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熊切和嘉+つぐみ 熊切和嘉+つぐみ
 近未来、戦時下の日本に『敵討ち法』が成立――。シュールな内容が話題を呼んだ、松本次郎氏の漫画「フリージア」が映画化決定!!"人間の感情"を見事に具現化した監督とヒロイン女優を大分析!

●撮影/谷口達郎 ●取材・文/内埜さくら

---まずはお二人に。原作を読んだ感想を聞かせてください。
熊切「松本次郎さんの絵そのものが独特で、カオスな感じがするんです。でも、そればかりを意識しすぎるとドラマ性が薄くなる。制作に着手した時点で原作が完結していないですし。なので、プロットや骨格作りを組み立てる時に、オリジナルの設定を細かくプラスしていこうと決めてました。メイン三人の関係性、そして、その元となる爆破実験とか。

『フリージア』の時代背景は近未来ですが、70年代っぽいムードを醸し出していて。だからあえてレトロな雰囲気の映像にして、“取り残された感”“殺伐さ”という、原作の世界観は壊さないよう、大切にしました」

つぐみ「お話をいただいた時、原作はあっても脚本はオリジナルと聞いたんです。だから実は、撮影が終わるまで一冊も読まなかったんですよ! 撮影後、全部集めて読んでみたんですけど『読まなくて良かった』って。

原作が強烈なので、もし読んでいたら先入観が入り込みすぎていただろうし、演技がマンガの真似になってしまったかもしれませんね。私、かなり影響を受けやすい性格なので(笑)」




---監督が、ヒグチ役につぐみさんを起用しようと決めたのは?
熊切「実を言うと『ヒグチ役はつぐみさんに!』と決めてから会ったんです。彼女には、良い意味での“暗さ”があって。そこが魅力かなと。ヒグチの恨み節的な眼差しを表現するのに適役でした(笑)。プラス、決定的な出来事があったんです。i-podで役をイメージしながら音楽を聴いていたら、映画の台詞に『夢を見ました』とヒグチが喋るシーンがあって。それが彼女の声で聞こえたんですよ。もう、直感的としか言いようがないんですけどね」

---映画の主軸である「敵討ち法」に対する、お二人の意見があれば。
つぐみ「最初は大賛成でした。だって、もし自分の家族に何かされたら、私も敵討ち法を使うと思ってましたから。でも、映画に入ってから疑問を感じるようになったんですよね。トシオ役の西島さんとご一緒したシーンで、パッと考えたんです。『人を殺すことが、こんなに簡単に成立して良いのか』って。人ひとりの命の重さというか。その点に関しては、う〜ん…まだ解決してないというのが正直なところです」

熊切「感情の部分では確かにあるんですけどね。その先を想像すると分からなくなる。虚しいというか…。ただ、どっちにしろ、代理人を雇うってのはどうかと思う」




---作品のテーマが重いですが、現場の雰囲気はどうだったのでしょうか?
つぐみ「今回はみんなそれぞれの役に没頭していて、休憩中もいつも仲良くしゃべってる…というような現場ではありませんでしたけど、すごくいい感じでした。私は、出演者同士が仲良くしゃべったからといって、良い映画ができるわけではないと想うんです。

あと、監督が現場の空気感を作るのがすごく上手な方で。信頼してくれている気持ちが伝わってきたので、芝居がしやすかったです」

---ハプニングなどはありましたか?
熊切「雨の銃撃シーンで、つぐみさんが靭帯を伸ばしてしまって。で、次が徒歩での移動だったんですけど『誰が彼女をおんぶして連れて行くか』と。僕は助監督と競ってました(笑)」

つぐみ「プロデューサーに『好きな男を選んでいいよ』って言われて(笑)。監督におんぶしてもらいました」

---では、最後に映画のPRをどうぞ。
つぐみ「家族や愛する人っていう、当たり前のように自分の周りにいる人の大切さを再認識してもらえる映画です。私が敵討ち法に疑問を感じたように、改めて考えさせられるかも。あと、全篇にイケメン俳優が登場しているので、目の保養にもなりますよ(笑)」

熊切「僕は現場で芝居を観るのが仕事だと思っていて。観ていて楽しくないとテンションが上がらないんです。今回は、俳優の演技力に信頼が置けた自信作です。若い人にはもちろん、僕と同年代、セルジオ・レオーネ監督の映画を観た世代にも楽しんでもらえたら嬉しいですね。
INFORMATION
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フリージア
フリージア

フリージア
近未来、戦時下の日本。
敵打ち法成立。

STORY
 謎めいた女ヒグチ(つぐみ)にスカウトされ、敵打ち執行代理人となった叶ヒロシ(玉山鉄二)。表情ひとつ変えずに引き金を引き、淡々と任務をこなしていく彼の前に、15年前の幻が現れる。究極の兵器実験。封印された感情。それらはヒロシを運命の決闘へと導いていく…。

CAST
玉山鉄二・西島秀俊・つぐみ・三浦誠己・柄本佑・嶋田久作・竹原ピストル・鴻上尚史・坂井真紀・大口広司・すまけい

STAFF
監督/熊切和嘉
原作/松本次郎(小学館「IKKI」コミックス)
脚本/宇治田隆史
製作/小学館 東宝 バンダイビジュアル ソニーPCL オフィス・シロウズ 
配給/シネカノン
渋谷アミューズCQNほかにて2月3日よりロードショー

公式HP:フリージア


PROFILE
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熊切和嘉
くまきり・かずよし
1974年生まれ。北海道出身。
大阪芸術大学の卒業制作「鬼畜大宴会」が第20回ぴあフィルムフェティバルで準グランプリを獲得。その後、全国で劇場公開され、ロングランヒットを記録。「空の穴」「アンテナ」「青春☆金属バット」など日本で最も注目される若手映画監督の1人である。


つぐみ
つぐみ
1976年生まれ。東京都出身。
映画「タイム・リープ」でデビュー。映画出演以外にテレビドラマ、舞台、CMなど幅広く活躍。公開待機作に「エクステ」(園子温監督)がある。
公式HP http://tsugumi.net/


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