温湯(ぬるまゆ)シュウイチの下衆リーマン日記!
誰もが知ってる某一流会社勤めの金融マン。39歳妻子持ち。
長男は私立小学校に通い、妻は専業主婦で習い事に大忙し…。
そんな順風満帆な人生がひょんなことから600万の借金返済生活へ!
つちかった役職知識をフル活用!カラ交通費に経費水増し、株式投資に副業、ギャンブルetc…
一発逆転高収入を夢に見て、合法ギリギリの小遣い稼ぎに狂う日々…。
嗚呼、今年の8月にはようやく司法書士にお願いした債務整理の返済が終わります。
それまで嫁にはバレませんように(ナムー…。
AGAのハゲ薬をインドから個人輸入し副作用で精力が弱りはじめた、温湯シュウイチのゲスい日常。
第12話 温湯、秘密のアルバイト。ラブホテルの懲りない面々-後編-
■ラブホテルのフロントのお仕事。豆知識。
- ここで少し“ドカント的”な“お仕事の情報”も書いておく(編集に怒られるから)。
オレが従事しているのはラブホテルの室内清掃業務だが、ラブホのフロント(受付)スタッフ(お客に部屋の鍵とか渡したり会計したりする人)は、勤務体系が少し変わっている。24時間勤務が主流なのである。
もちろん仮眠休憩が4時間ほど設けてあるが、実働は20時間勤務となる。
1日勤務したら2日休み(1勤2休)で、1ヶ月に10日前後の出勤となる。
給料はだいたい日給2万円程。月収20万円~25万円あたりが多いという。最近流行の“ファッションホテル”とか“レジャーホテル”とかのシャレオツなラブホなんかは、普通の時間割(9時間勤務等)での勤務になっているらしいが、「アムール」のように古いタイプのラブホテルはまだまだこのスタイルが主流となっている。
■ゴッさんは何でも知っているんやでー。(月亭可朝風R.I.P.)
- たまに10分程度の空き時間ができると“休憩”に当てるのだが、オレとゴッさんはラブホの裏手、リネン業者とかが使う勝手口あたりで一緒にタバコを吸うことが多い。
近所のラブホに出入りするカップル客を眺めながら…。「あの感じは職場不倫やで、ヤル気満々やでー」
「ありゃ風俗やな、全然つり合ってないわー」
「あれも風俗やで、女が愛想笑い全開やー」
「しっかしショボくれたオッサンやなー」等々、与太話をすることが常だ。「見てみぃー、ありゃ援交やで、援交」
「うそ?」(確かに中年のオッサンと若い娘だ)
「しかもあの娘はJKやで、JK」
「うっそー?」
「ホンマや、あの娘のオカンも援交やっとるわ。よく見かけるでー」
「…!?」
嘘か誠か、ゴッさんが言うとホントの話しに聞こえてくるから怖い…。 ■ラブホで働く愉快な仲間達。たまーに不愉快。
- ある時、そんな一服中にゴッさんから言われた。
「ヌルちゃん、あんた使えるわー。最近のバディでは一番いい感じやで!」
「あざーす」と返事はしたが、内心『そりゃそうだ』とも思っていた。「若いのとか、外人はアカンね、すぐサボりよる」
そうなのだ。
ラブホの清掃スタッフには、日本人のおばちゃんは勿論のこと、外国人労働者も多い。
中国、フィリピン、タイにネパール、最近はベトナムからの出稼ぎ組が多かったりする。
当然、オレもそんな外国人スタッフとバディを組んで仕事をすることもある。その経験上だが、外国人スタッフは基本的に“サボり魔”が多い。
いや“サボる”というよりは、日本人ほど勤勉ではない…というか細かくない…というか。
掃除も、目に見える所だけをチャチャッと片付けるだけだったり、時間の意識も薄いのでダラダラやったりする人も多い。文化の違いなのかね…。
まあでも性格が良い明るい人が多いので、そんなに気にはならないけどね。「ヌルさん、アンタこまかいねー、チン●ついてるのー?」(フィリピン女性52歳談)
■忘れられない最低最悪なスタッフ。
- 奴の話をしよう。ジャポネーゼの男の話である。
あれはいつものように、26時迄の延長勤務をしていた時のこと。
「おつかれーす」と、見たことのない男がリネン室に現れた。その男は、リーゼントにベッコウの眼鏡を掛けていて、歳の頃は20代後半~30代前半といった感じ。黒いポロシャツにジーンズ姿であった。
『リネン室に洗濯物を取りに来た業者さんか』と思い、挨拶をして通り過ぎようとすると
「夜勤担当の嶋です。今日はヘルプで早く来たんで、あと2時間よろしくー」とのこと。アッ!夜勤のスタッフね。これは失礼しました。
フロントのおばちゃんと軽口をたたいているところを見ると、オレより先輩なんだろう。「あー、こちらこそ…(よろしくー)…」
と返事をしようとリーゼントを見てアラびっくり!
