風俗店・男性スタッフの勤務体系(労働時間・休日)について

【男の“夜職”相談室】
風俗店の男性スタッフの勤務体系について

■風俗店・男性スタッフの勤務体系(労働時間・休日)について

新宿歌舞伎町。…繁華街の裏通りにある古いビル。
1階の居酒屋の脇にあるエレベーターは、ドアを開くたびに「ガタン」と今にも壊れそうな音を鳴らし、その昇り降りときたら「ホントに動いているのか?」と心配になるほどに遅い。
そんなオンボロエレベーターに乗り、スナックや怪し気なマッサージ店のフロアを通過した階上に、「男の“夜職”相談室」はある。
といっても、ドアに表札などは一切掲げられていない。
「男の夜職相談室」とは、この事務所で運営しているWEBサイトの名前である。

私はそこで雇われているただ一人のスタッフだ。
そのサイトには様々な境遇の男性達から、風俗やキャバクラ、ホスト業界といった「夜職=ナイトワーク」についての質問や相談が送られてくる。

それらに答えるのは、この相談室の“オーナー”である。

■男の夜職=ナイトワーク専門のQ&Aサイト。

私はこのオーナーの名前を知らない。
夜職相談室のサイトに小さく載っていた「スタッフ募集」のバナーを見つけて、興味本位で面接を受けた。
それ以来バイトを始めて一年程経つが、オーナーは自分がこの相談室のオーナーであるということ以外、自らの個人情報は一切語ろうとしない。
そんなオーナーが運営するサイトは、閲覧者からの質問や相談に答えるにあたって、一切の報酬を求めていない。
また、サイトにもスポンサーとおぼしき広告枠なども一切ない。
これらの事実から、この相談室はオーナーが身銭を切って運営しているのではないか?と思っている。
しかし、ここまで読んだ方はこう思うかもしれない。

「そんなの、相談に乗る振りをして怪しい仕事を紹介したり、個人情報を売っ払ったり、どこぞの宗教団体のように高価な壺でも売り付けたりしてるんじゃないの?」

そう、実は私もそう思っていた。
だが、働き始めると、すぐにそうではないことがわかった。

オーナーは持ち込まれた質問や相談に、時には優しく、時には厳しく、ただ答えるだけ。

それでは、なぜオーナーはこのようなボランティアの相談室を開設しているのか。
サイトの運営費、事務所の家賃、そしてスタッフの私に対する給料、さらには広告料(検索サイトで『男性 高収入』といったキーワードで検索すると、たまに広告枠で相談室へのリンクが表示される)。
ざっと考えただけでも、結構な金額になっているはずなのだが。

私はその理由について色々と想像してみた。
昔は大手風俗店グループのワンマンオーナーだった…。
それとも風俗業界の裏側で暗躍していたフィクサーだった…。
ただ単に風俗好きが高じてボランティアをしてみたかった…。等々。

そしてこのオーナーの風貌はというと、
綺麗に撫でつけられた白髪交じりの頭髪で、常に高価なジャケットを身にまとい、物腰は柔らかく声など荒げたこともないジェントルマン然とした佇まいなのだが、顔色が“松崎しげる色”、ガングロなのである。
絶対日サロに通っている。
そのアンバランスさは、“65歳”と言われても“55歳”と言われても何となく納得してしまうような怪しさを醸し出している。
さらに首元には金のネックレスをジャラッと鳴らし、左腕にはこれまた高そうなロレックスがピカッと光っている。
どこかアウトローな世界で生きてきた人物の雰囲気も漂わせているのだ。

私の仕事内容は、二日に一度のペースで事務所に来てサイトの問い合わせフォームを通じて送られてくる質問や相談を整理すること。

それらをフラッとやって来るオーナーに渡し、口頭で伝えられる返答を文章にまとめて質問者や相談主に返信する。
それだけだ。

質問や相談がなければ日がな一日、ネットサーフィンをしながら過ごし、オーナーが来れば取りとめもない雑談相手となる。
それで役所が定めた最低賃金の2倍近くの時給を貰えるのだから、私にとっては有難い仕事である。

