ナイトワーク専門の賃貸不動産 営業マンが見た!キャバ・風俗・ホストの賃貸事情!

ここは都心の繁華街。とある雑居ビルでひっそりと営業するBAR

夜10時、いつものようにBARへと向かう。
朝まで眠らないこの街にあっては、まだまだ宵の口の時間だったが店にはそれなりに客が入っていた。
私は空いているカウンターに座り、いつものようにマスターに生ビールを一杯ご馳走して乾杯する。
そうしてしばらく雑談していると、マスターが視線を店の入口の方に移し「いらっしゃい」と声を掛けた。どうやら新しい客が来たようだ。

そこには韓流スターのようなイケメンが・・・彼の仕事は…?

振り返ると、そこにはスーツを着た若い男が立っていた。
髪は茶髪だが派手な印象はなく、中性的で整った顔立ちはどこか韓流の俳優を思わせるイケメン君だ。

などと思っていると、彼が“あっ”といった表情を浮かべ私に話しかけてきた。
「あの、僕のこと覚えてますか?」

ん? あいにく私の方には彼と会った記憶はまったくない・・・。
最近は歳のせいかすっかり酒が弱くなり、このBARでも泥酔してしまうこともしばしば・・・なのだが、そんな時に彼と隣合わせたのだろうか?

「あの時はかなり酔ってましたからね。ライターさんですよね? 珍しいなと思ったからよく覚えてますよ」

やはり泥酔中に隣り合ったのか・・・。

彼はマスターから最初のビールを受け取りながら言った。
「マスター、その後、部屋を探してる人はまだいませんか?」

“部屋を探す”それらの言葉が私の脳をノックする。
やがてその時の記憶がゆっくりと甦り、私は「あぁ!」と思わず声を上げた。

「やっと思い出してもらえました?」

彼はこちらの様子を見てにやりと笑いながらそう言って、こう続けた。

「前も言いましたが、お部屋探ししている人が居たら紹介して下さいね。 水商売や風俗業の方でも全然OKなんで…」

そうだ、この彼はキャバクラ嬢に風俗嬢、ホストや風俗店員などなど…この街を仕事場とする様々な職種の人々に住む部屋を提供する、賃貸不動産の営業マンだった。

キャバクラ・ホスト・風俗業種大歓迎!盛り場住民の「お部屋探し」


蘇った私の記憶によると、確かにこの店でマスターと三人で話しをした。
私が“この街をメインにネタを拾っているライター”であることを明かすと、彼が興味を持ち“誰か部屋を探してる人がいたら紹介して”という話になったのだ。

その時は泥酔していて彼の仕事に関心を頂くこともなかったが、この街の様々な人種に「ヤサ」を提供する仕事ってのは興味深い。
今日はこの“イケメン賃貸くん”に詳しく話を聞いてみよう。

──君が働いている不動産会社は、キャバ嬢やホスト、風俗嬢とかのナイトワークや風俗系が専門なの?

「いやいや、そんな事はなくて普通のお客さんも来ますよ。 “普通”なんて言うと、お水や風俗系のお客さんに怒られそうですけど(笑)」

──てっきりそうかと思ったよ。

「でも僕はそっち系がメインですけど。 ウチの社長が前に働いていた不動産屋が、ナイトワーク系のお客さんを積極的に扱って好調だっったらしくて・・・。 だから店(会社)もこの街にしたみたいです。 お店のホームページも一般のお客さん向けとは別に“ナイトワークや風俗で働いている人”向けのも作ってます」

──一般客プラス、そういった客層にも間口を大きく広げてるんだね。 しかし今はナイトワークや風俗向けの賃貸物件サイトなんてあるんだ、時代も変わったなぁ。

「今は『お水 不動産』とかのキーワードでググれば、そんなサイトがズラリと出てきますよ。 『キャバクラ・風俗・ホストの方!審査お任せ下さい!』みたいなキャッチをバンバン載せて・・・」

──しかし昔は水商売、ましてや風俗で働いている人は、なかなか審査が通らないイメージだったけど・・・。

「そうだったみたいですね、だから以前は部屋をいくつも借り上げて、審査が通らない人達に高い手数料を乗っけて“又貸し”する不動産業者とか居たりして・・・」

──そうそう、普通のところだと入居審査に通らなくて、結局そんな不動産屋から高い家賃で部屋を借りてる奴が居たよ。 今は状況が変わったの?

「以前の長い不景気で、賃貸マンションに空き部屋が目立つようになってからですね。 この街のような歓楽街の周辺マンションなんかでは特に、空き部屋にするぐらいだったら水商売でも風俗でも何でもいいから入れちゃおう、という感じの管理会社が増えたんですね。 もちろんすべての管理会社がそうなった訳ではなくて、一流企業の名前が入った賃貸マンションなんかは、今でも審査が厳しいですけど・・・」

──それでも以前に比べると、歓楽街の住民達も部屋を探しやすくなったんだね。 なんで彼らの部屋探しをメインに扱っているの?

