【フリーター虎次郎】大阪・ミナミで黒服バイトを体験!
フリーター虎次郎と申します。
東京生まれの東京育ち、30歳に手が届く年齢となりながら、今もって実家に寄生中の親不孝者でございます。
学生時代からアルバイトに明け暮れ、今なお定職につかずにフリーター稼業をしております。(両親からはニート野郎と罵られますが……)
肉体労働からオフィスワーク、早朝の新聞配りから深夜の水商売まで……これまで経験した仕事の数は60職を超えました。むろん、仕事の数が多けりゃ良いというもんじゃありません。何をやっても長続きしない性分がわざわいし、一日でとんだアルバイトも数知れず、こんな不甲斐ない顛末となっております。
このたびは縁あって男の高収入情報「ドカント」からアルバイトの体験談の執筆を仰せつかりました。
こんなお粗末な経験がどなたかのご参考になればと……
不肖、虎次郎。ひとつよろしくお頼みします。
■思いがけず旅の空・・・大阪アルバイト編
- 突然だが、オレは今、大阪に滞在している。
学生時代の友人だったノボルに久々にLINEを入れたのがきっかけである。ノボルは大学を卒業後、地元大阪に帰省してオレと同じくフリーターをしている。
もう何年も会っていなかったが、LINEのやり取りは続いていた。時給がクソ!上司がクソ!荷物が重くてクソ!
3日間働いた引越しのアルバイトで心身ともに疲弊していたオレが、引越し会社の待遇をLINEで愚痴っていると……「今度大阪に遊びに来いや、いつでも俺ん家泊めたるわ」
ノボルはこう返信してきた。アルバイトもせずに家でゴロゴロしていると、とにかく親の小言がうるさい。
親父なんて晩酌時にオレの顔を見ると「チッ」と舌打ちしてくるぐらいだ。
この家から離れられるならどこでもよい……本当に大阪に行っていいか?すぐ行くぞ?マジで!
そう食い気味にレスしたオレにノボルはこう返してきた。「全然大丈夫や、いくらでも居てええで!」
持つべきものは友である。
オレはその日のうちに高速バスに飛び乗り、ノボルの住む大阪市内のワンルームマンションに転がり込んだ。 ■俺と一緒に“黒服”やればええやん!
発泡酒6缶セットを手土産にノボルのヤサに腰を落ち着けたものの、体一つでやって来た身の上である。
所持金は高速バス代を払って残りわずか……居候の身の上で、食費や生活費まで無心することはさすがにできない。
日払いのアルバイトでも探さないと……
そう思いあぐねていると、またもやノボルがあっさりと問題を解決してくれた。「俺今ミナミのキャバクラで“黒服”やってんねんけど、お前もそこで働けばええやん」
■【キタ・ミナミ】大阪エリアのキャバクラ事情
- 翌日がノボルの出勤日だったこともあり、早速オレは面接の段取りをつけてもらうことにした。
夕方、店へ向かう道すがらノボルは大阪のキャバクラ事情について教えてくれた。【大阪エリアのキャバクラ事情】
●大阪の二大繁華街 キタとミナミ
・大阪駅・梅田駅周辺の“キタ”
・心斎橋駅・難波駅周辺の“ミナミ”
キャバクラやガールズバー、ラウンジやクラブもこの二つの繁華街に集中している。・実際には“ミナミ”という地名はなく、地元の人が使う愛称のようなもの。
ミナミと呼ばれるエリアは、難波や道頓堀(“グリコ”の看板や“かに道楽”の立体看板で有名な場所)、千日前周辺の繁華街を指す。・“キタ”とは、大阪駅などがある梅田エリアを指し、住所でいうと大阪市北区にあたるためキタと呼ばれている。
・キタには東京の銀座のように高級クラブが集まる“北新地”という街もあり、どちらかというと社用族が接待で使うような高級なイメージがある。
・対してミナミは若者が多く集まる街で、お店もガールズバーやキャバクラなどカジュアルな店舗が多いという色分けがなされてる。
・十三、西中島南方、京橋という街にもキャバクラは多いが、店舗数や知名度ともにキタとミナミが圧倒的だ。
東京でも、渋谷や歌舞伎町、六本木では街の雰囲気が全く違う。それと同じことか……
で、オレが今向かってるのはミナミだから若者向けのカジュアルな感じか……
そうノボルに問う。「そやな、そんなに堅苦しい店ではないわ」
少しホッとした。
そうこう話をしているうちに、ミナミの店に着くとすでに店長が待っていた。
■ミナミのキャバクラ、ホールスタッフの時給や待遇は?
