借金300万から年収900万へ逆転!風俗店勤務の男性【夜の仕事人インタビュー】

風俗店勤務 川島氏の場合

風俗店勤務 川島氏の場合 高収入求人ドカント キレイに刈り上げた七三分け、今時の細身のスーツを身にまとった姿は不動産屋の営業スタッフのよう。

知人の紹介で話を聞かせてもらうこととなった、川島秀人(仮名)氏、34歳

面と向かうと立ち上がり、身支度を整えようと体にフィットし過ぎたジャケットのボタンをしめる。

「最近太っちゃったんですよ、仕事が楽になったからかな」 と笑う。笑うと急に子供っぽい顔になる。

──えっ、お仕事は楽なんですか?
「いやいや(笑)全然楽じゃないです。むしろ大変です。ただ前よりは肉体的な負担は少なくなりました。店に入ったばかりの頃は、ひたすら掃除に階段の昇り降り、店舗間を走り回ったりずっと筋肉痛でした。しかもバリバリの長時間労働でしたから。今は従業員や女の子の管理がメインなので、どちらかというと心労が多いですね……だからどうしても仕事終わりに一杯飲んじゃう(笑)」

川島さんは現在、横浜にある某店舗型ヘルスの従業員である。
店長職に就いている。

──「店長」はお店の責任者、一番偉いポジションですね?
「いやいや、店長なんて名ばかりです。いち店舗の従業員のリーダー的役割です。売上管理からシフトの調整を担当してます。ウチはグループ店ですから、もちろんオーナーや何店舗かを統括する上司もいます。完全な中間管理職です」

──働いてどのくらいで店長に?
「この会社に入って5年目ですけど、店長になったのは3年過ぎた頃だったかな……ウチのグループでは遅い出世です(笑) できる奴は2年くらいで店長になりますから。自分は仕事を覚えるのが遅いので……」

川島さんはそうつぶやくと昔話を語ってくれた。

「あー底辺だなぁ」って真剣に思いましたね。

「あー底辺だなぁ」って真剣に思いましたね。 高収入求人ドカント川島さんは岩手県の某工業高校を卒業後、上京する。
西東京市の激安アパートに居を構え、夢の東京生活をスタートした。
とはいえ手持ちの現金は少ない。居酒屋の厨房、食品のライン工、飲み屋のティッシュ配り……フリーターとして昼夜を問わず数々のアルバイトをかけ持ちして食いつなぐ日々。

「誰も知り合いがいなかったから、必死でしたね」
その後、アルバイト先で知り合った友人と中野区で同居を始める。
派遣でアルバイトを始めた。
その頃TVでは派遣会社のCMが常に流れていた。

さしたる資格や経験を持たない川島さんが選べた仕事は、土方仕事引越し屋倉庫作業など、いわゆる肉体労働系の仕事である。

なかでもピッキングといわれる倉庫のアルバイトはきつかった。
仕事内容は、荷物の仕分けや詰め込みだけなのだが、ベルトコンベアから荷物がガンガン流れてくる。取り損ねると怒られるので必死に作業をする。

時給1,000円9時間労働立ちっぱなしで運びっぱなし。15分休憩が3回。ヘトヘトになっても一日の収入は日給1万にもならない。しかも日雇いのアルバイトには交通費すら支給されない
夜勤でもフル回転で仕事をしても、手取りは17~18万円程度。家賃と食費でほとんどは消えていく。

あー、底辺だなぁ、田舎帰ろうかなって真剣に思いました」

その頃、同居していた友人は、キャバクラで働き始める。いわゆるボーイの仕事である。
川島さんが朝から晩まで仕事をして部屋に帰る頃に友人は出勤をする。

「そいつとは結構一緒にいたからわかるんでよ、こいつ稼いでるなって」
夜の世界で働く友人はボーイとはいえ、日に日に生活が変わってくる。
ワイシャツ、ジャケット、ネクタイ、時計にピアス……洋服や靴は増え、見たことのない装飾品が家に増えていく。
お店の先輩のおごりで勉強と称してキャバクラにも行っている。

「やっぱり水商売って儲かるんだなって思いました。もちろんボーイの仕事もキツいと思いますよ。だけど自分は朝9時から夜6時まで立ちっぱなしで荷物運んで、月給18万円ですよ。3ヵ月くらいでソイツは月給28万円とかもらってるんです。夕方5時から深夜1時まで働いて、俺と労働時間変わらないのに!」

友人から「一緒に働こう」と誘われていたが、キャバクラに行ったことがなかった川島さん、酔客への対応や女の子と一緒に働くイメージが湧かず、その世界には踏み込めなかった。

