■不動産営業職、ウン千万円の取引でいくら稼げるのか?
ビシッとしたダブルのスーツ姿でインタビューに応じてくれたのは、根本さん(43歳)。
ダンディーな雰囲気の落ち着いた中年男性。
その袖口からチラリと覗く高級腕時計からも、お金持ちの匂いがプンプンと漂ってくる。
そんな根本さんの職業は、“不動産屋”さん。
「不動産屋といっても、私は“賃貸”ではなくて“売買”の営業です」
不動産の売買といったら、1契約が“ウン千万円”の高額な取引。
しかもガチガチの高額フルコミッションで超稼げる業界ではないか……
■不動産売買の営業 歩合で稼ぐ!
――不動産の売買というと、個人用の戸建て住宅やマンションの売買がメインでしょうか?
「そうですが、私の場合は居住用の住宅よりも“投資用物件”が多いです」
――投資用というと、購入した物件を賃貸に出して家賃収入を得るような?
「そうです。一棟物の賃貸物件を一括購入したりとか……ですね」
――不動産売買の営業職には、高額な歩合制というイメージがありますが……
「いや、ウチの会社はフルコミッション(完全歩合制)ではないので、それほど歩合率はよくないです」
――フルコミッションではなくて、固定給与が設定されている?
「そうです、月給20万円ですけど(笑)これでも私は“経験者枠でスカウト”されたから高い方ですけど、未経験の新人スタッフは基本給15万円ですから」
――歩合率はどのくらいですか?
「歩合は20%です。これも新人は15%スタートですからね。成績次第では10%に落とされたり……」
――20%の歩合は不動産業界では一般的ですか?
「いや、会社によって千差万別です。フルコミッションで、30%~50%の歩合を出している会社もあります。ただそのような高率歩合の会社は、一般社員ではなく“業務委託契約”で、福利厚生面が一切ない契約が多いですね」
■根本さんの働く不動産会社の募集要項・給与例
【資格】
高卒以上・未経験者も歓迎
※宅地建物取引士の有資格者は月3万円の手当を支給
【勤務時間】
10時~19時(実働8時間)
【休日】
週休2日制(水曜日と他1日)
【仕事内容】
分譲マンションの販売業務。電話営業、飛び込み営業、およびモデルルームでの営業など。チラシのポスティング業務もあり。
※月1件の成約ノルマあり
【給料】
月給:基本給20万円+歩合給
※歩合率…会社に入る仲介手数料の20%
不動産業の仲介手数料の上限は宅地建物取引業法により下記のように定められている。
仲介手数料=売買金額×3%+6万円
【月収例】
マンションの売買価格が、5千万円の場合
5千万円×3%+6万円→156万円(会社に入る仲介手数料)
歩合給はその金額の20%→31万2,000円
仮に、この契約を2本成立させた場合
基本給20万円+62万4,000円(歩合31万2,000円×2本)
→月給82万4,000円
――月収80万円以上ですか、やっぱり高収入ですね。
「でもこれは、“5千万の物件契約を月に2本取れたら”という仮の話ですからね(笑)毎月5千の契約を2本取り続けられたカリスマ営業ですよ」
――毎月1億円の売上ですからね。
「でも、“両手取引”にしたら1億円は夢ではない数字ですけど……」
■不動産営業のおいしい契約 両手取引とは?
――両手取引?
「普通の取引だと、不動産会社は物件を売りたい人か買いたい人のどちらかの仲介をするので、仲介手数料もどちらか一方からしか取れません」
――はい。
「それを“片手取引”と言ったりしますが、両手取引の場合はひとつの不動産会社が、売り主と買い主両方の仲介をして、売り主と買い主の双方から仲介手数料をもらうんです」
――仲介手数料が倍に?
「そういうことです」
1つの物件売買がおこなわれる際、不動産会社が不動産を売りたい売り主と買いたい買い主両方の仲介をおこなって、売り主と買い主の両方から仲介手数料を得る取引のこと。
1つの物件の取引で、2倍の仲介手数料を得ることが可能になる。
一方、片手取引とは、売り主と買い主にそれぞれ別の仲介業者が付いていて、売買が成立すれば、それぞれの不動産会社が仲介手数料を報酬として受け取る取引のこと。
――ということは、5千万円の物件、1件の契約で300万以上の仲介手数料が入ると?
「そうです、おいしい取引ですね(笑)」
――そして当然歩合給も倍になる……
「でもそのためには、サービス残業や休日出勤なんて普通ですからね」
――やっぱり厳しい世界なんですね。
「どの業界も同じだと思いますが、この商売も信頼関係が大切です。例えば、一度家を買ってくれたお客さんと信頼関係が築けると、今度は投資用のマンションを買ってくれたり、その家を売るときに声をかけてくれたり……」
――おっ!両手取引のチャンス到来ですね(笑)
「またお客さんが物件を購入したい知り合いのお客さんを紹介してくれたり……長くお付き合いが続くことが多いです」
――お金持ちがお金持ちを紹介してくれる。
「お客さんの信頼を得られれば、自ずと売上も安定して、毎月のノルマもクリアできるようになります」
■まだある、おいしい仕事 それって闇営業?
――月収は80万円以上をキープしているんですか?
「歩合の支給は3ヵ月ごとなので、月収は波がありますが年1本(1千万円)はもらってます。他にも副収入があったりとかね……」
――副収入?
「あまり大きい声では言えないけど……例えば、お客さんにリフォーム業者や引越し業者を紹介して個人的にキックバックをもらったり……」
――なるほど、闇営業ですね(笑)
「そうそう(笑)でもこれが年間ウン百万になるからやめられない」
――闇営業を含めたら、年収1千万どころじゃない!おいしい仕事ですね……
「とはいえ、“月1件のノルマ”を達成できない社員も多いんですよ」
――ノルマが達成できなかったらどうなるんですか?
「まぁ、上司に叱責されますね(笑)歩合率も10%に落とされたり……それでもダメならさらに詰められて歩合もカット……それでもダメったら……“コレ”ですねー(首を手刀で切る仕草)」
――クビですか!?
「私は今の会社に入って5年目ですが、その間に何十人の社員が散っていきました……」
■不動産営業 どのような人に向いているのか?
――その条件下で、一体どのような人が成功するのでしょうか?
「月並みな話しですが、結局まじめにコツコツ仕事ができる人が生き残ります。いくら高額な不動産の売買営業といっても、月にたった1件の契約ノルマですから。よい物件を見つけて買いたいお客さんにアプローチするだけです。今週は顧客開拓、来週は物件案内、その次はクロージング……など自分で毎月のスケジュールを設定して、自己管理ができる人は自然と結果がともなってきます」
――そうはいっても難しそうですね……
「しかし、毎月2~3本の契約を取り続けて稼ぎまくっている強者もいますからね。チャレンジする価値は大いにある業界だと思います」