フリーターが「ソープランド」ボーイの仕事をレポート!吉原のマネージャーから勧誘される。

■万年金欠状態のオレに話しかけてきたのは…。

ここは東京の、とある下町のヤキトン屋。
“一串100円~”とリーズナブルな価格で香ばしく焼けたヤキトンが楽しめる店だ。
この店、週末は昼から営業している。
休日をのんびり“昼飲み”しながら過ごす、友達連れやカップルで賑わっていた。

自称フリーター(実質ニート)のオレの財布の中味なんて寂しいものである。
“千円札2枚とチャリ銭”、所持金を睨みながら100円の串を大事にかじり、レモンハイをちびりちびりと飲む。

カウンター席の隅っこで、そんな侘しい一人飲みをしていると、
不意に隣から「おい、兄ちゃん」と声を掛けられた。

驚いて振り向くと隣の席に座っていたオッサンがこちらを見ていた。
どっしりとした体格に丸刈りのゴマ塩頭、派手な柄のセーターというその出で立ちは、ちょっとした“コワモテ風”である。

そのオッサンは、オレと目が合うと“ニッ”と笑った。

「兄ちゃん若いのに寂しい飲み方してるねぇ~。これ飲むか?」

そう言って自分が飲んでいた“冷酒”のボトルをヒラヒラと振った。

『何だよ、このオッサン…』と一瞬怪しんだが、冷酒がオレを誘惑する。
気付いた時には、「ウッス」と愛想笑いで返事をしていた。

オッチャンはグラスに並々と冷酒を注ぎ、“シロ”や“カシラ”などの串をいくつか注文して、「食えよ」とオレに回してくれた。

「俺は土橋ってんだけど、兄ちゃん名前はなんて言うんだ?」
「えっと・・・トラです」

名オレはとっさにニックネームで答えた。
ご馳走になっていて失礼なのだがオッサンに対する警戒心があったからだ。

オッサンは屈託なく笑いながら言った。
「トラちゃんかぁ、イイ名前じゃねえか~」

オッサンは調子よく冷酒をあおりながらオレの身の上話を聞きたがった。
「兄ちゃん仕事は? ひょっとしてまだ学生サン?」

オレは一瞬答えに詰まってしまったが、今は学校を出てフリーターをしている、と手短に話した(実際にはニートだが)。

するとオッサンは、
「はぁ~フリーターってか。若い人は気楽でいいよなぁ…」
と答えたが、そのまま話は尻すぼみになってしまった。

そう、オレの薄っぺらい人生の話なんてすぐに終わってしまう。
オレはこの“タダ酒&タダ食い”の素敵な時間をもう少し引き延ばすために、今度はオッサンの身の上話でも訊いてみようかと試みた。

「土橋さんは何のお仕事をしてるんですか?」
「あ?オレ? 何してるように見える?」

「ヤ○ザ」

と反射的に答えそうになったが、グッとこらえた。
そのコワモテな風体からは、ソレ以外何の職業も思い浮かばない。

そんなオレを見てオッサンはニヤリと笑いながら言った。
「俺はなあ、吉原の“ソープ”のマネージャーだよ」

■オッサンは吉原「ソープ」の男性スタッフだった!

「兄ちゃんはソープに行ったことあるか?」
「い、いや・・・、まだないっす」

そう、オレはまだ“ソープランド”には行ったことがない。
それに“吉原”※という場所にも行ったことがない。
そこはオレよりも、もっと“大人”が行く場所だというイメージを持っている。
※吉原とは…東京都台東区千束3丁目から4丁目一帯にあるソープ街のこと。
“吉原”という地名はない。最寄り駅はJR「鶯谷」駅、日比谷線「三ノ輪」駅。

