令和の時代、風俗店スタッフの仕事は大丈夫?
“平成”という時代は、バブル崩壊から始まった“平成不況”や、デフレスパイラルからリーマンショックに続く大不況にも見舞われ、さらには阪神大震災、東日本大震災などの大災害が追い打ちをかける、“不況と災害の時代”であった。
しかもその間、インターネットの発達などの技術革新が起きた。
そこでは、新たな商品やサービスが生まれ、多くの産業が産声をあげたが、代わりに斜陽化する産業も多く見られた。
例えば、“情報”の分野ではIT業界が生まれ、出版や印刷業など昔ながらの情報産業が衰退化した。
そんな激動の平成時代、各業界の盛衰は目まぐるしく変動した。この流れは、“令和”に時代を移しても変わらないだろう。
「風俗は不況に強い」と世間でいわれているが、それは本当なのだろうか?
これからの時代、風俗業界に将来性はあるのか?
令和時代を、風俗業界は生き残っていけるのか?
今回は、平成の風俗業界の歴史を紐解きながら、その未来を占ってみたい。
1.平成の風俗業界を振り返ると……
- 平成がスタートしたのは1989年、日本はバブル景気に沸いていた。
しかし、1991年になるとバブルは崩壊して平成不況に突入し、1990年代後半のデフレスパイラル、2008年のリーマンショックへと続き、日本は“失われた20年”といわれる不況の時代となった。その間、風俗業界では何が起こっていたのだろうか?
ここでは首都圏の主なトピックを挙げてみたい。 1-1.イメクラ・性感ブーム
- 1990年代初頭、バブル景気が崩壊して世の中が大騒ぎとなっている頃。新宿や渋谷、池袋など都心の歓楽街を中心に“イメージクラブ(イメクラ)”や“性感マッサージ(性感エステ・性感ヘルス)”などの店舗型風俗店が乱立した。
イメクラは、風俗嬢のコスチュームや店内のセット(教室・電車・診察室など)が売りで、男性客の趣味や嗜好に合わせたシチュエーションプレイが堪能できる性風俗店である。
性感マッサージは、パウダーやオイルなどを用いた前立線マッサージを売りにしたマッサージ主体の風俗業種であった。そして、これらの店舗は実のところ、風営法無届けの違法風俗店であった。
しかし、営業時間やサービス内容などで風営法のルールを守っていたためか、当局に摘発されることなく、いわば黙認された状態で歓楽街を席巻していた。
歌舞伎町や池袋などのテナントビルは一軒まるごと違法風俗店、なんてことも珍しくなかったのである。 1-2.デリバリーヘルスの誕生
- 1990年代には風俗業界にとってもう一つ重要な出来事があった。
それは1999年のデリバリーヘルス(デリヘル)の誕生である。デリヘルは、風俗嬢をホテルや男性客の自宅に派遣する無店舗型の風俗店で、派遣型ヘルスや出張ヘルスなどとも呼ばれる。
デリヘルが生まれた背景は、運営を風営法の届出制として、公安委員会の管理下に置くことにより、それまでホテトルと呼ばれていた違法本番店を排除するためだったといわれている。
しかし、デリヘルは当初、そこまで盛り上がらなかった。というのも、先に述べたように当時の風俗業界はイメクラ性感の天下だったのである。
繁華街には“パイパン倶楽部”やら“素股ヘルス”など風営法を一切無視したド派手なネオン看板が立ち並び、連日夜も更けてくるとまるごと違法風俗ビルの非常階段には男性客が鈴なりの行列を作っていた。
しかし2004年、当時の石原都政が歓楽街で大浄化作戦をおこない、一気に風向きが変わることになる。
イメクラ性感店は一斉摘発の憂き目に遭い壊滅した。それにより行き場を失った多くのイメクラ性感店の運営者は、合法的に営業ができるデリヘルに鞍替えし、同じくヌキ場を失った男性客もデリヘルへ流れ、デリヘルブームが到来する。
1-3.激安風俗や人妻風俗の流行
- 2008年のリーマンショックに端を発する世界同時不況は、デフレスパイラルで苦しむ日本経済にも追い打ちをかけた。
風俗業界ではその世相を反映して激安風俗が大ブームとなった。
それまでのヘルス店のプレイ代金は、だいたい60分1万5千円~2万円が相場であった。
一方、激安風俗店は、プレイ時間は短いが1万円以下で遊べるので、お小遣いは減ったがどうしてもヌキたい……そんな男性客の間で大人気となった。
なかには30分3900円でプレイできるデリヘルも生まれたほどである。また、長引く不況は人妻風俗のブームをもたらした。
不況により家計が苦しくなった主婦やシングルマザーが大量に風俗業界に流入したことによって、人妻風俗は生まれた。
人妻(熟女)風俗嬢ならではの濃厚なサービスとリーズナブルな料金が相まって、風俗業種の新ジャンルのとして認知される存在となった。 1-4.不況による経済苦で多くの女性が風俗業界へ!
