リーマン温湯、ラブホテルで働き方改革!

温湯(ぬるまゆ)シュウイチの下衆リーマン日記!

誰もが知ってる某一流会社勤めの金融マン。39歳妻子持ち。
長男は私立小学校に通い、妻は専業主婦で習い事に大忙し…。
そんな順風満帆な人生がひょんなことから600万の借金返済生活へ!
つちかった役職知識をフル活用!カラ交通費に経費水増し、株式投資に副業、ギャンブルetc…
一発逆転高収入を夢に見て、合法ギリギリの小遣い稼ぎに狂う日々…。
嗚呼、今年の8月にはようやく司法書士にお願いした債務整理の返済が終わります。
それまで嫁にはバレませんように(ナムー…。
AGAのハゲ薬をインドから個人輸入し副作用で精力が弱りはじめた、温湯シュウイチのゲスい日常。

第10話 温湯、ラブホテルで働き方改革!の巻

■世の中の動きは、完全に“働き方改革”だ。

“残業は一切禁止!”
“遅くても20時には必ず退館するように!”
ウチの会社もご多分に漏れず、本部から通達が来た。

「我が社がブラック企業なんて言われたら、株価は下落し顧客が離れてしまう」
「来年の就職活動では優秀な学生を獲得できずに、市場から締め出されてしまう」
「会社の存続にも関わる事案だ。全社員肝に銘じること」
と役員は声を荒げる。

どうやら会社は本気みたいだ。現在実施されている退館調査に加えて、
・パソコンのログ情報
・プリンターの稼働状況
まで全て本部でチェックをするという。
そして「労務違反は懲罰あり!」とまで曰う。

「ただぁーっし!売上の減少は、これ即ち別問題である。
 とことん効率を上げ、最大限に工夫をし、対前年の業績を上回ることぉー!」
役員は鬼軍曹のごとく絶叫していた。

■働くな、だが売上は上げろ!だって、すげえ改革ぅ改革ぅ。

ひぇー。こりゃ仕事中にタバコなんて吸ってられないし、
スマホをいじくってる(出会い系アプリ)時間もねえなぁ…。
こうしちゃいられない。
しっかり成果を上げねばクビ元も寒くなってくるぞ…。

「行ってきまーす」
早速、先月契約をもらったラブホテルを経営している社長に、
御礼訪問をすることにした。
手土産として人気の日本酒、獺祭(だっさい)7,560円を購入。※モチロン経費で。

その社長は、アイパッチを外した丹下段平のような顔つきで、お酒には目がない。
これは間違いなく喜んでもらえるだろう。
さらにうまくいったら、お客を紹介してもらえるぞ…。ふふふん♪

道すがら、いつも利用しているチケットショップを通過する。
腕時計をチラ見。
「んっ?まだこの時間だと社長はいないかな?」
そもそもアポイントがあるわけでもないので、
何気なく店のドアを開け、暇つぶしに立ち寄ってみる。

店内には“日本酒高価買取キャンペーン実施中!”
書かれたポスターが貼られてある。

へぇー、今や日本酒まで買取する時代なのか。フムフム…。
よく見ると、“獺祭”は1番人気で、買取価格5,500円と書いてある。
(((o(*゚▽゚*)o)))?
あら、獺祭ってば今まさに大切に抱えているコレじゃあーりませんか。

5,500円の臨時収入か…。
いやいや、これは大事なお客様へ持参する代物じゃないか!
刹那逡巡。
オレは働き方改革で成果を出さなければならない立場なんだぞ。
毅然と店から出ようとすると、店員が声を掛けてきた。
「お見積りだけでもいかがですか?高価買取しますよ」

だから、これは大事なお客様への贈答品なんだよ!
ダメだダメだ。働き方改革ぅ!
俺はくるりと振り返り言ってやった!

「獺祭の買取お願いシャス!」

「では5,500円で買い取らせていただきます」

顔に張り付いたような店員のスマイルに見送られながら思った。
経費で買った日本酒の転売は…、“アリ”だな。
気分の良くなったオレは、吉幾三の“酒”を口ずさむ。
「ひとり酒~♪手酌酒~♪ワカメ酒~♪」

