仕事情報誌ドカント

尾藤イサオ 尾藤イサオ
「明日のジョー」主題歌やテレビ「THE夜もヒッパレ」で、パンチのきいたロックな歌声を響かせてくれた尾藤イサオが「自分の人生を変えた人」と敬愛するエルヴィス・プレスリーの名曲が25タイトルも流れるミュージカル「All Shook Up」に出演。エンターテイナーとしての仕事への熱意は、働く世代が参考になること盛りだくさん! 芸能界を45年間生き抜いてきた男のプロ意識はダテじゃないっ!!

Interview/内埜さくら Photo/谷口達郎

---尾藤さんが出演するミュージカル「All Shook Up」は、エルヴィス・プレスリーの曲が25タイトルも盛り込まれているとか。
僕にとってプレスリーは、神様のような存在。12〜13歳の頃、『ハートブレイクホテル』を聞いた瞬間、ビビビッと体中に電気が走ったような衝撃を受けて、その後の人生が変わってしまったんです。だから、このミュージカルに出させていただくだけでも光栄なんですよ。


---しかも、本作で一番最初に歌うナンバーがその「ハートブレイクホテル」なんですよね。
もう、縁としか言いようがないですよね。衝撃を受けた曲を出だしに歌わせていただけるなんて。僕ね、プレスリーが42歳の若さで死んだ時、1週間ほど喪に服したほど彼が好きだったんです。部屋でレコードをかけながら、ローソクを灯したりしてね。変な言い方だけど、失恋して食欲がなくなるのと同じように、食事さえままならなかったくらい。


---当時のプレスリーは、それほど若い世代に影響力があったと。
彼は世界的な社会現象を巻き起こした偉人だったからね。腰を振る姿が“男のストリッパー”みたいだと悪評を受け、聞くことを反対する大人も中にはいましたよ。でも、その反対意見が逆に若者を動かしてしまったんです。僕はプレスリーがアメリカ大統領になればいいと願ってた。そう考えてる若者は、案外多かったかもしれないですよ。


---歌う曲はプレスリー。でも本作は恋多きラブコメディーですよね。
コメディーと断言してしまうのは…僕の中では難しいかもしれません(苦笑)。コメディーって、笑いを含んだ喜劇のことですから。お客さまに笑っていただくのが、エンターテイナーとして一番大変なことなんですよ。これは、泣いていただくことよりもね。


---尾藤さんの役どころは。
坂本さん演じるチャドが、ロックンロールによってある町を変えてしまうというストーリーで、現役の宝塚女優、花影アリスさん演じるナタリーの父親ジム・ハラー役です。妻に先立たれ、愛を失った人生に嘆いてる時に、美術館の知的な女性館長サンドラに出会い、一目惚れ。でも結局思いは届かず、幼なじみの居酒屋女主人シルビアとの愛に目覚めていくっていう…。


---父親役といえば、このミュージカルで娘の尾藤桃子さんと共演されますよね。
舞台では初共演になります。テレビの『THE夜もヒッパレ』では、一緒に歌ったことがありましたけど。


---芸能界の先輩として、何かアドバイスはされているのでしょうか。
いや〜、ギャグばかり言ってるオヤジですから。反対に『足を引っ張らないように頑張るよ』と、僕が娘に言ってますよ(笑)。アドバイスなんて、まったく…。


---尾藤さんは芸能界の大御所なのに、ですか!?
今の若い世代は、音楽のノリをつかむのがとにかく上手いですよ! 簡単にリズムにノッちゃいますからね。ミュージカルという舞台はお客さまからお金をもらって歌を披露する以上、カラオケで歌うのとはワケが違うんです。今はとにかく歌とセリフの稽古をしっかりやって体の中に入れて、ひたすら覚える。そして、共演者の皆さんと空気感を一体化させるということに時間を費やしてます!。




---では、この舞台の見どころを。
『All Shook Up』の邦題は、『恋にしびれて』。タイトルはプレスリーの名曲で、題名の通り、さまざまな登場人物が恋をする物語です。僕が10代の頃に感じたものと、僕よりだいぶ年代が若い共演者の皆さんが感じるものは違うとは思います。でも、僕なりのプレスリーへの想いを込めます。熱いステージにしますよ! 出演できることに感謝して、頑張ってやりたいと思います。


---プレスリーファンの尾藤さんならではの熱のこもったお言葉です。
僕は彼の曲と出会う前、曲芸師を目指して師匠に弟子入りしてたんです。でも、プレスリーを聞いて曲芸師への道を簡単に捨てちゃった(笑)。稽古は頑張ってたし、絶対に生活できる道だったんですけどね。当時は16歳でしたから、若さも手伝ってという理由もありますけど。それほどプレスリーは、僕の人生を変えた人なんです。


---そして、昭和37年に念願の歌手デ ビューを果たしました。
ジャズ喫茶が勉強の場所でしたね。落語家が寄席に出るのと一緒です。で、デビューしてから2ヵ月後の9月に、テレビのレギュラーが2本も決まったんですよ。スゴイことですよね。ラッキーというか…。でも、当時の事務所との契約は、スーツ2着と譜面を作ってくれるということだけ。人前に出る仕事なのに、スーツが2着だけではさすがにマズイですから、自腹で新調してましたよ。


