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(最終更新日2018年10月16日 )

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男の"夜職"相談室
風俗店の男性スタッフの勤務体系について

風俗店・男性スタッフの勤務時間や休日について
新宿歌舞伎町。繁華街の裏通りにある古いビル。
1階の居酒屋の脇にあるエレベーターは、ドアを開くたびに「ガタン」と今にも壊れそうな音を鳴らし、その昇り降りときたら、「ホントに動いているのか?」と心配になるほどに遅い。
そんなオンボロエレベーターに乗り、スナックや怪し気なマッサージ店のフロアを通過した階上に、「男の“夜職”相談室」はある。

といっても、ドアに表札などは一切掲げられていない。
「男の夜職相談室」とは、運営しているホームページのタイトルで、ここはその事務所。
そして私はそこで雇われているただ一人のスタッフだ。

そのホームページには、様々な境遇の男性達から、風俗やキャバクラ、ホスト業界といった「夜職=ナイトワーク」についての質問や相談が送られてくる。

それらに答えるのは、この相談室の“オーナー”である。
男の夜職=ナイトワーク専門のQ&Aサイト。
私はこのオーナーの名前を知らない。
夜職相談室のホームページに小さく載っていた「スタッフ募集」のバナーを見つけて、興味本位で面接を受けた。
それ以来バイトを始めて一年程経つが、オーナーは自分がこの相談室のオーナーであるということ以外、自らの個人情報は一切語ろうとしない。

そんなオーナーが運営するサイトは、閲覧者からの質問や相談に答えるにあたって、一切の報酬を求めていない。
また、ホームページにスポンサーとおぼしき広告枠なども一切ない。
これらの事実から、この相談室はオーナーが身銭を切って運営しているのでは?と思っている。

しかし、ここまで読んだ方は次のように思うかもしれない。
「そんなの、相談に乗る振りをして怪しい仕事を紹介したり、個人情報を売っ払ったり、どこぞの宗教団体のように高価な壺でも売り付けたりしてるんじゃないの?」

そう、実は私もそう思っていた。
まあ、コンプライアンス精神の欠片もない私は、仕事内容の割には格段に高い時給に目がくらみ、そんなこと気に病みもしなかったが…。
だが、働き始めると、すぐにそうではないことがわかった。

オーナーは、持ち込まれた質問や相談に、時には優しく、時には厳しく、ただ答えるだけ。
誰か、どこかに見返りを求める気配は一切ない。

それでは、なぜオーナーはこのようなボランティアの相談室を開設しているのか。
サイトの運営費、事務所の家賃、そしてスタッフの私に対する給料、さらには、検索サイトで「男性 高収入」といったキーワードで検索すると、たまに広告枠で相談室へのリンクが表示されるから、その広告代等々…。
ざっと考えただけでも、結構な金額になっているはずなのだが。

私はその理由について色々と想像してみた。
昔は大手風俗店グループのワンマンオーナーだった…。
それとも風俗業界の裏側で暗躍していたフィクサーだった…。
ただ単に風俗好きが高じてボランティアをしてみたかった…。等々。

そしてこのオーナーの風貌はというと、綺麗に撫でつけられた白髪交じりの頭髪、常に高価なジャケットを身にまとい、物腰は柔らかく、声など荒げたこともない物静かなジェントルマン然とした佇まいなのだが、顔色が“松崎しげる色”、ガングロなのである。
絶対日サロに通っている。
そのアンバランスさは、“65歳”と言われても“55歳”と言われても何となく納得してしまうような怪しさを醸し出している。
さらに首元には金のネックレスをジャラッと鳴らし、左腕にはこれまた高そうなロレックスがピカッと光っている。
どこかアウトローな世界で生きてきた人物の雰囲気も漂わせているのだ。

バイトを始めた当初、何気なくオーナーの身上を聞き出そうと試みたこともあったが、のらりくらりと話しをはぐらかされた。
だから私は余計なことを言わず、粛々と与えられた仕事をこなしている。

その仕事内容はというと、二日に一度のペースで事務所に来て、ホームページの問い合わせフォームを通じて送られてくる質問や相談を整理すること。

それらをふらっとやって来るオーナーに渡し、口頭で伝えられる返答を文章にまとめて質問者や相談主に返信する。
それだけだ。

質問や相談がなければ日がな一日、ネットサーフィンをしながら過ごし、オーナーが来れば取りとめもない雑談相手となる。
それで役所が定めた最低賃金の2倍近くの時給を貰えるのだから、私にとっては有難い仕事である。

