フリーターがメールオペレーターのバイトを体験![前編]応募~即日面接
■駅前の喫茶店に現れたのは、金髪“チャラ男”!
- とある平日の昼下がり…。何もやることのないオレは駅前の喫茶店にいた。
280円のコーヒーを頼めば何時間でも座っていられる店だ。「今日は何して時間を潰そうか…」と物思いに耽っていると…。
「アレ?ひょっとしてトラじゃね?」
いきなり声を掛けられた。
「どうしたんだよ、険しい顔して~」声の主は高校時代の同級生、ユウタだった。
ユウタは高校の頃から茶髪にピアスが目印の“チャラ男”だった。
卒業後、茶髪はド派手な金髪となり、ピアスも耳だけではなく鼻や眉に至るまでジャラジャラと増えていった。
今日の出で立ちも、幾何学模様がプリントされたサイケなシャツである…。
ユウタはオレに断りもなく対面の席に座った。「おいおい、どうしたの?何してんの?」
このちょっとなれなれしい感じが昔から苦手なんだよなぁ…。
「別に何でもねえよ」
適当に答えて追い払おうとしたが、ユウタはなおも絡んでくる。「おっと、ご機嫌斜めだねぇ。しかし平日の真っ昼間からコーヒータイムなんて、いいご身分だなぁ。お前仕事してないの?」
「えっ? あぁ、今はフリーターやってるよ。今日はたまたま休みなんだよ」
「ふぅーーーん」ん?今こいつ鼻で笑いやがったな…。お前だって同じじゃねぇかよ。
オレは苛立ちながら聞き返した。
「ユウタこそ、何の仕事してんだよ?」
するとユウタは少し得意げになって答えた。「俺?俺の仕事はいわゆる“オフィスワーク”ってやつよ。毎日マジメに“デスクワーク”してるからさ~」
■ピアスジャラジャラ男が“オフィスワーク”?
- 「はぁ? オフィスワーク? その格好で?」
「そうだよ~」
こんな金髪で顔中にジャラジャラとピアスをくっ付けた男がデスクワークだと?
「ウソついてんじゃねぇよ。普通の会社がそんな格好の奴をデスクワークで雇う訳がないだろ」
するとユウタは少し気色ばんだ。「ウソじゃねぇよ。今俺が働いてる会社は、服装も髪型も自由、ピアスもOK、ヒゲもタトゥーもOKなの!だから俺でも働けるんだよ~」
「ホントかよ?でもオフィスワークだったら今(平日の昼間)は仕事だろ?」
オレはまだ信じられない。「あのな、今働いてる会社は365日、24時間、自由シフトで仕事が出来るんだよ。俺は夜勤がメインだから昼間は休みなのよ~」
「ふぅーーーーん」
まだ疑ってるオレが、さっきの仕返しのようにハナで笑うように答えると、ユウタはスマホを手にした。
そしてその画面をオレの眼前にぐいと差し出して言った。「俺が働いてるのは、この会社だよ」
株式会社●●●『メールオペレーター募集中』
そこにはユウタが働いている会社の求人情報ページが表示されていた。 ■ユウタは“メールオペレーター”のバイトをしていた!
- 「メールオペレーター?」
オレはスマホの画面をスクロールさせて求人ページを読み進めていった。
すると“勤務時間”の欄には、“24時間自由シフト制”と書いてある。
そして“待遇”欄には、服装自由・髪型自由・ピアスOK・タトゥーOKと謳われている。
確かにユウタが言っている通りだ。「へぇ…」
オレが感心した声を漏らすと、ユウタは勝ち誇ったように言った。
「な?嘘じゃなかっただろ?」
「ああ、確かに本当だわ。でもさ、メールオペレーターってどんな仕事なの?」そう聞くと、ユウタはいつものニヤケ顔に戻って語り始めた。
■メールオペレーターのアルバイト…仕事内容や時給は?
- 「メールオペレーターってのは、メールやチャットを使って、ゲームアプリや占いアプリとか、コミュニティーサイトやSNSなんかのユーザー管理や問い合わせの対応をするのが仕事なんだよ」
「へぇ…そうなんだ」「インターネットって1年中いつでもアクセス出来るじゃん。だからアプリによっては、ユーザーへの対応が24時間体制になってたりする訳よ」
「なるほど、だから24時間いつでも仕事があるってことか…」オレは納得して、スマホに表示されている会社の求人ページを改めて眺めてみる。
するとあることに気付いた。
「給料は、アルバイトで“時給1,100円~2,000円以上”。 なんで時給にこれだけの差があるの?」「それは手当やインセンティブが付くからだよ」
「インセンティブって歩合ってこと?」「そう、時給は1,100円スタートだけど、そこに“夜勤手当”や“残業手当”、“皆勤手当”なんかが付いたりするし、アプリへユーザーの登録を促したり、ゲームアイテムの課金を誘導したり、多くの成果を上げれば“インセンティブ”(歩合)も付くから、時給2,000円とか時給3,000円とか稼いでいる奴だって普通にいるからな~」
「そういうことか…。で、ユウタの時給はいくらなの?」
「俺はつい先週始めたばっかだから…でも夜勤だから、時給1,300円ってとこだな」なんだよ、偉そうに語ってる割には、まだ1週間しか働いてねぇのかよ…。
オレは半ば呆れながらも、メールオペレーターの仕事に興味を覚え始めていた。
オフィスワークで時給1,300円スタート。 なかなか美味しい仕事じゃねぇか…。 ■職場はエアコン完備の快適なオフィス!