今日の予定は終わり!
暇になったから、そのまま愛人宅に直行して一発しよう!
そうだワカメ酒すすったろ♪
ついさっきまでヤル気に満ち溢れていたのがまるで嘘のよう。

■“アムール”。その意味は“愛の神”。

次の日、改めて「ラブホテル経営者」丹下(仮名)にアポを取って訪問。
手土産はグーンとお安く、販促グッズのタオルとメモ帳。

そのホテルは、とある駅前の大きな商店街の一つ裏手の通りにある。
スナックが連なる飲み屋街の端っこに、5軒のホテルがひっそりとたたずんでいる。
その中の一軒、黄色く光る看板に古い書体で“ホテル・アムール”(仮名)
と書いてあるのが、丹下社長の経営しているラブホテルだ。
昭和の名残を感じさせる、どこか古ぼけた外観。
そのイメージ通りの手狭な事務室で丹下と向かい合った。

「いやー、働き方改革とかで帰りも早くなって、夜の時間を持てあましてますよ。
残業も出来ないから、子供の教育費や親の介護資金が大変ですね」
(だから客でも紹介しろよ、段平!)
などともっともらしい顔で話しをしていると…。

おもむろに丹下が言った。
「お、ちょうど良かった。今ね、夜のパートさんが辞めたばかりなんだよ。
求人募集を考えていたところだから、温湯君ウチでバイトしなさいよ。
仕事は簡単だし、人には会わない仕事だから、都合いいだろ?」

確かに。
「あのー、“ウチで”って、仕事の内容はなんでしょう?」

「そりゃ、ホテルのベッドメイクだよ。初心者でもすぐ出来るから」

勤務時間は、21時から24時までの夜3時間
24時以降は宿泊客だけだからベッドメイクはなし。
時給は1,300円1日4,000円程。しかも日払い

室内作業で1日4,000円はでかい。副業としては悪くない。
週5回で月8万円か…。
迷うことはない。なにせ毎月の返済金7万円は待ってくれない。

「ヨロシクお願いシャス!」
俺は二つ返事で頭を下げた。

■ベッドメイカー温湯、爆誕!

※注…まず最初に断っておくが、ここから先の話は、あくまでも昭和の残骸ラブホ「ホテル・アムール」(仮名)に限定されたエピソードである。平成時代のシャレオツなラブホテルではこのようなエピソードはありません。多分。

「いらっしゃいませ。ご休憩ですか?お泊まりですか?」
とかいう受付の仕事は社員が担当する。
お金を扱うし、防犯カメラのチェックも重要任務だからだって…。

オレは気楽な裏方仕事で、いわば情事の後の処理係
多少汚れ仕事な感じもするが、もう後には引けない。

「詳しいことは後藤さんに聞いてね。この道30年の大ベテランだから」
社長はそう言い残して出掛けてしまった。多分スナックだ。

「この道?なんの道?30年って何だよ?」
その後、タオルやシーツを保管している薄暗いリネン室に通される。


そこには、今時パンチパーマに薄いサングラス姿のおじさんがいた。
たぶん後藤さんだろう。
イスの上に胡座をかいてバスローブとタオルを畳んでいる。
ホテルの造りといい、このオッサンといい、
この空間だけポッカリと昭和に取り残されてるのではと錯覚してしまう。

「今日から働くことになりました温湯です。よろしくお願いします」
とりあえず挨拶をする。

「ああ、社長から聞いてるわー」
ガッサガサのしわがれ声で返事があった。
「兄ちゃん、金融マンらしいやない?ナンボ融資してくれんの?

ガハハッ!
後藤さんは、見える歯の半分くらいが銀歯になっている口腔を開いて笑った。

何が“ナンボ融資”だ、この出っ歯め!
出っ歯?あっそうだ、思い出した。
怪しい関西弁といい、「ナニワ金融道」の桑田はんにソックリじゃないか。

■「基本は二人一組で動くからヨロシクな。バディやで」

「バディ?バーディー?ゴルフか何かですか?」

「バディと言えばダイビングやないの。そんなコトも知らんの?
 あかんなー、金融マンはモノを知らん。あんた『海猿』も見てないん?」
「はあ、『海猿』は見たことないっすね、ダイビングもしないっすから…」

「ホナ、タイピングは?」
「へ?」

「ホナ、ピーピングは?」
「…」

あー、結構ツラい仕事かもー。
開始三分で人間関係つまずいたわー。
飛んじゃおーっかなー。
と無職歴20年で初めてバイトをしたニート君のような気持ちになっていると…。

「今からのぞき部屋に案内するから。人様のアレ、覗いてみるか?