なんと!半袖ポロシャツの袖口から、見事な“桜の刺青”が10㎝ほど飛びくり出てるじゃないの!!
あれヤク○なの?「いえ、こちらこそよろしくお願いシマス!」と慌てて言い直し深く頭を下げた。
もし、昼間の仕事で、この手合いのお客様がご来店された場合…。
本部と最寄りの“警察署”に、“反社会的勢力来店”と即連絡するヤツ。
「5番カウンター集配―!」と淫語、いや隠語で店内放送するヤツじゃない!関わってはイカン、と気配を消してタオルをたたんでいると、“ポン”と背後から肩を叩かれた。
「さあ、温湯さん、一緒に空き部屋作りますよー!」こうして嶋と2人でバディとなり清掃を行う事となった。
■【204号室】
- 「俺が部屋をやりますんで、温湯さんは風呂トイレをやって下さーい」
「はい、喜んでー!」『あら、もしかして普通にいい人かもね♪』なんて思いながら、言われた通り、風呂とトイレを大急ぎで仕上げ、次の部屋に向かおうとすると、嶋から呼びとめられた。
「チョット温湯さんコッチ来て下さーい」
「はい、なんでしょう?」
急いで嶋のいる風呂に行くと…。「ここ濡れてますよね?鏡のところとシャワーの取手。水滴、ついてますよね?」
「はあ…そうですかね?」と思わずアンニュイな返事をすると…嶋はいきなり、風呂場のスケベ椅子にドカッと座りこんだ。
「そうですかね?じゃないですよね、ここ濡れてますよね?客が入ってきて、風呂場見た時に水滴が付いてたら、『あー掃除してねーな』って思いますよね?」
「はぁ…」(んなコトねえだろ)「『汚ねーな部屋変えてください!』って言われたらどうすんですか?」と鬼の形相で説教開始オン・ザ・スケベンチ。
ゴッさんから教えられたやり方で処理してるんだけどなぁ…。
こういうのなんて言うんだっけ、モラハラ?パワハラ?
しかし、意外と超几帳面なリーゼント野郎だなぁ…。「すみません…」と、取りあえず言われた通りに水滴を拭き、すぐに次の部屋に向かう。
■【506号室】
- 「今度は俺が風呂トイレをやりますんで、温湯さん部屋の方をお願いしまーす」
「ハイ、喜び組ー!」今度も言われた通り、ベッドメイクをして次の部屋に向かおうとすると、またしても嶋が呼び止めてきた。
「鏡、拭きましたか?ふいてないっすよね?」
と今度はSMプレイ用の三角木馬にまたがり、曇った表情で質問してくる。「いえー、一応拭きましたけど…」
そう答えると嶋は、
「鏡のここに埃がついてますよね?これで客が入ってきて、鏡を見た時に『あー掃除してねーな!』って思いますよね?『部屋変えてくれ!』って言われたらどうすんですか?またイチから清掃やり直しっすよ?」プチン!