前置きがすっかり長くなってしまった。
今回の相談内容は以下のようなものである。
ご質問・ご相談
【タイトル】
勤務時間8時間、週休2日で働ける風俗店の仕事ってありますか?
お名前:さとし様
年 齢:28歳
住 所:東京都
【内容】
初めまして。
僕は最近まで、とある製造業の会社で働いていたのですが、給料が安く、サービス残業が多いのに嫌気が差して退職しました。
そして今、就職活動をしているのですが、ある時ふと高収入求人サイトを覗き、風俗店の男性スタッフの月給が、初任給で26万円や28万円など、高額な店では月給30万円スタートなど、とても高収入なことに俄然興味を持ちました。

しかしそれら風俗店の求人情報ページを見ると、勤務時間が「1日12時間」と長く、休日も「週休1日」といった感じで少ないことがわかりました。

また、質問サイトなどを覗いてみると、風俗店では求人情報に記された勤務時間に加えて「残業」が課される場合も多く、16~18時間労働で、休みが月に2、3日、しかもその残業分はサービス残業扱いになる、みたいな書き込みもあり、すっかり尻込みしてしまいました。

僕にとって高収入は魅力的なのですが、それと同じくらいに仕事以外の時間、「自分のための時間」とでも言えばいいでしょうか、そんな時間を大切にしたいと思っています。
という訳で、風俗店の中にも、勤務時間(実働時間)8時間、週休2日制、といった形で働けるお店が本当にあるのか、教えてもらえるでしょうか。

他のメジャーな質問サイトを利用しようかとも思ったのですが、こちらのサイトが“夜職”相談室ということで、風俗業界に詳しそうでしたので相談させてもらいました。
よろしくお願いします。

「おー、やっとるねー」
いつものように、お昼を過ぎた頃、オーナーはふらっと事務所に顔を出した。
私は立ち上がって挨拶をした後に、この相談内容をプリントアウトして手渡す。
オーナーは、近所で買ってきたオシャレなホットコーヒーを啜りながらそれに目を通す。

「はは~ん、これは『ワーク・ライフ・バランス』重視の若者からの相談だねぇ…」
と独り言のようにつぶやいた。

「えっ、ワーク・ライフ?何ですかそれ?」
私が思わず問うと、
「なんだ、君、そんな事も知らないのかね…」
オーナーは呆れた表情を浮かべながら言った。

「ワーク・ライフ・バランスとは『仕事と生活の調和』のことよ。要するに、仕事が生活を犠牲にしてはならないという考え方、とでも言えばいいかな。我が国においては、長時間労働の是正とともに語られることが多いなぁ…」
私がピンと来ない顔をしているのを見透かされたのであろう。

「ほら、政府が最近よく『働き方改革』とか言っとるじゃろ。君も、もう少しニュースを見た方がいいなぁ…」
「ああ、働き方改革…、それぐらいは・・・」といって誤魔化そうとしたが、そんな私を完全に無視してオーナーは続けた。

「最近の若者は“出世欲”も無いって言うからなぁ。その理由もまた、ワーク・ライフ・バランスらしいんだよ。それに出世して責任が増えるのも嫌なんだってなぁ。時代も変わるもんじゃ…」

そうですよねぇ、と言う私もまだまだ最近の若者なのだが…。
しかし考えてみれば、この相談室のバイトは楽だし残業はない。そして私には“出世欲”
なんてこれっぽっちもない。
そうか、私も知らない間にワーク・ライフ・バランスってヤツを実践していた訳か、そう考えて納得しかけていると、それを見透かしたようにオーナーは言った。

「そうか、君も最近の若者か。しかし君の場合は『仕事と生活の調和』というよりも、ただ自堕落に楽をして生きたいだけじゃろ。面接の時から感じていたが、ホントにダメな男じゃのう。ハッハッハッ」
風俗店の男性スタッフはホントに高収入?
図星。
そんなオーナーからの人物評に少しイラっとし、話題を変えた。
「念のために確認なんですが、今回の相談における大前提の『風俗店の男性スタッフは高収入』って言うのは間違いないですよね?
確かに高収入求人サイトを見ると、月給26万円、28万円とか30万円スタートになっているお店が多いみたいですけど」


