風俗業界への転職。編集プロからデリヘルの男性スタッフへ![ライターはBARにいる]

風俗業界への転職。編集プロからデリヘルの男性スタッフへ![ライターはBARにいる]

ここは都心の繁華街。とある雑居ビルで営業するBAR

深夜2時にもかかわらずBARは混みあっていた。
珍しいこともあるもんだ。
いつもの常連客に混じって、一見らしき客もちらほら見受けられる。
カウンターの中でせっせと酒を作るマスターもホクホク顔だ。

「おっ、久しぶり!生きてたかい?」
カウンターに1席空いているのを見つけて座った私に、マスターがそう言って声を掛けてきた。

■10年ぶりに再会・・・。この男の仕事は?

「お久しぶりです」
その後しばらくグラスを傾けていると、ふいに後ろから声が掛かった。
振り返ると、そこには歳の頃30代後半と思われる一人の男性が立っていた。

えっと誰だったっけ・・・。
確かに見覚えはあるのだが、どうしても誰だかが分からない。
私は『覚えてますよ~』といった顔つきで微笑みながら軽い会釈をした。

そんな様子を見て彼は苦笑しながら言った。
「覚えてないですか? まあ、直接仕事で絡んだわけじゃないから仕方ないか。 ほら、昔よく“○○○○”って編プロに出入りしてたでしょ?」

ああ、その編集プロダクションの名前でピンときた。
確かに私は10年余り前、その編プロからたまにライターの仕事を貰っていたのだが、彼は、当時その編プロに所属していた若手のスタッフだった。

私が「ああ!」と声を上げると、彼は笑いながら言った。
「やっと思い出してもらえましたか」

そして、私の姿を改めて眺めながら続けて言った
「まだライター稼業を続けてるんですか?」

「今だに何とか続けてるよ」

「へぇ、すごいなあ。○○○○(彼が所属していた編プロ)なんて、すっかり縮小しちゃって、今じゃ社長一人でやってるって話ですよ」

確かに、その編プロの名前はここ数年、とんと聞かなくなった。
ということは、彼は現在その編プロには所属していないのか?

「それじゃあ君は今、何の仕事をしてるの?」

思わずそう尋ねると、彼は私の耳元に顔を近づけて小声で言った。
「実は、編集からは足を洗って、今は“デリヘル”で働いてるんですよ」

■編集プロダクションから、風俗業界への転職!

「えっ、デリヘル? 風俗店で働いてるの?」

編集プロダクション勤務から風俗店への転職とは…。
この10年間で、彼の人生はどのように変化していったのだろうか。

今宵はこの彼(以下Y君)の話を肴に、酒を飲むことにしよう。

■なぜ“編プロ”の仕事を辞めたのか?

編集プロダクションからデリヘルへの転職、そのきっかけは何だったのか。
すでにY君からは、働いていた編プロが業務縮小したという話を聞いているが、編プロの仕事を辞めることになった顛末から聞いてみる。

――編プロを辞めたのは、リストラされた感じなの?

――そうですね。最近ではご存知の通りインターネット全盛で、本や雑誌は軒並み休刊や廃刊状態。それで年々仕事が減っちゃって5年ぐらい前に社長から『今後、君には外注(フリー契約)でライターの仕事を発注する』と言われたんですよ。 でも、そんな仕事を僕にくれる訳もないしただのリストラですよ。

これはY君の言う通りだろう。編プロの社長が仕事が減って従業員をリストラするために言い逃れをしただけだ
それにしても身につまされる話である。
私とて、今では食っていくためには仕事なんて選んではいられない。

私の遠い記憶では、Y君は編集の仕事にかなりの情熱を持って取り組んでいたはずだ。
得意分野はスポーツ系。サッカーの知識たるや目を見張るものがあった。
この業界に未練はなかったのだろうか?

――その編プロは無理だとしても、別の会社に移って編集の仕事を続けるっていう手もあったんじゃない?