「ソイツが『デリヘルだったら大丈夫じゃね?』って言ったんです」

友人曰く、デリヘルは基本的にお客さんと直接会わない。また、女の子とのカラミも店舗型よりは少ない。だからお前にもできるだろう……と。
そして友人の働くキャバクラ関係者のツテで、デリヘルの経営者を紹介してもらった。
その店、新宿のデリヘルで川島さんの風俗店勤務はスタートする。25歳だった。

デリヘルで垣間見た社会…。

──初めての風俗店はどのような印象でしたか?
「そこは有名店ではなかったけど、割とデカい規模の店でしたね。男子(従業員)も17、18人近くいたし、マンションに事務所電話受付部屋女子待機部屋とかが5、6部屋あって、店名も30以上あった。働いてる女の子は、ほとんど自分より年上でした、いわゆる人妻系。まぁ、大きな声ではいえないけど、ちょっと怪しげな雰囲気でしたね(笑)」

──デリヘルの仕事内容を教えてください?
「基本的には電話応対が主な仕事。自宅への派遣はしてなくて、ホテル出張メインで回してたから、女の子の送り(送迎)も少なかったので割と楽でした。いや、ピッキングと比べたら天国でしたよ。これぞ軽作業みたいな(笑) 給料も日払いでもらえたし。大変だったのは労働時間が長いことだけ。昼から翌朝までの営業だったので12時間労働なんて普通でしたから」

──お給料はどのくらいもらえますか?
半年くらいでそこそこ電話応対がサマになってくると給料も上がります、月給30万円とか。それ以降は3ヵ月ごとに昇給する感じです」

──生活は全然楽になりますね。
「いや(笑)そうなると遊びを覚えちゃうですよ……悪い仲間、店で働いてる先輩たちがイケない人ばかりで……毎日飲みに行ってましたね、キャバクラとかガールズバーとか夜遊びを覚えちゃって。賭け事とかも……日払いをその日に全額使う生活をしてました」

──飲む、打つ、買う、ですね。
「そうです(笑)ギャンブル好きなオッサンも多かったから、ソッチにも結構突っ込みました。競馬、競艇、パチンコ、パチスロ……なかでもパチスロにドはまりしちゃって、暇さえあればスロ通い」

当然、そうなると持ち金では追い付かなくなる。
川島さんは消費者金融サラ金から借金をしてしまう。

闇スロ(非合法に営業をしているスロット店)にも通ってました、絶対勝てないのに」

前職より倍以上も稼いでいるはずなのに、貯金どころか借金が増えていく。28歳だった。
借金は300万円にふくれ上がり、月々の返済額も10万円を超えていた……

借金、そして決断。

借金、そして決断。 高収入求人ドカント「とにかくギャンブルは止めようと固く誓うんだけど仕事終わりに誘われると、あの興奮がブリ返して打っちゃう

──中毒的な感じですね……
「あーこりゃヤバイわって思うんですよ、いつも朝方に……もう家賃の支払いまで滞って、大家からアパートを『更新しません』みたいな書面が届いて…。こりゃもう2ヵ月後には住む家がなくなるって」

──どんづまりな状況ですね……
「本当に失礼な話なんですけど……そのデリヘルの先輩スタッフで『村ちゃん』ってオッサンがいて、飲み仲間だったから自分の事情も知ってて、『ウチに来てもいいよ』って言ってくれたんです。でもその家が超汚い(笑)ゴミ屋敷一歩手前ってか……多分、当時40歳位だったと思うんですけど、ずっと風俗一筋で働いてきた人で、空いた時間があれば酒飲んでスロットばかりしてましたね……もちろん独身で。村ちゃんも自分と一緒で借金まみれその日暮らし。それを見ていたら、ここで生活を変えないと俺もこんな風になってしまう……」

──村ちゃんには失礼ですけど、転機になったと。
「ホント失礼千万です」

川島さんは新宿のデリヘルを辞め生活を立て直す決意をした。

この店なら「リスタート」できるかも……

──再び仕事探しを始めましたか?
「『ドカント』を見ました(笑) まずは寮がある求人を探しましたね。 とにかく借金生活から脱出したかったので『寮あり』が最低条件でした。もちろん風俗業で探しました、やっぱ収入がデカいんで」

そして川島さんは現在働いている店舗型ヘルスにたどり着く。

──イメージ通りのお店でしたか?
「こんないい方は変ですが、面接の時は普通の会社みたいでびっくりしました。 普通のテナントビルに事務所を構えていて、受付には女の子が座っていて、男子スタッフもパリッとしたスーツにネクタイで……ヤベーなこりゃって」