と耳を疑うようなことを後藤さんが言ってきた。
噂は本当だったんだ!
都市伝説じゃなかったんだ!
この仕事始めて良かった!
ハゲ薬で弱った心臓がバクバク言っているよ。
「えー!のぞき部屋なんてあるんすか? み、見たいですー!!」

ウッソぴょーん!新入りは皆引っかかりおるわ。ガハハ-!」

何やねんさっきから、このド腐れ糞チビちりちりパンチオヤジは…。

■この道(どの道?)のプロ、後藤。正体不明。

「ウチらはな、一戦交えた後のベッドを見て、色々思いを巡らせる仕事やから」
後藤(以降呼び捨て)は遠くを見つめながら話す。

「毎回毎回、ベッドメイクのたびにそんなコト考えてるんすか?」
オレが聞くと後藤は言う。

「まあなー。あのカップルは“不倫や”とか、“今日でお別れやな”とか。
年寄りカップルは“ホンマに休憩だけして帰ってるんやないか?”とか。
そういった具合にあれこれ考えるんや」

こんなオッサンでも、そんなコト考えるのか…、と思いつつ、
「あの、後藤さんはご結婚は?」と一応聞くだけは聞いてみる。

「ウチ?今はお一人様よ。ダンナもおらんわー

「へ?ダンナ?後藤さんって女(なんっすか?)

すんでの所で致命傷となる言葉は飲み込んだつもりだったが、
「はぁ?どう見てもオンナじゃろーが!(怒)
とサングラスを外し、ヤ○ザもたじろぐ形相で睨み付けてきた。

ザ・漢(おとこ)じゃねえかよ…。
と思ったがそこは新入り従業員。
「あぁ、だからお肌がすごい綺麗なんっすね!」と
普段の営業で鍛えた脈略のないお世辞でごまかす。

後藤は「大人をからかうんじゃないわよ~♪」とまんざらでもないご様子。
小型冷蔵庫から缶コーヒーを出してくれた。

■いざ始まらん、他人の情事の清掃稼業。

まず出勤したらリネン室へ行く。
タオルとバスローブ一式をたたみ袋詰めにする。
これを清掃時に部屋へと運び込む、という流れだという。

後藤・ザ・マン(スタン・ザ・マン式)とたたみものをしていると、
フロントから内線のスピーカーホンが鳴った。
「405号室がアウトしましたー」

「はいよー」
後藤は険しい顔つきでスピーカーに返事をぶつけると、こちらを振り向いた。

「吉幾三!405号室」(昭和ギャグ)
後藤はアメニティグッズの入ったカゴを持ち“ワシに付いて来い!”と合図をした。

いざ、405号室。モチロン4階。モチロン階段
規則1.従業員はエレベータに乗ってはいけない。
規則2.お客様には極力合わないようにする。
万が一遭遇しても顔を直視せず下を向いて通り過ぎる。

405号室の部屋ランプが、ピンクからブルーになっているのを確認。
合鍵を使って室内に入る。
そういえば、他人が使ったラブホの部屋なんて入ったことないよな…。
などと考えていると、
“もわ~ん”とした独特の臭気と湿気に軽くえずいた

「何ボーッとしてんだい、まず風呂場からやで」
と後藤にせかされ風呂場へ向かう。
次からは“マスク”が必要だ。あー、ゴミも散乱しているしー。

ズルッと何かに足を取られた。
使用済のゴム
ゴム踏んじゃった!ギャァァー!!

「気―つけなよー、ガラスとか割れとる時あるからなー」
(先に言えや、ド腐れババア!)

「忘れてやるぅ!忘れてやるぅ!」とつぶやきながら、
必死で足下をシャワーで洗い流した。

その間にも後藤は部屋の清掃に動き続け、涙目のオレに指示を出しす。
「風呂掃除やってから、その後はトイレ掃除!」

後藤は客が使用した後の“バスローブ”→“タオル”→“足マット”を、
パサッ、パサッ、パサッと風呂場に3連投してきた。

「風呂の湯を抜いて、軽くシャワーで浴槽洗ってから拭くんやでー!」
「拭くって?今投げてきたこのバスローブで?

「決まってるやろ!客が部屋に入って来て、風呂がビショビショだったら
気持ち悪いだろう?水滴は一滴残らず拭きとるんやで!」
「いや、そうじゃなくて、客が使ったバスローブで拭くんですか?」

「いちいち専用のタオルなんか使ってたら追いつかないし、キリないやろ!
 洗濯するから平気や!