――まあ、実際に編集の仕事についてはやりがいを感じていましたけど、待遇や労働環境とか、そういうところに嫌気が差してきちゃったんですよ。

まあ、言わんとしていることは非常に分かるのだが・・・。

■“安月給”に“長時間労働”の過酷な職場。

――僕の場合、給料は額面で月給15万円。手取りだと12万円ちょっと。 それで月に10日近くは徹夜をして、休日といえば月に2、3日でしたから…。 一度計算をしてみたら、何と1日の平均労働時間が18時間を超えててましたよ。 時給に換算したら一体いくらだよって話ですよ。 そりゃあ大手出版社の編集部だったらもっと給料もいいんでしょうけど、その辺の編プロに移ったところで似たり寄ったりですからね。

――分かった分かった、皆まで言うな!コッチも切なくなってくるよ。

――だからリストラされた時、この業界はもういいかなって考えちゃったんですよ。

その気持ち、今も業界の片隅に身を置く私にもよ~くわかる。
クリエイティブな仕事をしたい!
マスコミ業界で働きたい!
有名ライターになりたい!
今でも夢や希望を持って編集業界に飛び込んでくる若者は多い。
しかし悪質な編プロの経営者などは、その夢をエサに過酷な条件を突きつけてくる。
そしてその若者の多くは、Y君のような悲惨な現実を目の当たりにして、散っていくのだ。

■転職のヒントは取材先にあった!

こうして、編プロから足を洗ったY君。
しかし、次に選んだのは何故に風俗店の仕事だったんだろうか?

例えば、長時間労働に嫌気が差したのであれば、次は9時~5時で土日休み、みたいな“カタギ”の仕事を探しそうなものだが・・・。

――転職先に何故デリヘルを選んだの? 風俗店も勤務時間が朝から夜まで長いイメージなんだけど…。

――嫌気が差したのは勤務時間の長さというより、その時間に見合った給料が貰えなかったところなんですよ! 何故デリヘルだったかというと、編プロ時代にアダルト雑誌の風俗コラムの連載を担当していて、取材で風俗店を回っていた時に、ある店長さんと話が盛り上がって風俗店の男性スタッフの仕事について色々教えてもらったんですよ。

――取材先が風俗店だったんだ。

――お客さんへの対応や、女性キャストの管理など、業務は多岐に渡りハードだし、勤務時間も結構長くて体力勝負な部分もあるけど、とにかく稼げる仕事だと…。その店長の給料額も聞いたんですけど、“月収200万円オーバー”でしたよ。

――そりゃスゴイ!確かに風俗店の仕事は高収入だよね。
そう言うとY君は頷きながら言った。

――ちなみにその取材先っていうのが、今働いてるデリヘルのグループなんですよ。
そう言って彼が口にしたグループ名は、
風俗業界では知らぬ者のいない大手デリヘルグループの名前だった。

――なるほど、編プロを辞めて、そこの店長さんに連絡して入社したんだ。
すると、Y君は首を振りながら言った。

――いや・・・、今の店で働く前にワンクッション挟んでるんですよ。

■プライドが邪魔をして人に頼らず転職先を探すことに…。

――ワンクッション? どういうこと?

――今の店で働く前に別の店で働いてたんです。

――何で?すんなりそこに行かなかったの?
そう言うと、Y君は頭を掻きながら続けた。

――いや~、プライドが邪魔したんですよね。

――プライド?

――編プロの社員って、取材の時には『週刊○○です』とか掲載する有名な雑誌の名前を口にするじゃないですか。 それもあって自分がマスコミの一員みたいに勘違いしちゃっていたんですよね(笑)。

――わかるわー、オレも昔は“ジャーナリスト”気取りで肩で風切って歩いてたよ、黒歴史だわ(笑)。

――そんなプライドがあるから、取材先に『実は編プロをクビになりまして、つきましてはお仕事を・・・』なんて連絡するのが恥ずかしくて出来なかったんですよね…。

まぁ気持ちはわからんでもないが・・・。話の先を促すと彼は言った。
――それに、その頃は風俗業界の事もよく分かってなかったんで、どこで働いても同じようなもんだろと思いながら高収入求人サイトを見て、あるデリヘルに応募したんですよ。編プロと違って風俗業界は人手不足なのか、“即採用”でした。

■そして風俗業界に転職、しかし・・・。

こうしてY君は、風俗業界にその一歩を踏み出した。

――で、どうだったの?初めて経験した風俗店の仕事は?
と尋ねると、彼は顔をしかめながら言った。

「それが・・、面接では月給25万円、プラス店の売上に応じて賞与を支給。という条件だったんですけど、そのお店はお客さんが全然入ってなくて…。結局、賞与は一度ももらえず終い。また、勤務時間は1日12時間のシフト制、ということだったんですが、人手不足で、実際には店に泊まったりして、1日17~18時間労働はザラでした。しかも休みは月に3、4日という有様で…。

――おいおい、それってどっかの業界の話と似てなくない?
私がそう言って苦笑すると、Y君はため息をつきながら言った。

――そうなんです、編プロと一緒です。 そんな状態だから男子スタッフの入れ替わりがとにかく早い! 新人の男子スタッフが入ってきても、すぐに別の誰かが辞めちゃうから残っている人間の仕事量はいつまで経っても変わらなんですよ。

――完全に悪循環。そんなブラックな店すぐに辞めちゃえばいいのに!