──俺の来るトコじゃないぞと(笑)
「でもここでなら自分の生活を立て直せるかもって思いましたね」

──この環境に馴染めたら自分も変われると。
「そうですね。給料は、1ヵ月目は日給8,000円の使用期間で、寮費は2万円。週休1日で日払いは5千円まで。皆勤手当、通し手当、交通費支給。2ヵ月目以降は月給25万円、3ヵ月ごとに給与査定あり……という条件。 スタートは厳しい条件ですが、風俗店の給料は半年頑張ればすぐ上がるって知っていたので気にしなかったです」

──実際働いてみてどうでした?
「前に働いていたデリヘルは、マンションの一室で顔の見えない相手とずっと電話してる仕事だったから、男子従業員も何となく裏稼業みたいな雰囲気があったというか……」

──店舗型は違いましたか?
「自分の見解では、店舗型のお店は働いているスタッフも明るい人が多いですね、普通の会社員と見分けがつかない。見た目の悪い自分が言うのもなんですけど(笑) お客さんや女の子と直接面と向かって応対しますからね、当然身なりにも気を使わなければいけないし」

──受付がジャージ姿ではマズイですからね。
「前のデリヘルはジャージ勤務OKでした(笑) そのままジャージでキャバクラに行くと、女の子から『オレオレの人?』なんて言われて……普通の社会人にはわからない感覚だと思いますけど、自分は今、スーツを着て仕事できるのがうれしいんですよ。まぁ、今でも『オレオレの人?』って言われますけど(笑)」

──今のお給料はどのくらいですか?
月給60万~65万円程です。店長クラスになると売上歩合がつくので、その月の売上によって変動します。あとは年2回賞与が支給されます。
これがだいたい月給よりちょい高い金額です」

──年収にすると結構な金ですね?
年収800万~900万円くらいです。すごい?いやまだまだです、もっと稼いでる奴いるんで(笑)」

とにかく「金を稼ぐ」と強く思うこと。

──順調にステップアップするコツは?
「やはり風俗業界はお金は稼げるんですけど仕事がきついので辞めてく奴が多いんです。ぶっちゃけ人間関係も複雑だったりするんで(笑) 女子からイジメられたりもしますから!だからまずは辞めないこと。覚悟を決めて3年勤めれば誰でも出世できます

──とにかく辞めるなと(笑)
「3年の間に上も下もポロポロと辞めてく人が多いので、残った者勝ち(笑)」

──借金は返済できましたか?
「割とすぐ返せました、ハンパない利息でしたけど。ギャンブルもキレイさっぱり辞めました。そんなことしている時間がないってのもありますけど」

──働くお店選びにコツはありますか?
「こういったら『ドカント』的にアレですけど……求人広告をデカく出してる店を選ぶのが良いですよ(笑) ぶっちゃけお金があるってことですから。それだけ男子従業員に真剣に向き合ってるってことだと思いますし」

──とにかくデカい求人広告に行けと(笑)
「でも店選びに成功したところで稼げるとは限らないです。とにかく金を稼ぎたいという強い思いが重要です。理不尽な仕事もお金に換算して割り切れますから。休みが欲しい、楽して稼ぎたい、残業代欲しい……とか考えてる人にはやっぱり厳しい業界です、続かないですよ。最近では、すぐブラック企業やらいわれますけど、学歴や資格のない自分みたいな奴が人並み以上に金を稼ごうと思ったら、違法な商売をするか、自分の時間を売るしかないですから」

──俺の時間をくれてやると。
「大卒で立派な資格を持ってる人と、自分みたいな奴に流れてる時間は平等じゃないんですよ。12時間労働がナンボのもんじゃい!って奴が成功する世界だと思います。だからやっぱり体力勝負だし、3年位の長期で働く意志がない人には向いてないですよ。たまに『短期間だけ働きたい』なんて応募が来るけど、最初の給料は安いところが多いし、あまり意味がないですよね。お店も長期で働けるスタッフを幹部として育てたいと思ってますから」

5年後の自分に向かって

5年後の自分に向かって 高収入求人ドカント──だいぶお金も貯まったのでは?
「貯金ですか?それは秘密でお願いします(笑)」

と、貯金額は教えてくれなかったが「この先の目標は?」の問いには……

40歳までに2千万円貯めて地元で店を開きたいですね、居酒屋とかダーツバーみたいな。イヤ、女の子は使わないです、面倒なんで(笑) ウチのグループで働いてた人でも飲食店を始める人は多いですよ。だから自分もあと5年は死ぬほど働かないと……」

と語ってくれた。
頭のなかには自分の5年後の姿が思い描かれているのだろう。ついこの間までは将来に希望を見い出せず、破綻の一歩手前でうろついていた人間の顔つきとは思えない、自信に満ちた顔つきである。

「それまでに嫁を見つけないといけないんで…」

と言い残して、川島さんはお気に入りの女性のいるカラオケスナックへと向かって行った。