前置きがすっかり長くなってしまった。
今回の相談内容は以下のようなものである。

■ご質問・ご相談

【タイトル】
勤務時間8時間、週休2日で働ける風俗店の仕事ってありますか?
お名前:さとし様
年 齢:28歳
住 所:東京都
【内容】
初めまして。
僕は最近まで、とある製造業の会社で働いていたのですが、給料が安く、サービス残業が多いのに嫌気が差して退職しました。
そして今、転職をしようと就職活動中なのですが、高収入求人サイトで風俗店の男性スタッフの求人を見て、給料が「初任給28万円」や、高額な店では「月給30万円スタート」など、とても高収入なことに目を奪われました。

しかしそれら風俗店の求人情報ページを見ると、勤務時間が「1日12時間」と長く、休日も「週休1日」と少ないことがわかりました。
また、掲示板や質問サイトを覗いてみると、風俗店では求人情報に記された勤務時間に加えて「サービス残業」が課される場合も多く、16~18時間労働で、休みが月に2、3日、みたいな書き込みもあり、すっかり尻込みしてしまいました。

僕にとって高収入は魅力的なのですが、それと同じくらいに仕事以外の時間、「自分のための時間」を大切にしたいと思っています。

という訳で、風俗店の中にも、勤務時間(実働時間)8時間週休2日制、といった勤務体系で働けるお店が本当にあるのか教えてもらいたいです。

他のメジャーな質問サイトを利用しようかとも思ったのですが、こちらのサイトが“夜職専門”の相談室ということでメールをさせてもらいました。
よろしくお願いします。

「おー、やっとるねー」
いつものように、お昼を過ぎた頃、オーナーは事務所に顔を出した。
私は立ち上がって挨拶をした後に、この相談内容をプリントアウトして手渡す。

「はは~ん、これは『ワーク・ライフ・バランス』重視の若者からの相談だねぇ…」
と独り言のようにつぶやいた。
「えっ、ワーク・ライフ?何ですかそれ?」
私が思わず問うと、
「なんだ、君、そんな事も知らないのかね…」
オーナーは呆れた表情を浮かべながら言った。

「ワーク・ライフ・バランスとは『仕事と生活の調和』のことよ。要するに、仕事が生活を犠牲にしてはならないという考え方、とでも言えばいいかな。我が国においては、長時間労働の是正とともに語られることが多いなぁ…」
私がピンと来ない顔をしているのを見透かされたのであろう。

「ほら、政府が最近よく『働き方改革』とか言っとるじゃろ…」
「ああ、働き方改革…、それぐらいは・・・」
といって誤魔化そうとしたが、そんな私を完全に無視してオーナーは続けた。

「最近の若者は“出世欲”も無いって言うからなぁ。その理由もまた、ワーク・ライフ・バランスらしいんだよ。それに出世して責任が増えるのも嫌なんだってなぁ。時代も変わるもんじゃ…」

そうですよねぇ、と言う私もまだまだ最近の若者なのだが…。
しかし考えてみれば、この相談室のバイトは楽だし残業はない。そして私には“出世欲”なんてこれっぽっちもない。
そうか、私も知らない間にワーク・ライフ・バランスってヤツを実践していた訳か、そう考えて納得しかけていると、それを見透かしたようにオーナーは言った。

「そうか、君も最近の若者か。しかし君の場合は『仕事と生活の調和』というよりも、ただ自堕落に楽をして生きたいだけじゃろ。ホントにダメな男じゃのう。ハッハッハッ」

■風俗店の男性スタッフはホントに高収入?