「まあ、フリーターのお兄ちゃんにはソープは早ぇかな~」
オッサンはそう言って笑いながら、ソープランド業界について教えてくれた。

「いいか、一言に“風俗店”といっても、そこにはソープランドやファッションヘルス、ピンクサロン、デリヘルといった業種に分かれてるる。それぐらいはわかるかい?」

「知ってますよ。友達が『家にデリヘル呼んだら超カワイイ子が来た』って自慢してて、超羨ましかったですもん、オレ実家暮らしだから。 家まで女の子が来てくれるなんてデリヘルって最高っすよね」

「バカだねえ(笑)、風俗業界の最高峰といえば“ソープランド”に決まってるじゃねえか!・・・おっとスマンな熱くなって」

オッサンは頭を掻きながらも、ソープランドの浴室で行われるサービスが、どれほど素晴らしいかを教えてくれた。

そして、ソープランドには、料金・時間に応じて、以下のような“格付け”があると教えてくれた。

高級店
料金:総額6万円以上(10万円以上という“超”高級店もあり)
時間:110分~120分以上
大衆店
料金:総額3万円~5万円
時間:90分~100分前後
格安店
料金:総額2万円~3万円
時間:40分~60分前後

この格付けが上がるほど、サービス内容も“ゴージャス”になっていくという。

「土橋さんは、どのランクのお店で働いてるんですか?」
「そりゃあ、オレは“高級店”勤務に決まってるだろう!」

「嘘でしょ!?」

と反射的に答えそうになったが、ここもグッとこらえた(タダ酒タダ酒)。

■ソープランドのボーイは高収入ワークだった!

「高級店の方が、ボーイの給料もいいんすか?」

「そうだな。ソープの男性スタッフで、新人はだいたい給料が月給25~30万円、てところが相場なんだけど、ウチの店は、月給30万円を超えてたからな」

おお、月給25~30万円でも初任給としては充分高給だと思えるのに、高級店では月給30万円越えとは・・・。

「へえ~、じゃあ土橋さんの給料はいくら位なんすか?」
「今か? 俺は入店4年目なんだけど、今は“マネージャー”っていう役職だから、給料は歩合も含めて、月給50~60万円ぐらいだなぁ~」

「すげぇ!高給取り!役職が付くとそんなに給料上がるんだ!?」

オッサンは“高給取り”という言葉に気を良くしたのか、満面の笑みでその詳細について教えてくれた。

「“主任”とか“マネージャー”とか、店によって呼び方は違うけど、役職が上がるにしたがって給料がどんどん上がっていくんだ。高収入求人サイトなんかでは、“店長・幹部候補募集”とか書かれてるけど、だいたい“月給50万円以上”だからな。 しかもウチの店は年に2回ボーナス(賞与)も出るし、“食事手当”なんてのもあるぞ」

マ、マジか!? 年2回のボーナスまで出るなんて・・・。
ソープの男子従業員ってそんなに高給で高待遇なのか…。
いや、しかし・・・世の中そんなに甘い話が転がっている訳がない。きっと好条件でも、それに釣り合わないほどの“ハードワーク”じゃないだろうか?

「でもそんな稼げるってことは、メッチャ辛い仕事なんでしょ?」
「そりゃあ確かに、休みは週1日、勤務時間は1日12時間だから、労働時間が長いと言えば長いけど・・・、って兄ちゃん…」

「えっ、なんすか?」
「まさか、ボーイの仕事を始めてもいいかな、って思い始めてないか?」

「あっ、いやっ、別にそんな訳では・・・」
「何だ、そういうことか!じゃあ俺がボーイの仕事はどんなものか、教えてやるよ」

こうしてオッサンは、目を輝かせながら、ソープランドのボーイが行う仕事内容について語り始めた。

■ソープランドのボーイ、その具体的な仕事内容とは?