「ああ、それは間違ってないね。だいたい風俗店のスタッフの初任給はそれぐらいじゃな。中でも東京を始めとする大都市圏はもともと給料が高めだし、それに今は業界全体で深刻な人手不足だから、店側は給料を上げてでも良い人材を確保しようとしとるしのぅ…」

「なるほど、高収入は間違いなし、と。風俗業界って人手不足なんですか?」
「まあ今時、風俗業界に限らず、どの業界でも人手不足で頭を悩ませとる。じゃがな、しかしのう…」
そこでオーナーは深く溜息をつき、そして続けた。

「この業界、そこかしこに“一獲千金”のチャンスが転がっとるんじゃがのう。一昔前はそんなチャンスを掴もうと、ハングリー精神の溢れた活きのいい若者が飛び込んで来たもんなんじゃが。最近はすっかり大人しい子が増えてしまって、募集をかけてもなかなか集まらないんじゃよ」
幹部候補になると月給50万以上。店長は年収1000万越えも!
「そう言われてみると、自分の周りにも、そんなガツガツしてハングリーな奴っていないかも…。でも風俗業界って、そんなに一獲千金のチャンスがあるんですか?」
するとオーナーはニヤリと笑いながら言った。

「風俗業界ってのは人の入れ替わりが早いからのう。だから早ければ、入店して数か月で“主任”とか役職が付いて給料がアップする。その後“幹部候補”になれば、月給50万円以上、そして“店長”になれば、歩合給も含めて年収1000万円以上も夢じゃないのぅ…」

「年収1000万!そりゃあ凄いっすね」
「年齢・学歴・職歴不問でそれだけ稼げる仕事はなかなかないじゃろ。まあ、もちろん店長まで成り上がるには相応に頑張らなきゃならんし、スタッフをまとめる統率力や人望も必要じゃがな」

勤務時間8時間、週休2日の風俗店ワークはホントにある?
「それじゃあ、相談者が希望してる勤務時間8時間、週休2日で働ける風俗店ってホントにあるんですか?」
私はそう問いながらデスクのパソコンで、高収入求人サイトに掲載されている各風俗店の求人情報をチェックしてみる。
「ああ、確かに相談者が言うように、12時間労働、それに週休1日のお店が多いですね」

「まあ、今でもこの業界、そういう店は確かに多いな。しかしじゃな…」
そこまで言ってからオーナーは私のところに歩み寄り、身を乗り出してデスクのパソコンを操作し始めた。そしてそれを終えると、これを見ろ、と言わんばかりにインターネットの画面を指し示した。
そこには、ある風俗店の求人情報が表示されていた。

そして、その内容は、抜粋すると以下のようなものだった。

【都内・某デリヘルグループ】
<職種>
[正]店舗スタッフ
<給料>
月給27万円~
<勤務時間>
9時~翌9時の間で3交代制(実働8時間)
<休日>
完全週休2日制

「あっ、あるじゃないですか。8時間労働、そして週休2日!さすがオーナー」

私が声を上げると、オーナーはちょっと得意げに笑いながら言った。
「徐々にじゃが、こういった勤務体系が風俗業界でも増えてきてるんじゃ」

「でもそれって働く側からすると良いことだけど、店側に取ったら負担が増えるんじゃないですか? スタッフの労働時間が減るのに給料が減らないんだったら…」
「まあ、それはそうなんじゃが、この業界の人手不足は深刻じゃからのぅ。女性キャストがいくら居ても、男子スタッフが居ないと、実際に店は回らんからなぁ。店にとっては多少負担が増しても、それでスタッフが集まって定着してくれるなら、長い目で見ればプラスになるというワケじゃ」
“ブラック”風俗店ってあるの・・・?
「相談者が質問サイトで見つけたような、サービス残業を課されて長時間労働、みたいな“ブラック”な風俗店もあるんですか?」
「う~ん、そんな待遇の店舗もあるにはあるだろうが・・・。それは風俗業界に限らずじゃけどな。しかし今時、そんな事をしていたらすぐにスタッフも逃げ出すから、少なくなってきてるとは思うがの…」

「それじゃあ、そんな“ブラック”風俗店を見分ける方法ってあるんですか?」
「う~ん、まずは面接で勤務体系や残業の有無など、条件面をしっかり確認すること。それで入社して話が違っていたら、そんな店はすぐに辞めるべし!」