――そうなんですけど、編プロ時代の悪いクセで逆境に耐えるというか、キツイ仕事にも慣れちゃって結局続けちゃうんですよね、“ドM体質”ですね。

■そこは“ブラック”風俗店だった・・・!?

――そんなんじゃ、ブラック企業にうってつけの人材じゃん!
そう告げるとY君は俯きながら言った。

――それは自分でも分かってるんですけどね。でも結局その店で1年以上働いちゃいました。その間昇給や昇格も一切ナシで…。

――辛い環境の中で黙って仕事をこなすY君の姿を見て、評価するどころか逆に『コイツは給料を上げなくても働くよ』ぐらいに思われてたんだよ、ひどい店だなぁ。

――全然お客さんが入ってなかったんで給料が上がらないのも仕方ないか、と思ってたんですが…。

これでは、“ブラック風俗店”の思うツボである。

■救いの神が登場。大手デリヘルグループへ転職!

こうして、ブラック風俗店の餌食となってしまったY君だったが…。

――でも、そんな調子でよく店を辞める決断が出来たよね。何か契機があったの?

――自分で決断したというか・・・、電話が来たんですよ、以前取材で盛り上がった例の店長から…。

――おっ、ここで運命のテレフォン!

――『またウチの店取材してよ』と、まだ僕が編プロで仕事をしてると思っていた店長は、お店の取材を依頼する為に電話をしてきたんですけど。今の自分の境遇を正直に話してみたら、会って話そうということになって…。

――それで?

――そこで給料や勤務時間、待遇なんかを話したら、『そんな店は今すぐ辞めて、ウチのグループに来いよ』と言ってくれて…。

――そりゃあ心強い。やっぱり最初からその店長の店に行けば良かったんだよ。

――そんな後押しの声もあって、やっとその店を辞める決心が出来たんですよ。 その店長、今は出世して本社グループの幹部になってます。

■転職したデリヘルグループの給料や待遇は?

こうした“運命の出会い”もあって、Y君は何とかブラック風俗店から脱出し、大手デリヘルグループへの転職を果たした。

――新しいお店に移って、給料や待遇はどのくらい変わったの?

するとY君は、転職時に示された給料を始めとする募集条件について説明してくれた。

給料:月給30万円スタート。プラス売上に応じて歩合給あり。
勤務時間:1日12時間のシフト制(残業なし)※休憩3時間
休日:週休2日制
※社会保険(雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険)完備
※昇給・昇格随時

――これはブラック風俗店とは比べものにならないぐらいの高待遇じゃん! 実際に働いてみても、その条件通りだったの?

――ええ、前の店とは違って求人内容に嘘はありませんでした。 入店して半年で役職が付いて給料アップ、3年たった今では、“幹部候補”に昇格して、月給は50万円以上貰ってます。

――それは大出世じゃん!回り道もしたけど結果的には大成功の転職だったね。

Y君とはこの後、転職の話もそこそこに朝まで編プロ時代の思い出話で盛り上がった。

辛かった時代も、時が経てば笑い話になるものだ。
が、それも今の仕事が充実しているから出来ることだろう。
この日のように朝まで飲めるのも、Y君のお店が“週休二日制”だからである。

もちろん大手風俗店グループのすべてが高待遇なわけではないだろうし、小規模店でも働き甲斐のあるお店は多いと思う。
いずれにせよ、同じ仕事をするのであれば少しでも条件や待遇のいい店で働く方がいいに決まっている。
私のように、才能の乏しい凡人達の武器は“時間”しかないのだから・・・。

幸いなことに、今の時代は男性向け高収入サイトに数多の求人募集が掲載されている時代である。
そこには、多くのお店の求人要項が詳細に記載されている。そこで情報収集をして吟味し、面接では納得いくまで条件を確認する。
そんな風にしっかりお店選びをした方がいいだろう。

「今日は僕が払いますよ。久々の再会ということで・・・」
『お!ラッキー』と思っているのを気取られないようにしている私をよそに、
Y君は当然のように財布を出すと、マスターに声を掛けた。

そして帰り際に私の肩に手を置いて言った。
「今度ウチのお店を取材して下さいよ(笑)」

なかなか抜け目のない男である。