ソープランドのボーイは、以下のような業務を行う。

店内清掃
駆け出しのボーイにとって最も重要な仕事の一つ。
開店前に受付、待合室、そして個室の清掃を行う。
また営業中も、店内が汚れていないか気を配る。
お客様に気持ち良く楽しんでもらうために、しっかり綺麗にキープするべし!
電話応対
女性コンパニオンの指名、予約、またお店の場所確認など、事前にお店に電話をするお客様は多い。その対応はボーイの仕事となる。
お客様にストレスを感じさせないよう、的確に応対し説明を行う。
電話はスタッフの顔が見えない分、その声や話し方でお店のイメージが決まってしまう。
明るく、はっきりと、的確に電話を受けるべし!
店舗での受付・接客
お客様が来店されたら、まずは受付を行い待合室に案内をする。
その間にシステムの説明、接客する女性コンパニオンの希望などの確認を行い、ドリンクの提供なども併せて行う。
お客様がお店で最初に接するのは受付のボーイであり、その応対や態度でお店のイメージが決まると言っても過言ではない。
ましてや、高級店の場合は、ボーイもその高級感を演出しなければならない。
よって挨拶や言葉遣いはもちろん、身だしなみにも配慮し、しっかり接客するべし!
お店ホームページ・風俗情報サイト等の情報更新作業
今の世の中、お客様の多くは、ネットで各店のホームページや情報サイトをチェックして、どのお店で遊ぶかを決めている。
よって、各ページの情報を常に最新となるように更新し、人気嬢の出勤情報やキャンペーン情報などを、新着情報として随時アップする業務は、集客面で不可欠となる。
ネットの情報は面倒がらずに更新すべし!
お客様・女性コンパニオンの送迎
吉原は最寄りの駅から結構離れたところに位置しているため、多くの店がお客様の無料送迎を行っている。
また女性コンパニオンの出勤・退勤時の送迎もある。
これらの送迎に関わる業務もボーイの仕事である。安全運転でスムースに送迎するべし!

◆役職付き、店長・幹部候補の仕事は…。

女性スタッフの出勤管理
ソープランドにとって、お客様にサービスをおこなう女性コンパニオンは大切な“商品”。
当然、彼女達が出勤してくれないことにはお店は始まらない。
ただし、デリヘルなどの無店舗型と違って、店舗型のソープランドは部屋数(プレイルームの数)が決まっているので、女性コンパニオンが出勤過多で余ってしまわぬように、また少なすぎて“空き部屋”が出来てしまわぬよう、出勤の管理を行なっていく。
そして、それをに円滑に進めるためにも、日頃からの女性コンパニオンとのコミュニケーションは欠かせない。
女性コンパニオン・ボーイの面接業務
何度も言うように、ソープランドは女性コンパニオンあっての商売。
また新人女性の入店は、話題面においても集客に欠かせない。
そのため女性の面接業務は、お店の今後の浮沈を握る業務となる。
またお客様と顔を合わせるボーイも、実際に現場を回すだけにとどまらず、お店のイメージを左右する存在である。その面接も同様に重要な業務となる。
広告代理店、他出入り業者との打ち合わせ
集客アップのために、広告代理店の営業マンと打ち合わせを行い、広告媒体への出稿、キャンペーンの効果的な露出などの検討を行う。
また、女性コンパニオンやボーイを募集するための求人媒体への出稿についても同様に検討する。
その他、店を運営していく上で必要となる各出入り業者との打ち合わせも併せて行う。

「どうだ、これがソープの男子従業員の仕事だ!」
説明を終えて、オッサンはじっとオレの目を見据えた。
「いやぁ・・・」
オレは思わず目を逸らして唸った。
なんだよ、やっぱり・・・かなりのハードワークっぽいじゃないか・・・。

すると、そんな思いを見透かしたようにオッサンは言った。

「確かに労働時間は長いし、その間もずっと“立ちっぱなし”だから最初はしんどいよ、やる事も多いしな。でもそんなのすぐに慣れっから! 40歳を過ぎてから入った俺でも1週間もしたら苦でもなくなったんだぜ、大丈夫だって、なあ兄ちゃん!」

何だかオッサン、完全に“勧誘モード”に入ってないか?
まさか、最初からオレをソープで働かせるために飲み食いさせてたのか、と勘繰ってしまうほどの熱の入りようである。