- オレの心の動きを敏感に察したかのように、ユウタは語り続けた。
「今まで俺がやってたバイトってさ、屋外で暑かったり寒かったり、力仕事でキツかったり汚かったり、接客で気を遣ったりとかさ…結構大変だったんだよな~」
「まあ、オレもそうだよ…」「メールオペレーターの仕事はさ、職場はエアコンが完備した綺麗なオフィスだし、デスクワークだから力仕事なんて全然ないし、パソコンで黙々と入力作業をするのが仕事だから、煩わしい人間関係も一切なし! おまけにイヤホンで音楽聴きながら仕事も出来るしさ、マジで快適なんだよ」
「へぇ~、そりゃ時間も早く過ぎて良さそうだな」
「だろ~?」
ユウタはそう言うと、オレの顔を見て一層ニヤニヤと笑った。「っていうか、お前メールオペレーターのバイトをやってみたいと思ってない?」
■メールオペレーターに求められるスキルは?
- コイツはなかなか勘がいい。オレはすでにメールオペレーターの仕事を始めてみようかと考えていた。
しかし、果たしてこのオレにそんなお仕事が務まるのだろうか?「今までデスクワークなんてしたことがないし、ましてやオペレーターとか難しそうじゃねぇ?そういうソフトとかの知識なんて無いし…。面接に受かるかな?」
するとユウタは言った。「トラって、普通にパソコン扱うぐらいはできるよな?」
「まあね」「ひょっとして、ブラインドタッチとかできる?」
「まぁ、一応…」(日々のオンラインゲームで鍛えてるから…)「だったらOKだよ。俺はタイピングに自信がなくて不安だったけど、何とか面接クリアしたし」
「そっかー」(そうだよ、コイツでも受かってるんだもん…)長いニート暮らしで培ったブラインドタッチがこんなところで役に立つとは思わなかった…。
まあでも、こんな金髪ピアス君でも時給1,300円で受け入れている会社なら、さすがのオレでも大丈夫だろう。「ウチの会社は当日の面接もOKだから、今からでも行って来なよ。一緒に働こうぜ~」
ヘラヘラ笑うユウタの顔を見て、心の中に一瞬迷いが生じたが…。「俺の紹介って言ったら優遇してもらえるぜ~。今から面接に行くんだったら会社に連絡入れといてやるよ」
この助言を聞き、コイツにもいい所あるじゃん、と思い直した。こうしてオレはこの後夕方5時にメールオペレーターの面接を受けることになった。
■いざ、メールオペレーター!バイトの即日面接へ!
- 場所は新宿の小綺麗なテナントビルの8階、会社の受付で面接に来た旨を告げると接客ブースに通された。
そこで待っていると、30代くらいの真面目そうな男性の担当者が現れ挨拶を済ませる。「ユウタさんのご紹介のトラさんですね、よろしくお願いします」
ここに来るまでに急いで用意した簡単な履歴書を渡して面接がスタートした。まずは簡単な業務の説明とタイピングテストがあり、その上で希望のシフトや勤務日数を聞かれる。
オレは夜勤の12時間勤務で週5日の出勤シフトを希望した。というのも、ユウタ曰く、このメールオペレーターという仕事は、その待遇の良さから結構な人気職種で、完全“自由”シフト制とは言いながらも、あまりに短い勤務時間や少ない出勤日数を希望すると、不採用になる可能性があるらしい。
また、給料の“日払い”(当日払い)を希望する人は、すぐに辞めてしまう確率が高い、という理由でマイナスに取られる可能性があるから1、2ヵ月経つまでは“月払い”を希望した方がいい、とも忠告されていた。
しかし、やはりお金は早めに欲しい。担当者に希望の給料受取日を聞かれて“週払い”を希望した。
それによって担当者の顔色が変わることを危惧したが、彼は別段気にする風でもなく唐突に言った。「いつから勤務できますか?」
「ええっと…明日からでも…」
「それでは明日からお願いします」これにて面接はあっさり終了、晴れてその場で“即採用”となった。
≪ライター≫フリーター虎次郎
肉体労働からオフィスワーク、早朝の新聞配りから深夜の水商売まで……これまで経験した仕事の数は60職を超えました。むろん、仕事の数が多けりゃよいというもんじゃありません。何をやっても長続きしない性分がわざわいし、1日でとんだアルバイトも数知れず、こんな不甲斐ない顛末となっております。
このたびは縁あって男の高収入情報「ドカント」からアルバイトの体験談の執筆を仰せつかりました。
こんなお粗末な経験がどなたかのご参考になればと……
不肖、虎次郎。ひとつよろしくお頼みします。
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