茸本朗さん 採捕した食材で生きる脱サラ“野食家”

1日1回は採取した食材を使う!本気を出せば野生の食材だけですべての食事をまかなえます

 全身大トロの味わいの流通禁止魚を食べて、肛門から脂が垂れ流しに。超美味のウツボを釣り上げるも、手首の肉をかじり取られる……。茸本朗さんは、自分でとった野生の食材を食べる〝野食家〟。食べる習慣・とる習慣が一般化していない食材も多いため、著書の『野食ハンターの七転八倒日記』で披露したような失敗談は日常茶飯事だ。独自の肩書で脱サラを果たした過程を含め、楽しさも苦労も満載の日々の活動について聞いた。

セミはむき身にすると枝豆の香りのするツナの味なんです

──著書の『野食ハンターの七転八倒日記』では、「人体では消化できない脂を含む〝ワックス魚〟を食べて、お尻から脂が垂れ流しに」という話が最高でした!ネットでも大人気の記事だったそうで。
「やっぱりみんな、いい大人がお尻から何か出す話が好きなんですよ(笑)」

──会社で漏らしたんですよね……。
「腹痛も特になく、突然ズボンが膨らみ始めて『あれ、お尻あったかい』って感じでした。漏らしたと認識して、『社会的に死んだな』とも思いました」

──以前は会社員をしつつ野生食物を採り・食べる活動をしていたんですよね。
「採取は土日にしつつ、ブログは会社の行き帰りで書いていました。ブログの収入だけでの生活は不安でしたが、マンガ原作の仕事をいただいて、その収入も計算に入れて独立した感じです」

──野食家の活動には「エンゲル係数を下げる」という目的もあるそうですね。
「今も1日1回は採捕した食材を使うようにしていますし、本気を出せば食生活の大半はまかなえます。炭水化物と調味料は採るのも下処理も大変なので買いますが、炭水化物だとドングリは1年分の備蓄がありますよ」

──リスみたいな生活ですね(笑)。
「殻をむいて粉にひけば、パンとかラーメンにもできるんですよ。昨年末の年越しはどんぐりの麺でした」

──最近はほかにどんな野食を?
「冬は野草類だとハマダイコン、カラシナ、ナズナなどアブラナ科の植物が多いです。タンパク質は釣った魚が中心で、知人の猟師から頂くジビエ肉にも助けられてますね。夏は虫をよく食べます。セミはむき身にすると、『枝豆の香りのするツナ』みたいな味です」

──ウツボが「脂の乗ったフグ」とか、ご著書では味の表現も面白かったです。ウツボが食べられるのも初耳でした……。
「日本でも黒潮の当たる海域では食べる文化があります。日本でも黒潮の当たる海域では食べる文化があります。和歌山ではコンビニでウツボスナックが売っていたりしますからね」

──本の中では「日本では『食べる習慣がない』という理由で捕れても廃棄される生き物が多い」という話もありました。
「この活動をはじめて、美味しいけれど捨てられる『未利用魚』が多い実態を知ったんですよね。あと野生の食物も外来種が多かったり、うなぎが絶滅寸前というニュースに触れたりして、自分の活動も何か世の中の役に立てるんじゃ……と思うようになりました」

──「土用の丑の日はうなぎの代わりにウツボを!」でもいいんですもんね。
「ウツボは絶対にウナギ以上に美味しいですからね。あと、ウツボの美味しさは僕以外にも広めている人がいますが、僕はウツボに噛まれた経験で他の人と差別化できていると思います(笑)」

──多くの人が食べない食材は、自分でレシピを考案するのも楽しそうですね。本の中では、酸味が強いカンゾウタケをカレールーと煮込んで、ハヤシライス風にする話が面白かったです。
「野生の食材は香りが強くて苦かったりもしますけど、それを残すことで美味くなる料理もあるんです。山菜も味にクセがあるからこそ、こんなに人気なんですよね。撮影時に河川敷で採取したハマダイコンも、根をすりおろすと辛味の効いた薬味になりますよ。ホースラディッシュみたいにジビエ肉に乗せても、香りが合わさって美味しくなります」

──食べてみたくなってきました……。現在は、ブログの広告料や原稿執筆での収入がメインですか?
「あとはイベントの収入ですね。変なものを採っている人も、そういう変な物を食べたい人も世の中には結構いるので、そういう人たちと調理会をやってます。あとファンコミュニティで有料記事を公開したり、YouTuberとしても活動を始めたりしていています」

──会社員をしつつブロガーをしていた立場として、個人活動で突き抜けたい人に何かアドバイスはありますか?
「今はnoteみたいに1記事ごとに課金してもらえるサービスもありますし、プロではない人でも、イラストや文章で収入を得る手段は多いはずです。今はスマホで文章も書けますし、絵も描けますし、スキマ時間を生かしてできる活動はたくさんあると思います。

──茸本さんも以前は会社の行き帰りにブログを書いていたんですよね。
「週5日間、書いていましたね。それだけ好きなものがあったのが、まずラッキーだったと思います」(2020.2.15)

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『野食ハンターの七転八倒日記』

【INFO】
野外で採った食材を調理する「野食」を実践する著者が、爆笑必至の失敗談を中心にまとめた著書。「ヒトデはウニに近い美味しさ」「セミ=若干枝豆風味のツナ」など驚きの食レポも多数!

PROFILE

茸本朗(たけもと・あきら)
野食家。1985年、岡山県生まれ。小学5年生のときに釣りにハマり、現在も愛用する出刃包丁を買ってもらったことで、「自分でとった野生の食材を料理して食べる」野食の道に入る。2012年に開設した「野食ハンマープライス」は月間100万PVの人気ブログ。近年はテレビ番組への情報提供や出演、雑誌への寄稿も多い。

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取材・文 古澤誠一郎 撮影 おおえき寿一