■キャバクラ・ガールズバー運営会社の幹部に聞く
- 2020年1月から世界中に巻き起こった新型コロナウイルスによるパンデミック。
人口密度の高い日本の都市部にも甚大な影響を与えた。
そして、同年4月からの度重なる緊急事態宣言により、文字通り東京の夜の街は静まり返った。
翌2021年10月……
第5波の感染拡大も落ち着きを見せ、7月から続いていた4度目の緊急事態宣言もやっと解除された。
かつてない苦境に飲み込まれてから約1年半、やっと一息つけた様子の東京の夜の街。
ドカント的業界、夜の住人の方に実情を伺ってみよう。「まだまだ売上はコロナ前の半分以下……まったく先が見えないね……」
こう語るのは、都内でキャバクラやガールズバーを複数店舗運営する会社の幹部スタッフAさん。
■2020年4月 1回目の緊急事態宣言の発出から1年半
Aさんは語る。
売上が一番悪化したのは最近の第5波の時期なんだけど、最初の緊急事態宣言下はヤバかった。
本当に繁華街から人が消えたよね。コロナに対しても未知な部分が多かったから街全体に恐怖感があった。■まず女の子が出勤しなくなった…
- ウチは20代の若い女の子が中心のキャバクラやガールズバーを運営しているから、働いている子も学生さんやOLのアルバイトが多い。
いわゆる本極(本業)でやってる子は少ないから、コロナに罹って親や学校に水商売がバレるのを嫌がるので 出勤が確保できなくなった。
そうなると自ずとお客さんも寄って来なくなるし、もう開店休業状態。さすがに第1波の頃は2週間くらい店を閉めたよ。当時は歌舞伎町のホストクラブでクラスターが発生したり、俺ら水商売が目の仇にされたよね。店を営業しているだけでインターネットで叩かれたりして大変だった。イタ電も多かったし(笑)
■コロナ禍に便乗して人気キャバ嬢を引き抜く店も…
- もちろん感染を拡大させないためには、店を休むべきだってわかっているんだけど……
長期間休業すると女の子が他の店に取られちゃうんだよ。
女の子も日銭が必要だから、“コロナ上等”でガンガン営業している店に移籍しちゃう。
「あの店は朝まで営業してる」「他が営業してないから客が入ってる」とかすぐ噂になるから金欠の女の子がワラワラ行っちゃううんだ。
悪賢い店なんてコロナ禍を利用して高額な保証給を出して、他店のナンバー入りキャバ嬢を引き抜いてたし……だからお客も来ないのに女の子を引き留めるために店は営業しなきゃならない。
世間の人たちは「なんで夜の奴らは営業を止めないんだ」って怒ってたけど、その裏にはこんな事情があったんだよ。
もうさ、東京都が「水商売は全面営業禁止」にしてくれたほうが楽だったよ。一斉に営業を禁止にしてもらって協力金をもらったほうが助かったよ。 ■お店からコロナウイルス感染者は?
店のスタッフから陽性者は出たかって?そりゃバンバン出ましたよ(笑)
ウチはキャバクラやガールズバーを複数運営してるので、女の子の在籍数もハンパないからね。
ホストクラブに出入りしてる女の子が感染して他の子に移しちゃったり、お客さんから移されたのもあったし……1回目の緊急事態宣言の頃は、保健所が感染ルートをしっかり追ってくれて、ウチら店側も真面目に協力してたよね、ある意味統制が取れてた。
今はどうかって?
今はもう保健所さんも感染ルートなんて聞いてこないし、こちらから水商売で働いてるって言わない限り何にも調べられないよ(笑)
知り合いのホストクラブなんて「感染しても絶対に店名は言うな」って命令してたし……店側が正直に「感染者が複数人出ました」なんて保健所に報告したら休業要請が出るし、お客さんにも女の子にも噂が広まって営業に支障が出るからね。
真面目な店が馬鹿を見るって皆気付いちゃった(笑)
■営業中の感染対策は?
- 感染対策は講じてます。検温、アルコール消毒、アクリル板の設置、マウスガードの着用……
だけどお酒が入る商売だからね、お客さんの加減調整は難しいよね。マスクを外して大声で騒ぐ人もいるし、女の子を連れてカラオケ屋にアフターに行くしさ……止められないよね。緊急事態宣言下の営業が厳しい時期に遊びに来てくれるお客さんはありがたかった。
会社員やホワイトカラーの人たちは一斉に消えたけど、何やってるのかわからない“無敵な人”が多かった(笑)
普段なら入店を断るような危ないお客も入れなきゃならないし……大変だったよ。
「もう俺は感染済みだから」ってマスクもしない人とかね(笑)ありがたい気持ちの反面怖かった。 ■出勤規制でお店を回す!