※注…この話は、あくまでも昭和の残骸ラブホ「ホテル・アムール」(仮名)に限定されたエピソードです。

オレは言われた通り、ひたすら浴槽を拭く。
汚い!何か臭い!何かやったでしょ、コレ!
浴槽を拭き取ったバスローブやタオルは洗濯カゴに入れる。
これを業者が洗って、当然だが、客がまたそれを使う…。ウーン…。

「その後はトイレやでー」
後藤、今度はベッドから“枕カバー”をトイレに投げてきた。

「汚物缶チェックして、便座を枕カバーで拭いて、ティッシュを三角に折りたたむ」
「ま、枕カバーで便座を拭く?

気にしない気にしない!次はコップを洗って拭いてから片付けてー」
もう一枚の枕カバーがヒラ~リと飛んできた…。

「あの、コップを洗う洗剤は?」
「もし汚れてんだったら、ビオレ!

あ、そうですか、ビオレね。(無我の境地)
キュッキュッとビオレでコップを洗い、客が使用した枕カバーで拭く。

オレの作業をしげしげと眺めていた後藤は、
カゴの中から“消毒済”とプリントされたビニール袋を手際よく取り出し、
コップを丁寧に包装して戸棚に戻した。

へっ?
「消毒済って、全然消毒なんてしてないっすよね?」

そう聞くと、パンチ後藤はニヤリとする。

熱湯消毒や!まあ熱湯っていうか、ぬるま湯消毒やけどなー」

ぬるま湯消毒って、温水じゃあ逆に雑菌が湧くだろ…、なにこの世界。

違うか?ちがうかー?ガハハハー」
自分の言った冗談がひどく気に入ったのか、
げんなりするオレに気付くことなく後藤は笑い続けていた。

※注…この話は、あくまでも昭和の残骸ラブホ…(略)。

■世の中に簡単な仕事なんてないと思いました。(小並感)

そして布団カバーとシーツの交換を終えると、
後藤はベッドの受話器を上げ“フロント9番”に電話をかける。
「405号室終了ー」
するとフロントから、
「次は202号室ですー」と指示があり、二人で再度階段で向かう。
一部屋完了までの所要時間、だいたい20分程度。

それにしても汚い…、臭い…。鼻からアノ臭いが取れない…。
これがラブホの現実か…。
※注…いや、あくまでも昭和の残骸…(略)。

「次は305号室ー」
「次は502号室ー」
これが延々と続く。
階段の昇り降り、清掃。
リネン室にたまったタオルやバスローブをまとめて大きなズタ袋に梱包し、
ホテル裏の業者の回収場所まで運んだり…。
体力勝負と言われたが、まさにその通りだった。

休憩時間といえば、客の出入りが落ち着いたのを見計らって、10分とか15分とか。
もちろんフロントからお呼びがかかれば即終了である。
そんな時も後藤ときたら、何事もなかったかのように饅頭を喰らっている
「喰うか?」と勧められたが、とてもじゃないが食欲など湧かない。

そして男塾・塾長後藤はピンピンしている。
「そのうち体も慣れるしな、痛いのは最初だけや!
死んだ魚のような目をしているオレに気付くことなく、後藤はご満悦だ。
「違うか?違うかー?」

「お疲れさま、明日もよろしく」
受付のおばさん社員から4,000円程の日当を受け取り家に帰る。
しかし汚かったな-、夢に出そうだ…。

今回の温湯のリスクとリターン 真似しちゃダメ、絶対!

日本酒の売り飛ばし
リターン→不要な高価日本酒は結構高値で買取をしてくれる。最近のブームみたい。
ワイン、ナポレオン、コニャックなんでもOKだって!
リスク →会社の経費で買ったものを転売しちゃダメだぞ♪
ラブホのバイト
リターン→時給1,300円。日払い。副業には良いかも♪
誰にも会わず、ひたすら情事の後始末。
深く考えないで割り切ったら面白い仕事かも。
リスク →主に清掃だが、とにかく汚かった。潔癖症の人には絶対無理だろ。
働いている人達、何かしら影があるような?
愛人契約
リターン→プライスレス☆
「旦那しか知らないし☆」とか言う女を調教していく快感のハズが
最近はもっぱら逆に調教されている。それも悪くない。
リスク →刑事罰はないが、会社にバレたら社会的地位を失い、
嫁にバレたら物理的に生命を失う恐れあり。
更に愛人が“ドS化”傾向にあり「嫁ととことん戦うから!絶対に分かれない!!」と発言中。
これもう修羅場なんじゃないの?と思い始めてる今日この頃。

借金残高5,100,000円也