「それになあ、今ウチの店に入ったら、絶対“出世”できるぜ!」

■求人募集をしても若い男性が集まらない現実・・・。

いやいや、いくら勧誘とはいえ、さっき会ったばかりのフリーター(実質ニート)のオレに出世話もないだろう。
さすがに呆れて苦笑したが、オッサンは大真面目な顔で続けた。

「実は、ソープランドって歴史があるからか、若いお兄ちゃん達は“古臭い”とか“怖い”みたいなイメージを持ってるのかも知れないけど・・・。 ボーイを募集しても若い男がなかなか来ねえんだよな~。 ウチの店にしても、ボーイは15人ほどいるが、一番若いのは30代半ばで、あとは全員40代から50代だからな。 そんな所に、20代前半のパリッとした兄ちゃんが入ってくりゃあ、オーナーが絶対に気に入るから。そうすれば出世間違いなしだって!」

なるほど。

“絶対出世する”その理由は、オレという人間の出来・不出来ではなく、その“若さ”にある訳か。
しかし本当にそんなうまい具合に行くもんなんだろうか。

「オーナーに気に入られたら、ホントに出世できるんですか?」

「そりゃあそうさ。オーナーはウチの他にも店を持ってるけど、そのすべての人事権を握ってるからな」

そこまで自分を買ってもらって嬉しくないはずがない。
これはちょっと就職を考えてみようかな、とオレは思い始めていた。

そんな気持ちをを察したのか、オッサンは言った。
「ウチの店は、新人の研修マニュアルもちゃんとあるし、何より俺がちゃんと仕込んでやるよ。だから心配するな。 いつまでもフリーターで時給を貰っててもしょうがねえだろ、な?」

しかし、オッサンは続けて言った。
「これで兄ちゃんがウチに入ってオーナーが気に入ったら、連れてきた俺も昇進間違いなしだな!イヒヒヒ…」

なあんだ、そういうことか。
オレを店に入れることによって、自分の出世を狙っている訳か。

まあしかし、こうして知り合ったオッサンが上司で控えてるというのも心強いし、自分の昇進もかかっている訳だから、きっと目に掛けてくれるだろう。

オッサンはなおも畳みかけてくる。
「兄ちゃんもこの辺りに住んでるんだったら、店まで“通い”で来られるだろうけど、実家を出たかったり何か問題を抱えてんだったら、“無料の家具付き寮”もあるからな! 給料の“日払い”も対応してるから、ホント体ひとつありゃ生活を立て直せるぜ!」

どうせ家に帰っても、また両親にガミガミと叱言を食らう毎日だ。
いっそ、家を飛び出してソープ業界で成り上がってやるか!

と、その時だった。
カウンターに置いていたオレのスマホから、LINEの着信音が高らかに鳴った。
画面を覗くと、それは母からのメッセージだった。

「トラ、今日は何時頃に帰ってくるの?アンタの好きなカレーを作るから早く帰ってらっしゃい」

・・・んー。この心地よい実家暮らしも捨てがたいなぁ…。
隣ではオッチャンが、少しまどろんだ熱い目でオレを見つめている。
一体オレはどうしたらいいんだろうか?

オレはグラスに残った冷酒を一息に飲み干した。

[ライター]フリーター虎次郎

気ままなバイト生活を送る、とある男の物語。
オレの名前は、トラジロウ。
といっても「男はつらいよ」の“寅次郎”ではなく、一字違いの“虎次郎”。この名は「男はつらいよ」の熱狂的なファンだった父と、大阪生まれで「阪神タイガース」をこよなく愛する“虎党”の母によって命名された。
そんな有難い名前を頂いたオレは、すくすくと“虎党のフーテン”に成長する。
ただし“寅さん”の時代のように、境内でバナナの叩き売り、なんてシノギがある訳なく、そこは現代流、求人サイトを時たま覗く気ままなフリーター稼業。
そんな“寅”ならぬ“虎”の仕事日記。
よろしくおたのみ申します。