「それは、賃貸不動産会社の給与体系が関係しているんです」

賃貸不動産会社の給与体系とは?ノルマを達成するために・・・。

賃貸不動産会社の給与体系が関係している?それはどういうことなのか。

──貸不動産会社の社員の給与体系ってどんな感じなの?

「まず基本給があって、決められた売上ノルマを超えると、その何パーセントが“歩合給”として加算されます」

基本給:月給20万円
仲介手数料の売上ノルマ:月間80万円
それを超えると超えた金額の20%が歩合給として基本給に加算される。
(例)売上100万円の場合→基本給20万円+20万円(歩合20%)=月収40万円
※宅建免許の資格手当あり(2万円)、別途交通費支給。

「という形です。金額やパーセンテージは会社によってそれぞれ違いますが、仕組みはどこもこんな感じだと思います」

──基本給にプラス歩合のシンプルなシステム。でもそれと水商売や風俗のお客さんをメインにしているのって何の関係があるの?

「それはですね、賃貸の不動産って“繁忙期と閑散期”がはっきり分かれてるからなんです。 例えば“2月3月”は、4月の新年度から東京にやってくる新入生や新社会人が一斉に部屋探しをするので、どの店もとにかく忙しくなります。 逆に、それが一段落した“4月5月6月”あたりになるとお客さんは来ないし物件も埋まっていて、とにかくヒマになっちゃうんです」

──それで?

「そんな状況を賃貸不動産屋の給与体系に当てはめると、2月3月の繁忙期はどんどんお客さんが来るので、売上ノルマなんてあっさりクリアして歩合給がドカンと取れるんですけど・・・、4月~6月の閑散期はノルマに届かなくなるんです。 それでノルマを埋めるためにどうすればいいかを考えると・・・」

──やっと話が読めてきた。

「分かってもらえました? 歓楽街って絶えず人が出入りしてるじゃないですか。キャバ嬢やホスト、風俗嬢にしても、みんな4月の新年度に合わせて来るわけじゃないんで・・・。 そのあたりで毎月うまくお客さんを拾ってノルマを埋めていく、みたいな」

──歓楽街にはある意味、季節感がないもんね。 季節を問わず仕事を求めてやって来て・・・去っていく人も多いけど。

「そうですね、でも僕がこの街のお客さんをメインにしてるのって、時期的なもの以外にも理由があるんですよ」

未経験歓迎の職種だが・・・「受け身」から一歩踏み込んで「攻め」の仕事に

──その理由って何だろ?

「賃貸不動産屋の営業って、基本的に“反響待ち”なんです。 不動産情報サイトや店のホームページからの電話やメール、店前の物件情報を見て来店、いずれにしてもお客さんの方から反響があって初めて仕事が始まる、逆に言うとお客さんからアクションがない限りは何も起こりません。 それで部屋が見つかったら契約となって、それで終わり。 リピーターなんてほとんどいません」

──確かにそうだよね。

「賃貸不動産の営業は、未経験でも誰だって出来る仕事なんですけど、ひとつの仕事が次の仕事につながらなくて・・・。 だから反響が減る時期になっちゃうと、給料もガクンと減って辞めちゃう人が多いんです」

──自分の経験を振り返っても、部屋探した時の不動産の営業マンなんて全く覚えてないもん。

「でしょ。でもそれに比べてナイトワーク系のお客さんは、審査も含めてこちらが親身になって部屋探しをして満足してもらえると、同じお店の人とか同業の人とかをを紹介してくれたりするんですよ。 そしてその人がまた別の人を紹介してくれたりして(笑)。 そんな中で仲良くしてもらえる人が増えてくると、今度は『この物件に空きが出たからどうですか?』みたいな感じで、こちらから提案して契約が取れるようになって来るんですよ」

──ただただ問合せを待つという「受け身」の仕事から、人脈を活かしてもう一歩踏み込んだ「攻め」の仕事も出来るようになったということだね。 そうして毎月ノルマをクリアして給料もドカンと入ってくると。

「いやいや、僕なんてまだまだですよ。でも収入は安定するようになりました」

──ぶっちゃけ月収はどのくらいなの?

「言うんですか(笑)。まぁでも片手(50万円)以上はもらってます」

──月収50万円以上!めっちゃいいじゃないか、畜生め!!

4畳半からタワマンまで、不動産営業マンが見たナイトワークのピラミッド


──逆にナイトワーク系の賃貸不動産の仕事で大変な事はない?