- 店長は銀縁メガネにきつめのパーマ頭、大柄でどっしりした体を派手なストライプのスーツで包んだ40代前半の男性……いかにも大阪発のVシネマに登場しそうなその風体。
正直ビビる。
そんな店長から説明された募集条件のあらましは以下のようなものだった。
【職種】キャバクラ・ホールスタッフ(黒服・ボーイ)
【雇用形態】アルバイト
【給料】時給1,200円スタート
【待遇】日払い可能、交通費支給、食事付き、休憩1時間
【勤務時間】17:00~翌2:00の間(深夜1:00営業終了後清掃などの閉店作業)
【勤務日】週3日から勤務OK・1日5時間以上勤務のシフト制
【休日】シフト制 ※日曜祝日は休日時給はエリアによって基準が違うので、大阪で働いたことのないオレには、時給1,200円が高いのか安いのかわからなかったが、後で調べてみると、大阪府の最低賃金は“992円”、それと比べると+208円だからそれなりに高時給のバイトだろう。
そして何より、どこの馬の骨ともわからないオレを即決で採用してくれる店があることが嬉しかった。
また財布が空っぽの今、時給1,200円×9時間=1日10,800円を日払いでもらえるのはありがたい待遇だ。勤務時間、勤務日についてはシフト制とのことだが、ノボルのシフトに合わせ、“オープンラスト(17:00~翌2:00)で週5日勤務”、で希望を伝えると店長はニンマリ笑って嬉しそうに頷いていた。
後でわかったのだが、この店も含めて大阪のキャバクラ業界はかなりの人手不足らしい。
オレにとってはこの店で仕事にありつけて渡りに船だったが、店にとってもオープンラストで週5日フル出勤で働けるオレのような奴が欲しかったみたいだ。こうして面接は無事終わり、早速その日から即日勤務。キャバクラの黒服(ボーイ)のアルバイトを始めた。
■ミナミのキャバクラ、新人黒服(ボーイ)の1日の仕事内容は?
- こうして始めたキャバクラの黒服アルバイト。
新人ボーイの1日の具体的な仕事内容は以下のようなものだった。- 【17:00~18:00 開店準備】
- 出勤したらまずおこなうのが清掃業務。
店内の清掃にトイレ掃除。そしてテーブルにミネラルウォーターやグラスなどをセッティングする。
チャーム(おつまみ)やタバコ、またキャスト(キャバ嬢)に頼まれた品物などの買い出し、その他開店までに必要な雑務をおこなう。 - 【18:00~ 営業スタート】
- お店がオープンした後は次のような業務をおこなう。
・ウエイター業務
お客様が来店したらテーブルに案内しボトルやアイスなどを運ぶ。
テーブルを常に注意して氷や灰皿を随時交換、オーダーがあればドリンクやフードを届ける。
お客様が帰ったら素早くテーブルを片付ける。・キッチン業務
使い終わったグラスや皿などを手早く洗う。
店がお客様で賑わってくると、大量のお酒やドリンクが提供されるので洗い物も大変な仕事になる。
フードの調理をする場合もあるが、ほとんどは電子レンジでチンする程度の簡単なもの。
高級クラブなどは、キッチン業務専門のスタッフを雇用している場合が多い。 - 【閉店~翌2:00 閉店作業】
- 日付が変わって翌1:00でお店は閉店。
お客様がすべて帰った後にテーブルの片付けやグラス洗い、ゴミ出しなどの閉店作業をおこなう。
キャバクラの黒服の仕事はもちろんこれだけではなく、キャストの出勤管理や接客指導、売上の集計、キャストを家に送るドライバーの手配など多岐にわたるが、これらは店長や幹部スタッフを始めとする正社員の仕事であったので、新人のボーイがタッチすることはなかった。
ちなみに東京、大阪、全国どこでもこの仕事内容に違いはないという。こうして初めてやってみたキャバクラの黒服、その仕事内容は学生時代にやっていた居酒屋のアルバイトとそれほど違わないな……というのが正直な感想だった。
清掃、買い出し、営業中はお客様やキャストの注文にテキパキと応じてドリンクを提供する。
“夜の業界デビュー”に少しばかり緊張していたオレは少々拍子抜けした。居酒屋のアルバイトとの大きな違いといえば、灰皿を驚くほど早く交換することくらいだった。
なんせタバコ1本、チャームの包みが1つ灰皿に入ったら即交換となるので、絶えずテーブルをチェックしておかないといけないのだ。 ■正社員になればさらに収入アップ!未経験でも成り上がれる業界!
- 黒服のアルバイトを始めてから一ヵ月ほどが過ぎると、オレもすっかり店の一員として定着してきた。
またこの頃から店長はオレとノボルに正社員として働くことを勧めるようになった。「今は時給制のアルバイトやけど、正社員になれば“月給25万円スタート”や。 二人ともよう仕事ができるから半年以内で“役職”付けたる。 そしたら給料アップで歩合が付いて“月給30万円以上”になる。 二人ででガンガン店を盛り上げたってや!」
店長にそう言われ、オレはノボルと仕事終わりに串カツ屋で話し合うことにした。
正直、オレは気分転換も兼ねてしばらく大阪で過ごした後、東京に戻るつもりだった。そんなオレに向かってノボルは言う。
「黒服の仕事は時給がええから始めただけやけど……今はキャバクラ業界で成り上がってみるのもちょっとええかなと思ってる」成り上がる……か。店長も言っていた。
「ウチのグループは今新規店を増やしているから、やる気があれば店長にもなれる。そしたら月収なんて100万円超えや! のし上がっていくチャンスはいくらでもあるで」
たしかに実際に働いてみて、このキャバクラ業界は学歴や職歴も不要で未経験だろうが実力主義で成り上がっていける可能性があることはわかった。
何より毎晩数時間で十万円以上を使うお客様を何人も見ていると、とんでもないお金が動いている業界だと感じる。
東京に戻っても、どうせフリーターに逆戻りするだけだ。
それなら、ここ大阪で一発成り上がってやるか……さてどうしよう。
オレはノボルにかける言葉を見つけられないまま黙ってビールをグイっと飲み干すのであった……