『だから誰もそんなこと思わないし、そんなんで掃除やり直しじゃねーよ、どサンピンが! ゴッさんチルドレンのオレに向かってその口の利き方はなんなんじゃ!』
と思いつつも怖いんで、「さささサーセン!」と言われた通りにホコリを枕カバーで拭き取った。嶋はソレを満足そうに確認し、次の部屋に向かった。
念のため、嶋が担当した風呂場を覗いて見てみると、信じられない光景が目に飛び込んできた!風呂場、ビッショビショ!
換気もしてないから、湿気が充満して、モワ~ンとしてるし!
“風呂釜”から“壁”から“床全体”までビッショビショ、水滴だらけだった。
アレ?雨でも降った?スプリンクラー作動しちゃった?
嶋、これ完全にシャワーぶっかけただけだろ?
えっ!?と固まっていると、嶋がドアから「次、急いで下さーい」と言うので、「ハイ、よろこびー!」(IKKO風)と慌てて風呂場ビショビショのまま次に向かう。
いいのか? ■【305号室】
- この部屋では、また担当を交代し、オレが風呂掃除。
とりあえず風呂場を完璧に拭きあげて、汗だくになりながら風呂場から出る。すると、既に清掃を終えた嶋が、なんと、ベッドに座りながらスマホゲームをしている。
ベッドメイクした後のベッドに“座る”という無神経さは一体何なのか?
こんなのゴッさんに見つかったら、シャイニングウィザード喰らうぞ!嶋はポロシャツの袖を肩口までまくり上げ、二の腕の桜吹雪の刺青をアピールしながら、「殲滅―!殲滅―!」とかつぶやきながらゲームに夢中である。
「風呂終わりましたー」と声をかけると、「はい次トイレー」とオレの顔も見ないで指示を出し、自分はそのままゲームに夢中。
急いでトイレを仕上げて戻ると、今度は嶋の姿が見えない。
嶋が座った所のベッドメイクをやり直し、リネン室に戻ると、嶋はタバコを吸いながら休憩している有り様…。「終わりましたー」と声をかけると「先に304号室に行っててー後から行きますー」と、また顔も見ずにゲームに熱中…。
内心『ふぁっっく!ぶるしっっと!!』と思いながら部屋に向かおうとすると、フロントのおばちゃん社員がやって来て、何やら嶋と話しをしている。
んっ?こっそり覗いて見ると…。「嶋さーん、この前の特殊ゴミありがとうね。やっぱ焼却場に勤めてるだけあって、融通が効くんだね。社長も喜んでたわよー」と言って戻って行った。
「焼却場勤務?」まさかアイツ公務員なのか?
特殊ゴミの処理に顔が効くからって、こんなに仕事が横柄なのか?その後も目が回る忙しさだったが、嶋はすっかり丸サボり。
オレはほぼ一人、26時まで目一杯働き、ようやく一日が終了した。
帰り際、フロントでこっそり嶋のタイムカードをチェックし、フルネームを控え帰宅。 ■ヤツには粛清が必要だ…。
- 「ちょっと苦情なんだけど…」翌日、市の焼却場へ電話。
「お宅に嶋っていう職員がいると思うんだけど。彼、何なのかね?態度が悪いよねー」
「お、お待ち下さい」
受付は電話を上司に交代する。同じ事をまくし立て更に…。「嶋は公務員じゃないのか?公務員は副業禁止じゃないのか?」
「は、はぁ…」
「ラブホテルで働いているって噂だぞ!確認しろ!!」
「え?はぁ…」
「市民の公僕である公務員がそれでいいのか?」
「いえ、そのようなことは…」「なんか刺青も入ってるかもねー!」
と一気にまくし立ててやった。(悪質クレーマー爆誕)役所の上司は「なるほど、そうですね、おっしゃる通りです」と、さすが公共機関である。 とても対応は良かった。
「実は、彼は○○○(会社名)から派遣されたスタッフなのですが、こちらからも厳しく注意をしますので申し訳ありませんでした」
オレは「次やったら許さんぞー!」(追悼・性の悦びおじさん)と言って切電。
「ふー、粛清完了。嶋、殲滅―!殲滅ぅー!!」
■人を呪わば、穴二つ。
- 翌日、いつものように「アムール」のバイトを24時で上がると、嶋が怒気をはらんだ様子でオレのところに駆け付けてきた。
どうやら待ち伏せしていたらしい。「オイ!昨日焼却場に電話しただろ?とぼけても無駄だぞ!」
「は?何のこと?」「ここでバイトしてるってチクッただろ?お前しか考えられない!」
「いや、そんなこと全然…」「録音を聞いたけど、お前の声とソックリだったぞ!」
げっ!鼻つまんでたはずなのにー!!