- 長引く不況によって苦しめられたのは、先に述べた人妻だけではない。
不況によるリストラや給料カットによって、OLやフリーター、学生など多くの女性たちが貧困生活に苦しむようになった。
そんな状況下、『入店祝金5万円』『1日3万5千円以上保証』『全額日払い』『即入居可能な寮完備』……このような高収入かつ高待遇な勤務条件を提示する風俗業界に大量の女性が流入することになったのである。
結果的に風俗業界は、貧困に喘ぐ女性達のセーフティーネットとしての役割も果たすことになった。一方、男性客としては風俗嬢の増加は望ましいことばかり。20歳そこそこの若いギャル系から40代の熟女まで……90分5万円の高級店から5千円以下の激安店まで、風俗で遊ぶ際の選択肢の幅が広がるからである。
こうして不景気な気運に包まれた世情のなかでも、当然のように風俗店には多くの男性客が押し寄せたのである。 2.「風俗は不況に強い」は本当なのか?
- こうして平成の風俗史を紐解いでいくと、あることに気付かないだろうか?
●バブル崩壊後、世の中が深刻な不況に陥ったにも関わらず、風俗業界は空前のイメクラ・性感ブームとなった。
このブームが終焉を迎えた原因は、不況ではなく徹底的な浄化作戦であった。
●長引く経済不況のなかでも風営法の改正によって生まれたデリヘルがブームとなり、一気に店舗数を増やした。
●リーマンショックによる連鎖的不況が続いた際も、風俗ユーザーの寂しい懐事情に合わせた激安風俗や人妻風俗がブームとなった。風俗業界の盛衰の鍵を握っているのは、単純に経済的な不況ではなく、当局からの一斉摘発や風営法の改正といった、他の事情(外的要因)である。
そして、一つのブームが終わると、すぐに新たなブームがやってくる。
風俗業界は、世間に不況の波が押し寄せようとも、その世相や時代の雰囲気を敏感にとらえ、店舗のサービス料金の値下げやプレイ内容などを巧みに変更して、素早くしなやかに対応してきた。
よって、失われた20年を通じて、風俗業界は業種ごとの浮き沈みはあっても、全体としては衰退していないのである。この事実は、風俗は不況に強いことを物語っている。
また、「風俗が不況に強い」ことの根拠としていわれているのが……
風俗は、人間が生存し種を存続させるための三大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)に直結しているから、というもの。不況になれば、男性たちの財布の紐は堅くなり、生活費以外の出費、特に趣味や娯楽に使う遊興費は減少する。
ゴルフの回数を減らそう……飲みに行く回数を減らそう……といった具合である。
しかし、人間の三大欲求である性欲を抑えるのは困難である。
そんな人間の性(さが)の強さが、風俗が不況に強いといわれている理由である。 3.風俗業界に将来性はあるのだろうか?
- 激動の平成を経て、令和の時代となった。果たして、風俗業界に将来性はあるのだろうか?