---忙しいぶん、持ち出すお金も多かったということですね。
テレビに出ると当然、つき合いも広がりますし。それに、芸能界の仕事は保障がないですからね。いつダメになるかも分からないっていう仕事でしょう。僕が『いつでも仕事しますよ』と言っても、僕を買ってくれる人がいなければ仕事が来ないんです。そういう意味では、18歳でデビューした時から、すでにリストラが始まってるような不安定さはあるかもしれません。



---不安定な仕事をこなしてきた尾藤さんが、お子さんへ伝えていることなどがあれば。
桃子とは別の娘がね、絵を描くのが好きなんです。高校から大学まで一環して勉強してきて、絵で食べていきたいと言ってますよ。でも、日本で絵を描いて生活するのは、すごく難しいことでしょ? だから僕は『すぐ食べていく道を考えず、描き続けてごらん』と言ってます。何年後かに、少しでも食べられるようになればそれでいいじゃないって。その仕事で食べられるのかっていうのは、すごく重要だと思います。


---やりたいことすら見つけられない人も増えていますが…。
今の世の中って、選択肢が多すぎるんですよ、きっと。グローバル化しすぎたというか。僕の若い頃は、仕事があるだけでもありがたかったんです。しかも、将来夢は叶うと信じていた世代。でも今は、自分の夢すら信頼することが難しい時代でしょう。見ていて大変だなと心から思いますね。


---だからこそ尾藤さんのように、好きな仕事をしている人は羨ましがられると思いますよ。
ありがたいことに、ここまで来させていただきましたけどね。でも僕らの仕事は何年経っても変わらない元気な姿を見せて、お客さまの“サプリメント”となる役目もあるんです。だからこそ、日々頑張ることを自然と身につけるのが必須。好きなことをやらせてもらっているからこそ、お客さま以前に自分を裏切れませんから。


---今年64歳を迎える現在でも、エネルギッシュにご活躍する秘訣とは何なのでしょうか。
やはり、仕事のために自己管理をしているからでしょうね。仕事人間なんです。どの仕事でも、体調管理が一番大切だと思いますよ。60歳を過ぎてからは、健康維持に空手も始めました。自宅ではダンベルやストレッチもしてますね。


---芸能界の仕事は、代理が通用しませんからね。
どんなに具合が悪くても休めませんよ。それこそ、死ななきゃ休めないんです(笑)。


---加えて今年は、芸能生活45周年記念のライブツアーも積極的にこなされてます。
全国にあるライブハウスのケントスを沖縄から順に回ってます。尾崎紀世彦さんとジョイントコンサートもさせていただいてるんですよ。もちろんライブでも後半はプレスリー・メドレー。今年最後はこのミュージカルやライブで、プレスリー尽くめ。本当にうれしいです!
INFORMATION
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■ミュージカル「All Shook Up(オール・シュック・アップ)」
■ミュージカル「All Shook Up
(オール・シュック・アップ)」

舞台は1950年代のアメリカ。保守的で退屈な田舎町に突然現れた放浪のロック青年チャド(坂本昌行)が、法律に縛られている町の住人たちに「人を愛することの大切さ」を「ハートブレイクホテル」「ラブミーテンダー」「ジェイルハウスロック」といったエルヴィス・プレスリーの楽曲とダンスで伝えていく。チャドの影響により、町に人々が次々に恋に落ちていく様子と、チャド自身の心の変化をユーモアたっぷりに描いた陽気なラブ・コメディー。それが、ミュージカル「All Shook Up(オール・シュック・アップ)」だ。名曲の数々とノリノリのダンス、そして最高にハッピーな物語に期待が集まる。

【CAST】
坂本昌行 花影アリス 湖月わたる 岡田浩暉 諏訪マリー 尾藤イサオ 他

【STAFF】
演出・振付=デビッド・スワン 
企画・製作/フジテレビジョン
主催:フジテレビジョン(東京公演)/関西テレビ放送(大阪公演)

【INFO】
東京公演:12月8日(土)〜12月21日(金) 青山劇場
大阪公演:12月27日(木)〜12月30日(日) シアターBRAVA!
問い合わせ=テレドーム
TEL.0180-993-218
(24時間テープ案内)


PROFILE
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尾藤イサオ(びとう・いさお)
尾藤イサオ

寄席芸人の父、三味線奏者の母を持ち、幼少時から芸の道へ。53年、曲芸師・鏡小鉄氏の内弟子となり曲芸を習う。61年に渡米した時にショービジネスに魅了され帰国後、エンタティナー目指してレッスンを始め、63年「マック・ザ・ナイフ」で歌手デビュー。同年の第20回記念日劇ウェスタンカーニバル「プレスリー賞」を受賞。ロカビリー歌手として人気に。65年には「悲しき願い」、70年にはアニメ「あしたのジョー」の主題歌が大ヒット。俳優としても映画やドラマ、バラエティで活躍。舞台は「スライス・オブ・サタデー・ナイト」「サウンド・オブ・ミュージック」「シンデレラ・ストーリー」「赤い夕陽のサイゴン★ホテル」ほかと、ジャンルは多岐に渡る。「歌っても演じても、いかにお客さんに楽しんでいただくか」をポリシーに、今でも現役ロックンローラーとして走り続けている。エネルギッシュで熱いシャウトのボーカリストは芸能生活45周年記念全国縦断ライブツアー中。また、奥田英朗さんの直木賞受賞作が原作の舞台「空中ブランコ」(08年4月20日〜5月5日、東京芸術劇場中ホール)にも出演が決まっている。

公式HP

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