「う~ん大変なことですか、一口にナイトワーク系の人といっても、時給千円台で働くキャバクラの男性スタッフから、月給100万円を超えてる売れっ子ホストさん、格安キャバ嬢から高級クラブの女の子にママさん、それに風俗嬢と本当に様々で、当然それぞれが求めている物件には天と地の差があるし、審査の難易度もケースバイケースなんで、それに細かく対応していくのが大変ですかね・・・」

──まあ、夜の社会はピラミッド構造だからね。頂点と最底辺だと雲泥の差だから、それこそ4畳半のアパートからタワーマンションまで、色んなタイプの物件を把握しとかなきゃいけないということか。

「そうです、例えばホスト業界なんかはわかりやすいピラミッドですね」

──不動産屋さんからみたホストの世界ってどんな感じ?

「ホストのホームページとかホスト雑誌の広告に載ってる求人内容を見ると“高級マンション寮完備”とか書いてありますよね。 普通それを見ると“ワンルームのマンションに住めるのかな”って思う人がほとんどだと思うんですけど、実際はオンボロマンションの広めの部屋で何人もの男達で共同生活をする、いわゆる“タコ部屋”みたいなところだったりしてに・・・」

──ひどい・・・。

「しかも3万とか結構な“寮費”を取られる、みたいな。 まあ、そのタコ部屋も僕が仲介してたりするんですが(笑)」

──ちゃっかりしてるな~、しかし厳しい世界だ・・・。

「そうしてほとんどの人が挫折するんですけど、そんな中で売上を作ってそこから抜け出す強者がいるんですよね。 そんな人がまたウチで部屋を借りに来てくれるという(笑)」

──祝!タコ部屋脱出!!

「それで収入が上がるにしたがって部屋もワンルームから2LDK、3LDKとドンドン広くなっていって・・・、気付けば自分のバースデイパーティーで“一晩ウン千万円”を集めるようになって、タワーマンションのゴージャスな部屋にお引越し、みたいな」

──おお、男のサクセスストーリーだなあ。

「まあ、そんな人はほんの一握りですけどね、だからこそのピラミッド構造なんですが、そうやって成功している人も実際にいますからね」

──他に苦労した事はある?

「風俗してる女の子に多いんですが、給料の“日払いOK”なお店で働いてても、毎日それをホストクラブに使って、引越しをしたくても初期費用が用意できない、みたいな事は多々ありますね。 今は『敷金0円』『礼金0円』みたいな初期費用を押さえた物件も多いし、分割払いやクレジット払いも出来るんですが・・・。 それにも審査や限度額の問題があったりするんで、すんなり話が進まない時はありますね」

──まあ、業界的にぶっ飛んでる子も多いから、なかなか一筋縄ではいかないだろうね。

ナイト専門の賃貸不動産業・・・この仕事ならではの“役得”は?

このようにナイト業界の人脈を仕事に繋げているイケメン賃貸くん。
その人脈の中には、きっと可愛いキャバ嬢や風俗嬢もたくさんいるだろう・・・、いや、いるに決まってる。

──お客さんの中には、可愛いキャバ嬢とか風俗嬢なんかもいるわけでしょ? 仕事絡みで何か“浮いた”話とかエピソードはないの?

「何かと思ったらそんな話ですか・・・(笑)。 まあ、あると言えばありますけど」

──やっぱりあるんだー!

「部屋探しってお客さんから希望の家賃や場所、ペットの有無とか色々な条件を聞いて、それに見合った物件をピックアップしていくじゃないですか。 その過程で色々な話をしたり一緒に内見に行ったりしていくうちに、同じ目標に向かって共に頑張ってる、そんな仲間意識が生まれてくるんですよ」 

──分かる分かる。

「そしてやっと物件が決まった時には、共に戦い抜いた戦友みたいな感じで距離がぐっと縮まるんですよね」

──へぇ~そんな事あるんだ。

「そのおかげじゃないですけど、今の彼女は“○○○○○”の子ですよ」

──ん?“○○○○○”と言えばこの街で一、二を争う高級キャバクラじゃないか!

「他にも、今の彼女とは別のキャバ嬢ですけど、マンションの内見に行ったらそこで盛り上がっちゃって・・・おっと、これ以上は社外秘ですね、ライターさんにどっかで暴露されたらマズいですから(笑)」

──おいおい・・・そりゃあ何て楽しそうな仕事なんだよ!オレもやってみようかな?

「ウチの面接受けてみます? オヤジ好きのキャバ嬢もいますよ(笑)」

この後イケメン賃貸くんは、明日も午前中に新しい顧客とアポが入っているとのこで引き上げていった。

「部屋探している人が居たら、紹介して下さいね!」

こう言い残して・・・。

そして気が付くと時刻は午前1時・・・。

この街が丸ごと再開発でもされない限り・・・いやそんな事は決して実現しないだろうから、イケメン賃貸君の部屋探しの商いはこれからも繁盛するのだろう・・・。

(ライター:JSR)