その未来を探るための指標として、風俗業界の市場規模を他業界と比較してみたい。ここではまず、男の欲望として昔からいわれる飲む・打つ・買うの市場規模を比べてみよう。
「飲む=酒類市場」「打つ=パチンコ産業」「買う=風俗産業」で調べてみる。
※買う、といっても風俗産業は売買春ではないので、あしからず……『市場規模マップ』(https://stat.visualizing.info/msm)をに基づく数値である。
酒類=約3.60兆円
パチンコ=約2.91兆円
風俗産業=約5.68兆円
この数字を見て驚かれた方も多いのではないだろうか。
ビールやハイボールなど、TVで莫大なCMを流しているアルコール業界、全国の駅前や幹線道路沿いに数多くの巨大な店舗を構えるパチンコ産業よりも、風俗産業の市場規模は断トツで大きいのである。この5.68兆円という風俗業界の市場規模と同等の業界となると……
モバイルコンテンツ=約5.72兆円
今をときめくスマートフォンゲームやSNS、動画などIT企業がしのぎを削るモバイルコンテンツと同等の市場規模。風俗業界がどれだけ大きな市場であるかがわかるだろう。もちろん、風俗店はTVで宣伝されることもなく、デリヘルにいたっては看板すら出さずにひっそりと営業しているのにも関わらず、5兆円を超える市場規模を持っている。
余談ながら、これに援助交際やらパパ活などの地下経済で動いている金額まで含めたら一体何兆円の規模になるのだろうか……とかくマイナスなイメージを持たれがちな風俗業界だが、これだけの市場規模を誇りながら激動の平成時代を乗り越えているのである。将来性があると見て間違いない。
4.令和時代、風俗店スタッフの未来は?
- 平成時代は、長引く不況から多くの会社が倒産の憂き目にあい、リストラや賃金カットなどのニュースが報じられた。
そんな状況ではあったが、風俗業界ではデリヘルがブームに乗って店舗数を増やし、リストラどころかスタッフの人手不足に陥った。
ちなみに、平成30年デリヘルの営業届出件数は、全国で20,152件である。(警察庁生活安全局保安課が平成30年3月に公表した『平成30年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締り状況について』による)そんな求職者の売り手市場な状況もあり、他の業界では横行した賃金カットなどなく、スタッフの給料は高水準で推移している。
国税庁が公開している「民間給与実態統計調査」(平成30年度版)
http://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2018/pdf/001.pdf
を参照すると、日本における平成30年度の男性の年齢別平均年収は以下のようになっている。20~24歳:284万円
25~29歳:404万円
30~34歳:470万円
この金額には賞与が含まれているので、仮にそれを合計2ヵ月とすると以下の月給額が予測される。20~24歳:約20万円
25~29歳:約28万円
30~34歳:約33万円
対して、風俗店のスタッフの給料は、月給25万円から28万円、なかには初任給30万円以上を支給する店舗も多い。
さらには、店舗の売上に対するインセンティブ(歩合給)を付与したり、年に二回以上の賞与(ボーナス)を支給する店舗も多いので、その収入を合計すると上記の平均年収を軽く超えているケースがほとんどである。では給与以外の待遇面はどうだろうか。
以前の風俗業界では、男性スタッフは体育会系のノリでパワハラやモラハラなんて当たり前、長時間勤務や休日が取れないなどブラックなイメージが強かった。
しかし、先に述べたような人材不足の状況が続いた影響もあり、週休2日制や社会保険完備など、今では風俗店の労働環境は格段に改善されている。このように、風俗業界では長い不況もどこ吹く風、他の業界と比較しても従業員の収入は高く、待遇も年々改善されてきた。
その傾向は、モバイルコンテンツ市場と肩を並べるほど巨大な、風俗市場に支えられている。
令和時代も風俗業界と、そこで働くスタッフには明るい未来が広がっている。十年後、令和十年になったときにも必ず新しい風俗が生み出されているはずである。