元のお祭りなど様々なイベントでライブ活動を行っている。
ACE CROW: 公式Twitter
TAKU-G: 公式Twitter

取材・文 鈴木長月 撮影 おおえき寿一