図星。
そんなオーナーからの人物評に少しイラっとし、話題を変えた。
「相談の大前提の『風俗店の男性スタッフは高収入』って言うのは間違いないですよね?高収入求人サイトを見ると、月給28万円とか30万円スタートになっているお店が多いみたいですけど」

「ああ、それは間違ってない。だいたい風俗店のスタッフの初任給はそれぐらいじゃな。中でも東京を始めとする大都市圏はもともと給料が高めだし、今は業界全体で深刻な人手不足だから、店側は給料を上げてでも良い人材を確保しようとしとるしのぅ…」

「風俗業界は人手不足なんですか?」
「まあ今時、風俗業界に限らず、どの業界でも人手不足で頭を悩ませとる。じゃがな…」
そこでオーナーは深く溜息をつき、そして続けた。

「この業界、そこかしこに“一獲千金”のチャンスが転がっとるんじゃがのう。一昔前はそんなチャンスを掴もうと、ハングリー精神の溢れた活きのいい若者が飛び込んで来たもんなんじゃが…。最近はすっかり大人しい子が増えてしまって、募集をかけてもなかなか集まらないんじゃよ」

■幹部候補は月給50万円以上。店長は年収1000万円以上!?

「そう言われてみると、自分の周りにも、そんなガツガツした奴っていないかも…。でも風俗業界って、そんなに一獲千金のチャンスがあるんですか?」
するとオーナーはニヤリと笑いながら言った。

「風俗業界ってのは人の入れ替わりが早いからのう。だから早ければ、入店して数か月で“主任”とかの役職が付いて給料がアップする。その後“幹部候補”になれば、月給50万円以上、そして“店長”になれば、歩合給も含めて年収1000万円以上も夢じゃないのぅ…」
「年収1000万!そりゃあ凄いっすね」

「年齢や学歴、職歴なんか一切不問でそれだけ稼げる仕事はなかなかないじゃろ。まあ、もちろん店長まで成り上がるには相応に頑張らなきゃならんし、スタッフをまとめる統率力や人望も必要じゃがな」

■勤務時間8時間、週休2日の風俗店ワークはホントにある?

「相談者が希望してる勤務時間8時間、週休2日で働ける風俗店ってホントにあるんですか?」
私はそう問いながらデスクのパソコンで、高収入求人サイトに掲載されている風俗店の求人情報をチェックしてみる。

「ああ、確かに1日12時間労働で週休1日のお店がありますね」
「まあ、今でもこの業界、そういう店は確かに多いな。しかしじゃな…」
オーナーは私のところに歩み寄り、デスクのパソコンを操作し始めた。
そこには、ある風俗店の求人情報が表示されていた。

【都内・某デリヘルグループ】
<職種>
[正]店舗スタッフ
<給料>
月給28万円~
<勤務時間>
9時~翌9時の間で3交代制(実働8時間)
<休日>
完全週休2日制


「あっ、あるじゃないですか。8時間労働、そして週休2日!」

私が声を上げると、オーナーはちょっと得意げに笑いながら言った。
「徐々にじゃが、こういった勤務体系が風俗業界でも増えてきてるんじゃ」

「でもそれって働く側からすると良いことだけど、店側は負担が増えるんじゃないですか?スタッフの労働時間が減るのに給料が減らないんだったら…」
「まあ、それはそうなんじゃが、この業界の人手不足は深刻じゃからのぅ。女性キャストがたくさん居ても、男性スタッフが居ないと実際に店は回らんからなぁ。店にとっては多少負担が増しても、それでスタッフが集まり定着してくれるなら、長い目で見たらプラスになるというワケじゃ」

■“ブラック”風俗店ってあるの・・・?

「相談者が質問サイトで見つけたような、サービス残業を課されて長時間労働、みたいな“ブラック”な風俗店もあるんですか?」
「う~ん、そんな待遇の店もあるだろうが…。しかし今時そんな事をしていたらすぐにスタッフも逃げ出すから、少なくなってきてるとは思うがの…」

「そんな“ブラック”風俗店を見分ける方法ってあるんですか?」
「まずは面接で“勤務体系”や“残業の有無”など、条件面をしっかり確認すること。それでも入社して条件が違っていたら、そんな店はすぐに辞めるべし!」
「そんな乱暴な・・・」
「いやいや、きちんとしている店の方がずっと多いんじゃから迷わず次の店に行くべし!」

■社会保険完備の風俗店もあり!