しかしアレだな、役所も役所だな、クレーム主の声を聞かせるとは何事だ!
オレに何かあったらどうすんだ! 個人情報保護もあったもんじゃねーな!「は?は?」
ひたすら知らない、オレじゃない、と惚けて何とかその場をやり過ごした…。
「テメー、絶対許さねーからな!」嶋は捨て台詞を吐いて帰って行った。ヤバいわー、完全にバレてるわー。
しかしさ、よくよく考えてみると、身元(職場)がバレて会社にチクられたら、派遣のアイツよりオレの方がなんぼかヤバいよな…。ウチは金融機関だから、副業は絶対禁止だ。
「お宅に温湯って管理職いるだろ?夜ラブホでバイトしてるけど、お宅の会社ってそれ許してんの?コンプラ大丈夫?金融機関って副業禁止だろ?」
やべえ、これ一発アウトなヤツ!
オレが殲滅させられるぅー! ■ゴッさん、後日談。
- そんなこともあり、程なくしてラブホのバイトは1年ソコソコで辞めたのだが、なかなか面白い経験が出来たと思っている。
ラブホを行き交う人達や、そこで働く人達。
濃ゆーい人達の生態を生暖かく観察することができた。夜の暗闇に行き交う人々の隠しきれない側面を一時覗き見ることが出来る世界。
性という動物的な本能を充足させる場所であるからこそ、一定の建前も必要になってくる世界。(ちょっと自分で何言ってるか分からないけど…)まあ、また機会があればやってみたいバイトではある。
あ、そうそう。
その後「アムール」のオーナー丹下と仕事で世間話をしている時だった。
「そういえばさ、後藤さん(ゴッさん)辞めちゃったよー」
「えっ!なんでですか?メチャメチャ仕事できたのに!」「お客さんの忘れ物をさ…」
「えっ?後藤さんが手をつけたって?そりゃないですよ!」「いや、違うんだよ、後藤さんの勤務時間帯の忘れ物だったから、フロントがちょっと聞いてみたら『アタシを疑うのかい!』ってエラい剣幕で怒っちゃってさー」
「あーそうでしょうね…」「『今日で辞めますわー!』って、それっきりよ…」
「なんか後藤さんらしいっすね…。 でもあの人はお客の忘れ物には絶対手を付けないと思いますよ。嶋とかじゃないっすか?そんなことするの…。…ん?その忘れ物って何だったんすか?」「女モノのネックレス。ティファ○ーの高いヤツ」
あ、それオレがパクったやつだわ。
- ラブホのバイト
- 【リターン】時給1,300円。1日約4,000円の日払い。
月にすると8万円~10万円程度の副収入に!Wワークや副業にはオススメ♪
緊急時には時給上乗せで延長勤務もアリ!【リスク】主に清掃業務だが、とにかく汚い!潔癖症の人には絶対無理だろ。
お客の忘れモノをパクる→犯罪!
その忘れ物を売り払う→犯罪!
「副業禁止」の勤め人は、とにかく敵を作らないようにね♪