- 緊急事態宣言も今年4月の3回目あたりからは、夜の街の雰囲気もだいぶゆるくなったよね。
やっぱり東京オリンピックの開催がまずかったと思うよ。
「だってオリンピックやるんでしょ?」って皆思ってたんじゃないの。店もその頃になると、少ないお客さんながらも、女の子の出勤規制をしながら回す感じになったよね。
人気のある子やお客さんを呼べる1軍の子を中心に出勤させて、2軍の子の出勤や新人の採用を少なくして……
だって新人を出勤させてもフリーのお客なんて全然来ないから、待機させてるだけで高い時給が飛んでっちゃう。皮肉なことに、その頃(4月)から女の子の集まりが急によくなった。
どの店でも出勤規制をしてるから、稼げない女の子たちが増えたのが一因だろう。
「●●●で働いてたけど全然出勤できなくて~」なんて子が急増した。 ■第5波の影響 デルタ株ハンパない!
- 7月から8月頃の第5波はさらにヤバかった。デルタ株ハンパないって感じ。ウチのグループでもバンバン陽性者が出た。
男子スタッフも陽性になったし、ほぼ毎日女の子やお客さんなど関係者から陽性者が出てた。ウチの店で働いてた女の子で陽性になった子がいたんだけど……友達3人で一緒に働いていたから全員陽性になっちゃった。当然、最低2週間は出勤停止にするんだけど、そいつらは無症状だから平気で他店で働いてた(笑)夜の街は悪い意味で“コロナ慣れ”しちゃってる雰囲気だったね。
ウチは若いスタッフが多いから無症状感染者が一番怖い。もちろん発熱や咳の症状が出てるスタッフは休ませるし、お客さんの検温も徹底してやってたけど……もう管理ができる状況じゃなかったよね。
売上も9月が一番悪かった。お客が全然来ない。“無敵の人”ですら来ない(笑)
特に デカ箱のキャバクラは厳しかった。大人数のキャバ嬢とお客が入れ替わり立ち替わり密な空間で会話するわけだから、まともなお客は寄り付かないよね。逆にカウンター越しの接客をする小規模なガールズバーは売上が悪くなかった。
お客もデカ箱の店よりこじんまりした店のほうが安心できたのかもしれない。それでもウチのグループは極力休業しなかった。
「クラスターだけは勘弁してくれ」って毎日運を天に任せてたよ。余談だけど、オッパブやセクキャバ(セクシーキャバクラ)はきつかったみたいだね。
ほぼ一年くらいお店を閉めてるところも多かったし、感染リスクも高いから女の子も逃げちゃったり…… ■今後コロナウイルスの影響は?
これからもコロナとはお付き合いしていくことになるだろうね、インフルエンザみたいに……
だけどワクチンも普及してきたし、重症化しないんだったら怖がっててもしょうがないよね。お酒を飲んで女の子と楽しく話してもらう商売だからさ、怖がってたら仕事にならない。俺が言うのもアレだけど、第6波が確実に来るっていわれてるじゃん。
やっぱり感染ルートの調査はきちんとして欲しい。
どう考えてもキャバクラで感染したお客さんが冗談交じりで言ってたけど……家族や会社にバレたらヤバいから、保健所の聞き取りでは「外食は一切してません」って言ったら“感染ルート不明”で調査終了だったとか……
今後は真面目に申告した人や行政のルールを守っている店が馬鹿を見ないような対策を立てて欲しい。じゃないと同じことの繰り返しになっちゃう。■スタッフの採用状況
- コロナ禍で売上が激減して、店は経費の削減が急務になった。
キャバクラなどの水商売で大きな経費は家賃と人件費。
とはいえ、店を手放したり女の子をバッサリ減らすわけにはいかないから、男性スタッフの人件費を削減するしかない。
ウチは1店舗あたり3、4人は辞めてもらったり、社員からアルバイトに雇用形態を変えてもらった。女の子の応募もそうだけど、こんな状況にも関わらずスタッフ募集の応募は多かった。
皆コロナ禍で仕事を失ったり収入が減少したのだろう。
特に送迎ドライバーのアルバイト応募は急増した。第5波が落ち着いた今、やっとスタッフ募集の体制が整ってきている。
コロナ禍に応募してくれた人にメールを送ったりSNSで求人の告知を始めている……
この業界では、男性スタッフを削減した店が大半なので、これから年末にかけて募集枠も広がってくると思う。