「そんな乱暴な・・・」
「いやいや、ちゃんとしている店の方がずっと多いんだから、迷わず次の店に行くべし!」

社会保険完備の風俗店もあり!
私はオーナーと話しながら、パソコンに表示された実働8時間、週休2日の求人情報を改めて眺めていたのだが、ある項目を見て思わず「おおっ!」と声を上げた。
「さっき見せてもらった求人情報を見てたんですけど、その待遇欄も充実してますね」

<待遇>
・交通費全額支給
・日払い制度あり
・社会保険(雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険)完備
・ワンルームマンション寮完備・即入居可能
・インセンティブ制度あり
・各種手当あり(住宅手当・家族手当)
・独立支援制度あり

オーナーはまた私のところにやって来て、パソコンの画面を一瞥してから言った。
「まあ、充実はしとるが、これぐらいは今じゃ結構、普通じゃよ」

「えっ、そんなんですか? 風俗店でも社会保険に加入できるんですね」
「そうそう、大手を中心に社会保険完備のところも増えとるね」

「しかし、こうなるともう、ブラックどころか“ホワイト”企業ですね。何かイメージと違うなぁ」
「それも、多くのスタッフに長く働いてもらいたいからじゃよ。風俗業界って何かとブラックで、いわくつきの業界だと思われている節があるから、それを払拭するためにもクリーンな仕事環境を作らないとならんのじゃよ」

この高待遇もスタッフを集めるための対策の一環と言えそうだ。
私はその待遇欄をもう一度見返してから言った。

「この中にある、インセンティブ制度って何ですか?」
「店の売上目標が達成された時に貰えるボーナスじゃな。ええと、この店はと…」
そう言ってオーナーは画面をスクロールさせて言った。

「ほらここに書いてある。この店は月間の売上目標が達成されたら3万円支給じゃ…」
「へえ~、それなら目標達成で、月給27万円と合わせて30万円か。こりゃあいいなぁ。それに日払い可能で寮完備だから、体一つで仕事を始められそうだし。こりゃあチャレンジしてみようかな」

私が思わずそう呟くと、オーナーは少し慌てた様子になって言った。
「いやいや、君にはこの相談室の仕事があるじゃろ。まあ長く働いてくれたら、悪いようにはしないから…」
そこでオーナーは私にウインクして
「それじゃ、後は頼むよ。相談者には自分なりの「ワーク・ライフ・バランス」に合った仕事が見つかればいいね、って書いといて、シバタ君」
そう言い残し事務所から出ていった。

何度言っても覚えてくれないので、最近は言い返さなくなったが、私の名前は“シマダ”だ。

お互いに名前すら知らない二人が働いている職場って…。

私は相談者への回答を書き始めた。
ご質問・ご相談に対するご回答
【 タイトル】
勤務時間8時間、週休2日で働ける風俗店の仕事ってありますか?
【回答】
この度ご質問・ご相談頂きました件、さとし様がご指摘の通り、勤務時間12時間・週休1日といった風俗店がまだまだ多いのも事実ですが、勤務時間8時間・週休2日で勤務可能な風俗店も増えてきていますので、求人情報サイトでじっくり探せば見つかるはずです。

また、残業による長時間労働、サービス残業の強要に対する懸念についてですが、残念ながら風俗業界でも、いまだそのような“ブラック”な待遇の店舗が一部存在していることも事実です。しかし、これは他の業種も同様です。
そのような店舗への入社を防ぐために、面接では勤務体系、条件面などをしっかり確認するようにして下さい。
それでも不幸にもブラック店舗に入社してしまった場合は、すぐに辞めてください。
今ではそのようなブラック店舗は少なくなっているので、すぐに希望の職場が見つかるはずです。
昨今の風俗店では、相談のあった勤務時間、休日の件以外でも、社会保険完備、インセンティブ・各種手当の支給など、待遇面が格段に向上しています。その理由は、相談者様のように「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」に重きを置く方が増えており、政府も「働き方改革」でその動きを後押ししているからです。
この傾向は、今後さらに進んでいくと思われます。
それでは、さとし様がご自身の「ワーク・ライフ・バランス」に合った、理想の仕事に疲れることを願っております。
また何かご質問やご相談などございましたらお気軽にご連絡下さい。
男の夜職相談室・運営事務局より

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