私はパソコンに表示された、実働8時間・週休2日の求人情報を改めて眺めていたのだが、ある項目を見て思わず「おおっ!」と声を上げた。
「さっき見せてもらった求人情報を見てたんですけど、その待遇欄も充実してますね」

<待遇>
・交通費全額支給
・日払い制度あり
・社会保険(雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険)完備
・ワンルームマンション寮完備・即入居可能
・インセンティブ制度あり
・各種手当あり(住宅手当・家族手当)
・独立支援制度あり

オーナーはパソコンの画面を一瞥してから言った。
「まあ、充実はしとるがこれぐらいは今じゃ普通じゃよ」

「そうなんですか?風俗店でも社会保険に加入できるんですね」
「そうそう、大手を中心に社会保険完備のところも増えとるね」

「しかし、こうなるとブラックどころか“ホワイト”企業ですね。何かイメージと違うなぁ」
「それも、多くのスタッフに長く働いてもらいたいからじゃよ。風俗業界って何かとブラックで、いわくつきの業界だと思われている節があるから、それを払拭するためにもクリーンな労働環境を作らないとならんのじゃよ」

この高待遇もスタッフを集めるための対策の一環と言えそうだ。
私はその待遇欄をもう一度見返してから言った。

「この中にある、インセンティブ制度って何ですか?」
「店の売上目標が達成された時に貰えるボーナスじゃな。ええと、この店はと…」
そう言ってオーナーは画面をスクロールさせて言った。

「ほらここに書いてある。この店は月間の売上目標が達成されたら3万円支給じゃ…」
「目標達成で、月給28万円と合わせて31万円か。それに日払い可能で寮完備だから体一つで仕事を始められそうだし。こりゃあチャレンジしてみようかな」

私が思わずそう呟くと、オーナーは少し慌てた様子になって言った。
「いやいや、君にはこの相談室の仕事があるじゃろ。まあ長く働いてくれたら、悪いようにはしないから…」
そこでオーナーは私にウインクして
「それじゃ、後は頼むよ。相談者には自分なりの“ワーク・ライフ・バランス”に合った仕事が見つかればいいね、って書いといて、シバタ君」
そう言い残し事務所から出ていった。

何度言っても覚えてくれないので、最近は言い返さなくなったが、私の名前は“シマダ”だ。

お互いに名前すら知らない二人が働いている職場って…。

私は相談者への回答を書き始めた。

■ご質問・ご相談に対する回答

【 タイトル】
勤務時間8時間、週休2日で働ける風俗店の仕事ってありますか?
お名前:さとし様
年 齢:28歳
住 所:東京都
【回答】
この度ご質問・ご相談頂きました件、さとし様がご指摘の通り、勤務時間12時間・週休1日といった風俗店がまだまだ多いのも事実ですが、勤務時間(実働)8時間・週休2日制で勤務可能な風俗店も増えてきていますので、求人情報サイトで探してみてください。

また、残業による長時間労働、サービス残業の強要に対する懸念についてですが、残念ながら風俗業界でも、いまだそのような“ブラック”な待遇の店舗が一部存在していることも事実です。
そのような店舗での労働を未然に防ぐために、面接では勤務体系や条件面などをしっかり確認するようにして下さい。

それでも不幸にもブラック店舗に入社してしまった場合は、すぐに辞めてください
今ではそのようなブラック店舗は少なくなっているので、すぐに希望の職場が見つかるはずです。

近年の風俗業界では、勤務時間や休日以外でも、社会保険完備、インセンティブ・各種手当の支給など、待遇面が格段に向上しています。
その理由は、「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)に重きを置く方が増えており、政府も「働き方改革」でその動きを後押ししているからです。

それでは、さとし様がご自身のワーク・ライフ・バランスに合った、理想の就職先に出会われることを願っております。
また何かご質問やご相談などございましたらお気軽にご連絡下さい。

男の夜職相談室・運営事務局より